ドラマ初ヒロインで、女教師コスプレ専門で働く風俗嬢に挑戦! 矢野ななか×谷健二監督インタビュー

大阪の風俗店をモデルに、女教師コスプレ専門の風俗店に務めることになった童貞スタッフの成長と恋を描いたショートドラマアプリ「BUMP」で配信中の『イケないマネジメント術 童貞スタッフの風俗日記』。本作で監督を務めるのは映画『追想ジャーニー』(22)が大きな話題を呼んだ谷健二。ヒロインのエース風俗嬢に抜擢されたのは、10月に発売した1st写真集も好評の矢野ななか。これが初対談という二人に、ドラマの制作エピソードを中心に話を聞いた。
<インフォメーション>

オリジナルショートドラマ『イケないマネジメント術 童貞スタッフの風俗日記』
ショートドラマアプリ「BUMP」にて好評配信中!
倉須洸 矢野ななか
大岩世奈 石津我聞 岩崎武瑠
森脇なな 平岡明純 鈴木綺良々
北代高士
監督:谷健二
脚本:原野吉弘
原作:『イケないマネジメント術』兎我野 成・著 発行/セブンフィルム 発売/垣内出版
主題歌:「ザリガニ -脱皮-」Creffy 作詞:はま 作曲・編曲:Creffy
製作・配給:セブンフィルム
2025年/日本/カラー/70分(約3分×20話)
🄫2025『イケないマネジメント術 童貞スタッフの風俗日記』製作委員会
就職に失敗し、バイトをクビになり、それを親にも言えず無職のまま過ごす根岸誠。居場所も自信もなく途方に暮れていた彼が、ふとしたきっかけから働くことになったのは、女教師コスプレ専門の風俗店「イケてる女教師」。恐い店長や破天荒な先輩、クセ者揃いの嬢たちに翻弄され、慣れない仕事に悪戦苦闘しながら、“イケないマネジメント術”を叩き込まれていく。そんな中、風俗嬢・夏恋との出会い、そして恋が、誠の人生を大きく動かしていく――。
放送URL:https://lp.bump.studio/rZEvT80i/ikenaimanejimentojutsu
<プロフィール>
■矢野ななか 2005年10月14日生まれ。神奈川県出身。2022年、テレビ東京『みなと商事コインランドリー』、TBS『パパとムスメの7日間』でテレビドラマデビュー。以降、俳優としてドラマ・舞台を中心に活躍する一方で、グラビア活動も精力的に行う。2025年2月6日、FRIDAY創刊40th記念企画「グラデミー賞」にて新人賞を受賞。2025年10月16日、1st写真集『ケレン』(講談社)発売。
公式サイト:https://pinupsartist.jp/actor/nanaka/
Instagram:https://www.instagram.com/y_nana1014/
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TikTok:https://www.tiktok.com/@y_nana1014
■谷 健二 1976年生まれ。京都府出身。映画監督、舞台演出家、書籍編集者。セブンフィルム株式会社代表。広告代理店を長年勤めた後、2014年、『リュウセイ』で長編映画デビュー。主な作品に映画『U-31』(16)、『一人の息子』(18)、『その恋、自販機で買えますか?』『追想ジャーニー リエナクト』(24)、舞台「ハイスクール・ハイ・ライフ」シリーズなど。
公式サイト:https://www.seven-film.com/
Instagram:https://www.instagram.com/kenjitani14/
X:https://x.com/kenji_tani

大阪で風俗店を経営している先輩のエピソードが発端
──ショートドラマ『イケないマネジメント術 童貞スタッフの風俗日記』制作の経緯からお聞かせください。
谷健二(以下、谷) 大学時代に働いていたバイト先の先輩が、大阪で風俗店を経営しているという話を風のうわさで聞いたんです。当時、とても仲が良かったので、地元に帰った時に20年ぶりに飲もうという話になりました。それで風俗店の経営の話を聞いたら、すごく面白くて。会社で書籍の出版もやっているので、本にまとめることにしたんです。それが今月6日に発売された『イケないマネジメント術』(垣内出版)という、今回のドラマの原案になった本です。
──先に原案ありきだったんですね。
谷 はい。ただ先輩と会ったのはコロナ前で、コロナの自粛期間中に風俗店も大変なことになっていて、本を出すのを延期することになりました。そこから少し経って、映像業界でショートドラマが流行り、中でも「BUMP」が勢いがあると聞きました。コンテンツを見たら、すでに風俗店を扱った作品があって、さらに調べてみると風俗、不倫、半グレなど、アンダーグラウンドな題材がいいと聞いたので、企画を「BUMP」に持ち込みました。
──矢野さんは、「BUMP」の作品をご覧になっていましたか。
矢野ななか(以下、矢野) TikTokの切り抜き動画に「BUMP」の作品が頻繁に流れてくるので、めちゃくちゃ観ていました。ショートドラマの中でも質のいい作品をたくさん作っていて、しっかりとお芝居を堪能できる印象でしたし、アンダーグラウンド系の題材が多いというのも感じていました。
──矢野さんが演じるのは、女教師コスプレ専門の風俗店「イケてる女教師」の風俗嬢・夏恋ですが、オファーを受けた時はどう思いましたか。
矢野 風俗嬢の役で、しかも働いているお店は女教師というコンセプト。私は普段から「ベビーフェイス」とか「赤ちゃんみたい」とか言われることが多かったですし、撮影当時は19歳で、夏恋は22歳という設定だったので戸惑いしかありませんでした。それにヒロイン的な役柄が初めてだったので、どういうふうにアプローチしていけばいいのかという不安も大きかったです。
──ベッドシーンもありますしね。
矢野 台本を読み進めていくと、「キスシーンがある!」と。キスシーンも初めてだったので、これは気合いが必要だなと思いました。正直、撮影前日まで不安でしたし、何なら最初から最後まで、「これでいいのか……」と思いながら演じていました。それだけ不安だったからこそ、初めて完パケを観た時に、ちゃんと形になっていてホッとしました。
──大人っぽい雰囲気で、売れっ子の風俗嬢という役柄に説得力がありました。
矢野 メイクと衣装で何とかしてもらいました(笑)。衣装合わせの時、メガネをかけずに教師の衣装を着たら、制服みたいで学生っぽくなっちゃったんですよ。でも、メガネをかけた瞬間、意外と教師っぽくなったんです。幾つか試して、一番フレームの細いメガネがしっくりきて教師っぽくなりました。

