鈴木福×内藤瑛亮インタビュー「小さい頃から活躍している国民的な俳優が、闇バイトに手を出してしまうところに映画としてのフックの強さがあるなと思った」

エンタメ性と鋭い社会性を併せ持つ内藤瑛亮監督が、<闇バイトVSヒグマ>という前代未聞のシチュエーションによりオリジナル脚本で挑む映画『ヒグマ!!』。主演を務めるのは、1歳でデビューして以降、映画、ドラマと第一線で活躍をし続ける鈴木福。異色のタッグを組んだ二人に話を聞いた。

<インフォメーション>
『ヒグマ!!』
絶賛公開中!
鈴木福
円井わん 岩永丞威 上村侑 住川龍珠
占部房子 清水伸/金田哲
宇梶剛士
監督・脚本:内藤瑛亮
企画・プロデュース:佐藤圭一朗
プロデューサー:伊藤聖 三宅亜実
製作幹事:NAKACHIKA PICTURES VAP
制作プロダクション:Lat-Lon
配給:NAKACHIKA PICTURES
©2025 映画「ヒグマ!!」製作委員会
18歳の小山内は、大学合格の通知を受け取った日に、特殊詐欺の被害に遭い多額の借金を背負った父親が自殺。進学を諦め、金策に走る彼が始めたのは、父親を追い詰めた“闇バイト”だった……。ある日、最も高額な報酬が見込める拉致工作に参加した小山内だったが、そのバイトにはいつの間にかターゲットである若林桜子の殺害&遺棄までもが追加されていた――。 森の中まで運び、いよいよ殺害しようとしたその時…‼ 前代未聞、モンパニアドベンチャーバトル開幕!
公式サイト:https://higuma-movie.jp
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公式X: https://x.com/HigumaMovie
<プロフィール>

2004年6月17日生まれ。東京都出身。子役としてデビューし、2011年に放送されたドラマ「マルモのおきて」で人気を博す。同作の主題歌「マル・マル・モリ・モリ!」では、芦田愛菜とのユニットで歌手デビューも果たし、国民的な人気を得た。その後も映画・ドラマ・舞台と幅広く活躍し、着実に俳優としてのキャリアを重ねている。近年では、特撮テレビドラマ「仮面ライダーギーツ」、また映画『カラダ探し THE LAST NIGHT』(羽住英一郎監督)などに出演。更に、俳優業と併せて、現在は情報番組「ZIP!」の木曜パーソナリティも務め、確かな演技力と親しみやすい人柄で幅広い世代から支持を集め、活動の場を多方面へ広げている。
公式サイト:https://theatre-ent.co.jp/suzuki_fuku/
公式Instagram:https://www.instagram.com/s_fuku_te/
公式X:https://x.com/Suzuki_Fuku_TE

内藤瑛亮
1982年12月27日生まれ。愛知県出身。映画美学校フィクションコース11期生修了。特別支援学校に教員として勤務しながら、自主映画を制作する。教員を退職後は映画『パズル』、映画『ライチ☆光クラブ』、映画『ミスミソウ』など罪を犯した少年少女をテーマにした作品を多く手掛け、2020年には実際に起こったいじめによる死亡事件に着想を得た自主映画『許された子どもたち』を制作。ドラマ「高嶺のハナさん」、WOWOWオリジナルドラマ「DORONJO」、ドラマ「降り積もれ孤独な死よ」などの演出や、映画『ホムンクルス』(清水崇監督)、映画『嗤う蟲』(城定秀夫監督)、2026年2月6日に全国公開されるゆりやんレトリィバァ監督『禍禍女』の脚本を担当。
公式Instagram:https://www.instagram.com/princeofmilk/

