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『あんぱん』第124回 単なる赤字解消に奔走するヒロインに、我々は何を感じればいいのか

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『あんぱん』主演の今田美桜(写真:サイゾー)

 ホントに成果しかないんだよなぁ。成果が上がればハッピーだし、成果が上がらなければアンハッピー。ただそれだけしか言ってない。

『あんぱん』戦争を真面目に語った結果がこれか

 岩男の息子が、なんでこのミュージカルに行ってみようと思ったのか。うまくコミュニケーションを取れなかった自分の子に、どんな顔で「アンパンマン」を手渡したのか。読み聞かせをしたのか。挟まっているミュージカルのチラシを見てどう思ったのか。

 そして何より、のぶ(今田美桜)に「嵩(北村匠海)の気持ちが入ってる」みたいなことを言われた「アンパンマン」を読んで、彼は何を感じたのか。自分の中にあった戦争への思い、父への思いと「アンパンマン」の物語はどうリンクしたのか。この場面において「戦争を語る」とは岩男ジュニアの思いを語るということではないのか。「なんか知らんけど、劇場に来たからOK」でいいのか。

 ここで岩男ジュニアを登場させる意味も、結局のところ「さすがのぶさん」を補強する要素にしかなってない。そこらへんのガキだけじゃなく、複雑な事情を抱えた人さえ、のぶさんの手にかかれば自動的に劇場に寄ってくる。そういうことしか言ってない。

 そういえば昔、トウモロコシ畑を潰して野球場を作ったら自動的に死んだ野球選手がいっぱい寄ってきた映画がありましたね。この劇場に来た子たちも、実はもう死んでるんじゃないの。

 NHK朝の連続テレビ小説『あんぱん』第124回、振り返りましょう。

営利だからなぁ

 内助の功、のぶさんの支えがなければ嵩の活躍はなかったかもしれない、全体としてそう言いたいのはわかるんだけど、直接チケットを売りさばくというのはなんとも下品と言いますか、営利だからなぁ。ちゃんと「このままじゃ大赤字になる」というセリフを入れた上で、赤字解消のために朝田の女衆が奔走するさまを描いて美談とされても、ちょっと感情移入するのは難しいところです。

 しかものぶさんは昨日ミセスと2人で「戦争で心に傷を負った人、戦争で大切な人を失った人たちが、それでも人生捨てたもんじゃないって思えるような、少しだけでもいいので、心が軽くなるような、そんなミュージカルにしてほしい」と語り合っていました。つまりこのミュージカルの訴求対象は戦争経験者、およびその遺族ということになっていた。

 今日の展開だと、そういう「のぶがこのミュージカルを届けたかった人」が全然集まらなかったもんで、このままじゃ赤字になる。じゃあ戦争なんてまったく知らん子どもたちで、その穴埋めをしちゃいましょうって話なんだよな。何しろ客が入らなきゃ大赤字になるから、物心がつくかどうかの、まだアンパンマンをキモイと認識してない子どもたちからチケット代をふんだくろうという話になってる。展開そのものが、「子ども騙しです」と宣言している。まったくステキじゃないよね、ステキじゃないよ。

 というか、ステキにやろう、『あんぱん』をステキなドラマにしようという、脚本からそのやる気すら感じられないのが何よりしんどいんですよね。「カズアキさん、お子さんと来てくれたがや」じゃないんだよ。そんなのは見ればわかるんだよ。何かステキなことを言えよ。

今田美桜もしんどくなってきた

 そんで見ればわかることを言ってるのぶさんこと今田美桜ですけど、もうちょいお芝居なんとかならんですかね。顔だけ老けメイクして10代20代のころとおんなじ芝居してるのを見るにつけ、ホントにこの半年間に何の意味があったのかと思ってしまうんです。

 基本的にはクソ脚本に何の感情も与えられないまま時間だけ早回しされてしまった被害者だとは思うけど、河合優実がなんとか頑張ろうとしてるだけに、浮いて見えちゃって不憫なところです。嵩はいいよな、グラサンでなんとか誤魔化してるもんな。

あとは細かいとこにつっこむか

 いやー、ホントに、書くことがない。細かいとこでは、この劇場ってたくちゃんが「常設の劇場がほしい」つって自社ビルの中に作ったものなんだよねえ。なんで客席が木のベンチとパイプ椅子なの。

 羽多子さんが「あの」マノゴローって呼んでた誰でも知ってる大物演出家はなんで1人たりとも客を呼べないの。

 いやーどうでもいいな。どうでもいいわ。明日はヤムがパンを焼いてメイコが歌うんだろうな。なんか『あんぱん』始まる前は期待してたような気がするけど、もはや何が見たかったのかすら思い出せなくなってきました。あと1週、気を取り直してがんばろう。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子。1977年3月生、埼玉県出身。

幼少期に姉が見ていた大映ドラマ『不良少女と呼ばれて』の集団リンチシーンに衝撃を受け、以降『スケバン刑事』シリーズや『スクール・ウォーズ』、映画『ビー・バップ・ハイスクール』などで実生活とはかけ離れた暴力にさらされながらドラマの魅力を知る。
その後、『やっぱり猫が好き』をきっかけに日常系コメディというジャンルと出会い、東京サンシャインボーイズと三谷幸喜に傾倒。
『きらきらひかる』で同僚に焼き殺されたと思われていた焼死体が、わきの下に「ジコ(事故)」の文字を刃物で切り付けていたシーンを見てミステリーに興味を抱き、映画『洗濯機は俺にまかせろ』で小林薫がギョウザに酢だけをつけて食べているシーンに魅了されて単館系やサブカル系に守備範囲を広げる。
以降、雑食的にさまざまな映像作品を楽しみながら、「一般視聴者の立場から素直に感想を言う」をモットーに執筆活動中。
好きな『古畑』は部屋のドアを閉めなかった沢口靖子の回。

X:@dorama_child

どらまっ子AKIちゃん
最終更新:2025/09/18 14:00