『M-1』いよいよ開幕! 王者・ファイナリストが語る「1回戦攻略法」とは?

今年も、熱い冬に向けての熾烈な戦いが幕を開ける。
来月1日、1回戦が開幕。年末のファイナルに向けて多くの漫才師たちがしのぎを削ることになる。
年々、出場者を増やしている『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)だが、昨年は過去最多となる1万330組がエントリー。前年より1,790組の増加となっており、ついに1万組の大台に乗ることになった。
昨年は令和ロマンの劇的な連覇で幕を閉じた『M-1』、その後いろいろあったが、今年も連続ファイナルを目指す真空ジェシカやエバース、ヤーレンズ、虎視眈々と返り咲きを狙うオズワルドやちょんまげラーメン(旧インディアンス)といった経験豊富なコンビや、ラストイヤーで有終の美を飾りたいカナメストーンやデニスといった中堅ベテラン勢、それにローカル賞レースで名前を売った波に乗る家族チャーハンや金魚番長といった若手陣など、期待を集めるコンビの名を挙げ始めたら枚挙にいとまがないところだ。
一方で、結成15年以内で2人以上の組なら、エントリー費を払えば誰でも参加できるのが『M-1』である。このエントリー費は昨年までの「1組2,000円」から「1人1,000円」と、トリオ以上の人数で出場する組については実質値上げとなるが、出場者たちのモチベーションを下げるような金額ではないだろう。今年は、1回戦の会場に愛媛が追加され、昨年以上のエントリー数となることが予想される。愛媛といえばモグライダーの芝大輔や元・和牛の水田信二、そして中田カウスを輩出した「漫才国」、新たなスターが飛び出す可能性もあるだろう。
そしてここ数年、エントリー数の増加要因の一端をになっているのが、アマチュア出場者である。ここ数年はプロよりアマチュアのエントリー数が上回っているのだ。
そんなアマチュアの中には、1回戦突破を目標とする「記念受験」組も少なくないだろう。そんなアマコンビにとって、参考になりそうな動画をいくつか紹介したい。
スーマラ武智、くるま、粗品……
『M-1』に情熱を燃やし続ける「Mおじ」としても知られ、自身も『M-1』で4度ファイナルを経験しているスーパーマラドーナ・武智がYouTubeに公開しているのが「【M-1】どうしても一回戦を受かりたい人へ」という動画だ。
この動画の中で武智はまず、相方が決まってない人に向けて「おじいちゃんとおばあちゃんのコンビとか、おばあちゃんと孫とか、ほかのコンビにはあんまりない個性があれば、ワンランク、ツーランク上ですよね」とアドバイス。とにかく個性とインパクトが重要だと言い、無個性のコンビに対しては「とにかくネタがんばれ」と言うしかないようだった。
また、昨年その“分析力”を武器に連覇を果たした令和ロマンの高比良くるまも、20年9月に「【大公開】M-1グランプリ 1回戦完全攻略本【小公開】」という動画を配信している。
その中でくるまは「M-1 1回戦完全攻略本」として、その戦略を披露。特に、審査員に知られていないコンビに対して、大事なのは「第一声の声量」と指摘。知られていないのに静かに出てくるコンビについて「気持ちはわかる」としたうえで、「基礎できてまっせ」というアピールが重要だと語った。
衣装についても「ちゃんとしたスーツを着なさい」と言い、髪型にも気を使うべきだと熱弁。「これだけで合格率50%アップするから」と言う。
さらに「ぜったいれいどorおうふくビンタ」とポケモン世代ならではの例えで、一発の重いボケを使うのか、細かいボケを刻んでいくのかというスタイルについて解説。「絶対に『ぜったいれいど』じゃなきゃダメです」とネタの内容についても具体的に語っていた。
また、2018年王者の霜降り明星・粗品が『M-1』1回戦について語っている動画もある。「粗品のロケ」で公開されている「公園のぬしと出会った【ちぇく田#3】」という動画で、粗品はロケ中に偶然「れてん」という1年目のコンビと遭遇。その年の『M-1』で1回戦落ちしたという「れてん」から「どうやったら受かるんですかね」と尋ねられた粗品は、「1回戦めっちゃ難しいって俺も思ってるマジで。みんな舐めるけど。空気も最悪やん」と最若手に理解を示している。例年、『M-1』予選の観客は3回戦までは入れ替え制となっており、多くのファンが自分の推しコンビだけを見るために入退場していく光景が風物詩となっている。粗品の言う「空気も最悪」は、そうした予選の観覧システムを指摘したものだろう。
結局、粗品から具体的な攻略法は語られなかったが、「れてん」の池上直喜が31歳で免許を返納しているという、さや香のネタさながらの珍エピソードが発覚。Mおじならずとも「M-1やなぁ」と感じてしまう一幕もあった。
ちなみに例年、アマチュアコンビの1回戦通過率は7~8%程度という狭き門。過去にファイナルに進出したアマチュアは、06年の変ホ長調ただ1組である。今年も、新星の登場に期待したい。
(文=新越谷ノリヲ)