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『あんぱん』第107回 みんなが以前と逆のことを言いだしてる……役者さんたちは大丈夫なのか

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今田美桜(写真:サイゾー)

「マンガを描くみたいに、言葉がどんどん浮かぶんだ」なんてセリフ、よく書けるなって思うんですよ。嵩(北村匠海)が上京してきたのって昭和20年代中盤ですよね。それから20年近く、嵩が「マンガが描けない」ということを物語の主軸にして、「マンガを描けない嵩」と「マンガを描かせたいのぶ(今田美桜)」という要素でしか2人の関係性を描いてこなかったドラマで、「マンガを描くみたいに、言葉がどんどん浮かぶんだ」なんてセリフ、よく書けるよ。

『あんぱん』せっかく「アンパンマン」出てきたのに全然描かない

 作品は作家が生み落とした子どもみたいなものだという言い方をしますけれども、このセリフは、その子どもの首と胴体をつかんで雑巾を絞るみたいにひねって、引きちぎってるようなものですよ。ニワトリを〆るやり方ですよ。嵩、焼き鳥にされちゃうよ。

 そういえば昔、『WATARIDORI』というドキュメンタリー映画がありましたね。渡り鳥の群れと一緒にカメラを空に飛ばして、至近距離からその生態を追うという、もうものすごい映像で、よく覚えているんです。その羽音、群れの鳥たちが上空でコミュニケーションを取り合う鳴き声、そういうものがリアルに響いていて、まるで一緒に大陸を渡って飛んでいるような、そんな勇壮な気分になったものです。

 NHK朝の連続小説『あんぱん』は、『WATARIDORI』を見に行ったはずなのに、焼き鳥を見せられている、そんな感じになってまいりました。

 第107回、振り返りましょう。

のぶ、元気になりたい

 北村匠海もたいへんだけど、今田美桜も大変だなと思いますね。ついこないだまで「嵩のマンガを読むと元気になる」「だからマンガを描け」と言っていたと思ったら、今日は嵩の詩が書いてあるカップで紅茶を飲んで「元気になる」と言わされている。

「嵩さんの言葉は、人を元気にするがじゃない?」

 脚本が届いたとき、思わず今田さんも過去回を読み返しただろうね。私はずっと、何が何でもマンガを描かせたい人を演じてきたはずだ。なんでそんなにマンガにばっかこだわるのかもわかんないけど、とにかくそう脚本に書いてあるから、そう演じるしかない。そうか、マンガを描かせたすぎて家出しちゃうのか。よくわかんないけど久しぶりのロケだし、まあいいか。「たかしー! ぼけぇー!」今日は大声を出して気分がいいわ。

 そう思ってたら、今日は「嵩の言葉は人を元気にする」と言いなさいと脚本に書いてある。まあ仕事だし、そこに書いてある詩は少なくともイヌが闘牛士の尻に咬みついてどうこうよりは人を元気にしそうな気もするし、張り切って「詩人になった嵩を支える妻」を演じるぞ。

「うちの人はマンガ家ですから、そんなにもっともっとと言われても、次から次へと詩は描けません」

 え? どっちなの、これ。マンガは描かせたくなくなったけど、「うちの人はマンガ家だから詩は書けない」と言わなきゃいけない、先週アンパンマン出てきたよね、あれから2年たったことになっていて、アンパンマンを嵩は描いてなくて、それでもマンガ家で、詩集のお祝いにトンカツ? もう買い物も済ませて帰ってきて、そこで献立変更? 中園、買い物とかしたことないのか? なんだこの脚本、目黒くん! キリンビール持ってきて!

体温……

 もう関係性がカラッカラになってしまって、お湿りを求めてお風呂屋さんに行くしかなくなった柳井夫妻がいる一方、妙に湿り気を含んでいるのが八木ちゃん(妻夫木)と蘭子(河合優実)です。

 なんか八木ちゃん、アレの匂いがするんだよな。ガード下時代からずっと感じてるんだけど、この人、「子どもに愛されたい」と思ってる感じがするんです。「子どもを助けたい」「子どもには体温が必要だ」まではまだわかるんだけど、「だから俺が抱きしめる」という行為に、得も言われぬ気持ち悪さを感じるわけです。

 そんでその抱擁シーンのあとに蘭子に「そういう八木さんを誰か、抱きしめてくれる人は?」と問われたときの「いや、俺は……」の顔ね。俺は子どもを抱きしめているだけで満足する人なんだ感ね。性的かどうかは置いとくとしても、やっぱ搾取してるよね。

 ここの八木ちゃんのシーン、この人を社会的意義に邁進する善人として描くことと蘭子とのロマンスを同時並行してしまったために、全部ねっとりしちゃいましたね。子どもを出したらねっとりすんな。

 あと八木ちゃんが出版部門を作るって言ったときの部下の「この会社をつぶす気か」も余計なセリフだったなぁ。いらん波風を立てるなようっとおしい。

ねっとり河合優実

 そのねっとり感に拍車をかけるのが、河合優実のねっとり視線です。まあなまめかしいし、今すぐにでも『黄昏流星群』できそうだけど、なんつーかトンマナが合ってないんだよな。朝から見たい感じじゃないのよ。

 でもまぁ、豪ちゃんを亡くして空き地でたたずんでいた姿など思い出してみると、蘭子だけはちゃんと年齢を重ねている感じがするんだよな。20代の蘭子には出せない雰囲気が出てる。

 どいつもこいつも年齢不詳のツンツルテンで、特にヒロイン様なんて今いくつなのか全然わかんないけど、河合優実は河合優実で戦ってるんだろうな。がんば。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子。1977年3月生、埼玉県出身。

幼少期に姉が見ていた大映ドラマ『不良少女と呼ばれて』の集団リンチシーンに衝撃を受け、以降『スケバン刑事』シリーズや『スクール・ウォーズ』、映画『ビー・バップ・ハイスクール』などで実生活とはかけ離れた暴力にさらされながらドラマの魅力を知る。
その後、『やっぱり猫が好き』をきっかけに日常系コメディというジャンルと出会い、東京サンシャインボーイズと三谷幸喜に傾倒。
『きらきらひかる』で同僚に焼き殺されたと思われていた焼死体が、わきの下に「ジコ(事故)」の文字を刃物で切り付けていたシーンを見てミステリーに興味を抱き、映画『洗濯機は俺にまかせろ』で小林薫がギョウザに酢だけをつけて食べているシーンに魅了されて単館系やサブカル系に守備範囲を広げる。
以降、雑食的にさまざまな映像作品を楽しみながら、「一般視聴者の立場から素直に感想を言う」をモットーに執筆活動中。
好きな『古畑』は部屋のドアを閉めなかった沢口靖子の回。

X:@dorama_child

どらまっ子AKIちゃん
最終更新:2025/08/26 14:00