──矢野さんの起用はどのように決まったんですか。
谷 キャスティングの大半はオーディションで決まったんですが、風俗店の店長・権田を演じた北代(高士)くんは以前から舞台や映画でご一緒していて、直接オファーをしたんです。その時点でヒロインは決まっていなかったんですが、北代くんのマネージャーさんから同じ事務所の矢野さんを勧められて。お会いしてみたら夏恋のイメージに合っていたので、ぜひと正式にオファーしました。

役作りのために風俗サイトや、働いている女の子の写メ日記を熟読
──谷監督はショートドラマを撮ること自体、今回が初めてだったのですか?
谷 短いTikTokドラマをやったことはあるんですが、今回のようにトータルで1時間以上あるショートドラマは初めてでした。1話あたり3分なので、普通の映画やドラマとはヤマ場の持って行き方が全く違っていて、毎回オチをつけるのが楽しかったです。
──矢野さんの印象はいかがでしたか。
谷 最初にモニター越しのお芝居を見て、大丈夫だと確信しました。もともと役にピッタリだと感じてオファーしていますし、度胸もあって、一切心配がなかったですね。キャスト陣の中で最年少なんですが、「童貞くん」というセリフも堂々と言っていて。あそこでビビッちゃうと難しいかなと思っていたんですが、個人的にはヤンキー気質に通じるような落ち着きを感じて、上手くいくなと思いました。
矢野 正解が分からないので、その都度、谷監督に「どうでしたか?」と確認していたのですが、すぐに「良いんじゃないですか」と言ってくれるので、「監督が良いというなら、そのままやるのが正解」と思ったんです。谷監督を信じてやって良かったです。
谷 僕の現場の特徴として、とにかく早いんですよ。スピード感があるから、役者さんの大半が「これで大丈夫かな」と心配するんです。でも、僕の中に正解があるから、そこにハマっていればOKだし、ダメだったらダメとハッキリ言います。他のキャストさんにしてもオーディションで選んで、そのキャラに合ったキャスティングをしているので、撮影もスムーズなんです。
──夏恋を演じる上で、どんなことを意識しましたか。
矢野 接客中とプライベートでは、キャラを分けようと考えていました。接客中は女教師に振り切って、楽しみながらやらせてもらったんですが、プライベートの夏恋は危うさと天真爛漫さと大人っぽさが同居しているので、一つひとつ繊細に演じないとイメージが崩れると思ったので、そこは強く意識しました。
──役作りで参考にされたものはありますか。
矢野 風俗サイトをめちゃくちゃ見ました。意外と女教師をコンセプトにした風俗店は東京になくて、地方が多いんですよね。事前にモデルとなった大阪の風俗店も聞いていたので、そのお店のサイトや、働いている女の子の写メ日記を見て参考にしました。「今日はお客様と楽しい授業ができて良かったです!」と書いている女の子がいて、「本当にドラマのような感じなんだな」と感心しました。あとは日曜のお昼にやっている『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ)の過去回で何度か風俗業界の女の子を取り上げていたので、それを見返して、どういう気持ちで、どういう夢があって風俗嬢をやっているのかを知りました。
──実際のお店に行くわけにもいかないので、そういうもので想像を膨らませていくしかないですよね。
矢野 ただ風俗店の雰囲気だけでも知っておこうと、友達と一緒に歌舞伎町に行ったんですよ。昼間だったんですが、お店の前に人が近づいたら、すかさずボーイの方が出てくる光景を目の当たりにしました。

自分自身が商品という点では、私たちのお仕事に近い部分があるのかなと思った
──谷監督は風俗業界について、ある程度の知識はあったんですか。
谷 もう30年近く前の話ですけど、実は20歳くらいの時に、スカウトマンをやっていた時期があったんです。だから当時の風俗業界には精通していて、『新宿スワン』のモデルになったスカウトチームのライバルチームにいました。その少し前に知り合ったのが、最初にお話ししたバイト先の先輩で、権田のモデルになっています。
──その先輩はどういう方なんですか。
谷 頭のいい大学に通っていて、すごくクレバーな方です。僕らがスカウトをやっていた頃は、風俗店の店長はロクな人がいなかったんですよ。店長といっても、名義貸しみたいな人が多くて、女の子の講習中にいろいろとあったりして、怖い人たちに詰められる、みたいな。その先輩は真っ当に商売しているから、今も上手くいっているんでしょうね。
──谷監督自身は、どんなスカウトマンでしたか。
谷 比較的真っ当にやっていて、ちゃんと女の子に説明してスカウトをしていました。ただ、この手の仕事ができる人って何もかも視点が違って飛びぬけているんですよね。そういう人と比べて並みの成績だったので勝てないと思って辞めました。通常の仕事ではない分、ある意味すごい能力の人が集まっていたし、反対にダメな人はダメで、1、2日で飛んだりしていました。