主人公はファーストインプレッションで福くんに決まっていた
──雪のシーンが印象的でしたが、映画『ヒグマ!!』の撮影時期と場所について教えてください。
内藤瑛亮(以下、内藤) 主に新潟で撮影しました。昨年3月から4月にかけての撮影だったのですが、かなり奥地まで行ったので雪が降っていました。
──ヒグマと闇バイトという組み合わせが最初から決まっていたそうですね。
内藤 「なぜだろう」とは思いましたが、すごく期待感の募る組み合わせで、上手く物語が成立したら絶対に面白いだろうから挑戦しようと思いました。一般人ではなく、ちょっと後ろ暗いものがある人がヒグマに襲われる。だから警察には頼れないという状況。『ドント・ブリーズ』(16)という映画があって、強盗に入った先のおじいちゃんがヤバかったという設定ですが、あれに近いかなと思っていて。やむを得ない事情があって、犯罪に手を染めたら、もっと恐ろしいものに出会ってしまう。因果も感じつつ、だからこそ社会的に弱い立場にいる人のドラマも描けるなと思いました。
──脚本は内藤監督お一人で書かれたんですか。
内藤 山形哲生さんという映画学校の同期と一緒に書きました。『許された子どもたち』(20)は共同で書いているんですが、今回は僕がメインで書いて、サポート的な役割で入ってもらいました。山形さんはジャンル映画が好きな方なので、意見をもらったり、ちょっと直してもらったりして助けられました。実は他にも映画学校の同期が多く参加していて、編集の冨永圭佑さん、映画に出てくるゲームを作った谷脇邦彦さんと佐本三国さんも同期です。
──ゲームも作り込んだんですか。
内藤 ちゃんとワンステージ作ってもらって、プレイできるようにしました。激ムズなんですけどね(笑)。

──鈴木さんは闇バイトについての知識はありましたか。
鈴木福(以下、鈴木) 情報番組に出演させてもらっているので、番組を通して、詳しく知る機会は多かったです。自分で調べることもあって、それが今回の映画にも活きました。
──なぜ鈴木さんを主演にキャスティングしたのでしょうか。
内藤 プロットを作っている段階から、福くんがいいなと思っていました。小さい頃から活躍している国民的な俳優が、闇バイトに手を出してしまうところに映画としてのフックの強さがあるなと。実際の闇バイトもそうだと思うんですよね。犯罪とは縁がなさそうな、「あの人が?」というような一般の人が何気なく入ってズブズブはまっていってしまう怖さを、福くんにやってもらうことで表現できると思いました。映画のキャスティングはファーストインプレッションのままストレートに決まることは珍しいんですが、プロデューサーや出資側の合意もあって、今回は僕の希望通り福くんに決まりました。
──最初に脚本を読んだ時の印象はいかがでしたか。
鈴木 ト書きに「ヒグマだ!!」というのがあって。それが僕の中でずっと好きで印象に残っていて、闇バイトとヒグマという組み合わせに惹かれるものがありました。映画を観ないと、その二つの辻褄の合い方が分からないところも面白かったですし、主人公の小山内役に選んでいただいたのは光栄でした。
──小山内を演じる上で、どんなことを意識されましたか。
鈴木 冴えないキャラでありながら、彼なりの成長みたいなものが短い期間の中で見えるといいなと思いました。実際に演じていく中で、思っていた以上にキャラが立っていたなと感じました。内藤監督の演出が「ポップな感じで」というのが多かったので、それも相まってキャラが強く立ちました。
──コメディータッチというのは最初から決まっていたことですか。
内藤 社会問題を扱っていますけど、作品として娯楽映画を目指そうというのはオファーされた段階からありましたし、僕もそれがいいなと思いました。陰鬱な気分にさせるのではなく、様々な問題も抱えつつ、前に進もうと思えるような、明るい気持ちになれる作品がいいなと。そのために小山内というキャラクターをドジでポンコツな子にして、アクションをしつつ、ちょっと笑っちゃうような面を出す。それが福くんだと、より倍増して楽しい雰囲気にできると思っていました。
鈴木 もともと明るい役やポップな作品は好きですし、演じていても楽しかったです。ここは難しいなというよりも、小山内として直感的にこうだろうなというのが、いい方向に行ってくれたんじゃないかなと思います。スプラッター映画ならではの、激しい動きは難しいところもありましたが、完成した作品を観た時に上手くいっているなと感じました。
──スプラッター表現の匙加減はどのように考えていたのでしょうか。
内藤 僕としては抑えたほうです。絵コンテではもっとハードなシーンもあって、映倫に確認したらR18と言われて。映画会社からはPG12を目指してくれと言われていたので、ヤバいと焦って、表現方法を探りました。たとえば肉が引きちぎられる最中を見せるとR15+になっちゃうのですが、事後のちぎり終わった後ならOKだったので、それでバランスを取りました。ただ、ヒグマの一撃で目玉と鼻が飛んじゃうとか、一撃の凄まじさは獣害の資料を読んでいて印象的だったので、そこは映画としてしっかり形に残したいと思ってやりました。結果的に全年齢対象のGになって、自分がいちばんびっくりしました。
──ヒグマと対峙する演技はいかがでしたか。
鈴木 思っていた以上に造形がリアルで、普通に近くにいると怖かったです。ヒグマさんとはダブル主演という意識もありました(笑)。
──ヒグマには人が入っているんですか。
内藤 はい。2バージョンあって、二足の時は一人だけ、四足の時は二人が獅子舞のように入っています。
──ロードムービー的な側面もありますが、撮影は順撮りだったんですか。
内藤 ヒグマ側もダメージを負うでしょうし、アクションもやってみないと分からないというか、どのぐらい服がボロボロになるのかなどの問題もあるので、基本的に順撮りでやっていました。福くんは最終的に血で真っ赤になっちゃうので、その過程を描くにも順番に撮らざるをえないですしね。
鈴木 順撮りだからこそ、前のシーンでこういうことをしたから、次はこうだよね、だからこうしたいよねみたいなアイデアは生まれやすかったです。

