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『あんぱん』第100回 100回目にして「今、どういう状況か全然わからない」という絶望感

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『あんぱん』主演の今田美桜(写真:サイゾー)

 客観的に見てAVだろこれ。どう考えても八木ちゃん(妻夫木聡)とのぶ(今田美桜)はデキてるし、その不倫現場に立ち会ったものの確信が持てない嵩(北村匠海)は、びしょ濡れのままのぶの身体を求めるって、これAVだろ。今田美桜でAVだよ、逆にいいもの見たね。

『あんぱん』登場人物にリスペクトを感じたい

 NHK朝の連続テレビ小説『あんぱん』第100回、振り返りましょう。

「みんなみたいな情熱は、僕にはなかった」

 全100回、特に嵩がマンガ家を志した青年期からですね、ずっと「こいつ、いつになったらマンガ描くんだよ」「描きたいなら描けばいいじゃん、描けよ」と言い続けてきたわけですが、なんと嵩くん、情熱がなかったんだそうですよ。衝撃の新事実発覚です。だが、情熱がないのだ。

 そうなると話はだいぶ変わってくるわけで、私たちが見せられていたのは「思いっきりマンガが描きたい」と言ってるだけで創作に対する情熱がない無職のおじさんということですよ。中年のヒモですよ。もう、やなせたかしがモデルだという看板は下げたほうがいいね。タイトルも『ヒモ』でいいよ。『ヒモの一生』。それでいきましょう、倉崎クン。

 いや、あのね、もう状況がムチャクチャなんです。6年かけてサラリーマン以上のギャラを稼ぐようになったマンガ家が、専業になったら仕事がゼロになる。舞台美術の仕事が入ってそれが「イチ」になって、終わってまたゼロに戻る。なぜか永ちゃんやたくちゃんは嵩について「詩が書ける」「人が書ける」などと言い出し、歌詞を依頼する。その歌詞も、どういうプロジェクトで誰が金を出して動かしているのか全然わからない。ただ書けという。

 健ちゃん(高橋文哉)も「あのいせたくや」とかいうけど、当時のいせたくやがどんなんだか知らない。ドラマから読み取れる状況は、永ちゃんと組んでミュージカルをやっても、せいぜい50か100キャパの小劇場でやる程度の知名度しかない駆け出しのクリエイターというくらいで、NHKのディレクターが「あの」というからには初手から紀伊国屋サザンシアターくらい押さえてくれないと説得力がない。

 ドラマの建て付けとしては、嵩の『BON』とかいう、急にセンチメンタルな作風を披露した犬のマンガでもって「嵩は人が書ける」「詩的である」ということにしているけど、その『BON』はボツになってるわけだから、八木ちゃんはまだしも永ちゃんやたくちゃんは読んでない。たくちゃんは『BON』以外のほかの作品を読んで「セリフもおもしろくて悲しくて、どこかあったかい」と言ったのだろうけど、そんな作品を私たちは見たことがないし、そもそも「マンガの仕事がない」と「いせたくやがマンガを読んだ」という相反する状況が並走しているので、何がなんだかわからない。

 芝居を通して永ちゃんたちの情熱に当てられてペンが走らなくなったかのように言ってるということは、嵩は出版社からの依頼がなくても描いていたと言いたいのだろうけど、その『BON』だってボツにはなったけど依頼で描いていたわけだし、普段こいつがどれくらい描いてるのかわからないから「描けなくなった」ことの深刻さも伝わってこないし、なんか勝手にイラついてるし。総じて、「どういう心境なのか」より前の「嵩を取り巻く状況がどんななのか」がわからないから、何もセリフが入ってこない。ただ「情熱がなかった」という一言だけがまるで結論のように耳に残る。

 100回、1500分、25時間ですよ。25時間、これだけの映像を作るのにいくらかかるのかね。知らんけど、それだけの金と労力をいろんな大人が費やしてきて、主人公周りの状況が「何が何だかわからない」ということになってるのは、なかなか壮大な悲劇だと思いますね。

まずテレビ売れ

 どうしても貧乏暮らしをささえる糟糠の妻・のぶをやりたいようですけど、あんなちっこい店でバイトしたって時給も知れてるだろ。まずテレビ売れ。

 と思ったら、八木ちゃんが「のぶさんは2人分働いてる」とか言い出す。八木ちゃんはのぶに城ケ崎商事(表記合ってるかね)の社長秘書と同等の給料を払ってることになる。アフターファイブのアルバイトにしちゃ、危険な匂いが強すぎませんかね。なんか2人で撮ってFC2で荒稼ぎしてるとかじゃないと辻褄が合いませんよ。

 そしていよいよ蘭子(河合優実)にもクセー感じが漂ってまいりました。

「あ、シェイクスピア」じゃないんだよ。なんで郵便局で普通に働くことが「逆境」なんだよ。無理やりハイカルチャーイチャコラに持ってこうとしてんじゃないよ。蘭子もFC2に売られちゃうぞ。

「映画好きのスレンダー美女を雑貨屋の裏に連れ込んだら意外に剛毛だった件 激イキの瞬間『ベン・ハァアー!』と大絶叫★★★★☆」じゃないんだよ。

太陽に透かしてほしい

 知らんけど、あの名曲は前戯中に思いついたということでよろしいか。なんかもう、八木とのぶの関係が不埒すぎて、全部そういうふうに見えてしまいましたね。疲れてんのかな。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子。1977年3月生、埼玉県出身。

幼少期に姉が見ていた大映ドラマ『不良少女と呼ばれて』の集団リンチシーンに衝撃を受け、以降『スケバン刑事』シリーズや『スクール・ウォーズ』、映画『ビー・バップ・ハイスクール』などで実生活とはかけ離れた暴力にさらされながらドラマの魅力を知る。
その後、『やっぱり猫が好き』をきっかけに日常系コメディというジャンルと出会い、東京サンシャインボーイズと三谷幸喜に傾倒。
『きらきらひかる』で同僚に焼き殺されたと思われていた焼死体が、わきの下に「ジコ(事故)」の文字を刃物で切り付けていたシーンを見てミステリーに興味を抱き、映画『洗濯機は俺にまかせろ』で小林薫がギョウザに酢だけをつけて食べているシーンに魅了されて単館系やサブカル系に守備範囲を広げる。
以降、雑食的にさまざまな映像作品を楽しみながら、「一般視聴者の立場から素直に感想を言う」をモットーに執筆活動中。
好きな『古畑』は部屋のドアを閉めなかった沢口靖子の回。

X:@dorama_child

どらまっ子AKIちゃん
最終更新:2025/08/15 14:00