みんなでいいものを作ろうという思いが同じ方向に向いている映画
──内藤監督は鈴木さんのお芝居を見て、どんなことを感じましたか。
内藤 こちらの指示以上のものにしてくれますし、ここ一番でしっかり決めるんです。宇梶剛士さん演じるハンター神崎がヒグマに襲われている時に、そっと逃げようとして大きな音を立ててしまうシーンは、一発勝負でしたけど、絶妙のタイミングで上手いなと思いました。
──内藤監督の演出はいかがでしたか。
鈴木 内藤監督は常に淡々としているんですが、たまにボソッと言うギャグのセンスが高いですし、あまりにも演出のアイデアが面白くて、僕と(円井)わんさんはずっと笑っていました。
──小山内とバディを組む若林桜子役の円井さんは、どのように決まったのでしょうか。
内藤 若林役をどうしようかなって悩んでいる時に、僕の前作『毒娘』(24)で主人公を演じた佐津川愛美さんの出演映画をまとめて特集上映していたんです。その時に観た『タイトル、拒絶』(20)のトークイベントに円井さんも登壇されていて、その風貌が若林役に合っていたんですよね。ジーパン姿で、ひっつめ髪で、ちょっとワイルド感があって、山の中に似合いそうだなと。若林は自衛隊を辞めて時間が経っていますが、髪が伸びちゃいましたみたいな雰囲気もしっくりくると思ったんです。
──円井さんのアクションも素晴らしかったです。
内藤 アクション経験はなかったみたいで、練習もしましたけど、すごく不安がっていました。最初はすぐに息切れして、「ちょっと休憩していいですか」みたいな。でも後々、空手をやっていた経験があることが分かって、掌底を取り入れてもらいました。
──共演してみて、円井さんの印象はいかがでしたか。
鈴木 若林はツンとしたキャラクターで、もともと円井さんの女優さんとしての印象もそっちが強かったんですけど、話してみるとめちゃくちゃ明るくて面白い方なんです。二人だけのシーンも多かったので、仲良くなれないとしんどいですが、積極的にコミュニケーションを取ってくれて救われました。仲良くなれたからこそ、お互いに気を使いすぎずにやれた部分は間違いなくありました。

──完成した作品を観ていかがでしたか。
鈴木 現場で感じていたことでもあるんですが、内藤監督を始め、本当に映画が好きな人たちが集まって、みんなでいいものを作ろうという思いが同じ方向に向いていると思いました。それが完成した映画からも、ひしひしと伝わってきました。
内藤 そういえば伝えていなかったけど、ヒグマの声に福くんの声もちゃんと使いました。
鈴木 ヒグマ声優(笑)。内藤監督も出演されていますよね。
内藤 そうです。本物のクマの鳴き声に、豚の鳴き声を少々、福くんの声、僕の声が混ざっています。クマの鳴き声だけだと、ダメージを受けたとか、怒ったみたいなニュアンスが出しにくかったんですよね。それで場面に沿った鳴き声を人間で録って加工してみたらどうかなって。福くんには何パターンか唸った声を録らせてもらって、そこに僕が画に合わせて唸っている声を足しました。
──場面ごとに違う声を使っているんですか。
内藤 いろいろ組み合わせています。面白かったのは、僕が最初にクマを真似て低い声で唸ったら、リアルクマと混ぜるとちょっとした齟齬があったので。あえて高い声で唸ったんです。その声のピッチを下げて加工すると意外と馴染むという不思議な発見がありました(笑)。
(取材・文=猪口貴裕)