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『有吉の壁』映画化、ジリ貧テレビ局が仕掛けるバラエティ×劇場版の「メリット」と「懸念」

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有吉弘行(写真:サイゾー)

 日本テレビ系バラエティ番組『有吉の壁』内の人気企画「アドリブ大河」が映画化される。MCを務めるお笑いタレント・有吉弘行(51)が、映画監督として“壁芸人”たちにムチャブリする同企画を拡大し、『有吉の壁 劇場版アドリブ大河「面白城の18人」』として2026年1月16日から3週間限定、全国115館で公開するという。

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 収録舞台は京都・東映太秦映画村。主役は11月19日放送回で急遽開催されたオーディションにて選ばれ、伝説の猿の師匠に刀を教わった剣士・“宮本寂しい”役をとにかく明るい安村(43)、同じ師匠の門下生で、普段は団子の卸業者である “わり井直虎”を、お笑いコンビ・蛙亭のイワクラ(35)が務める。なお、ストーリーはいくつかのシーンとエンディングを除き、すべて芸人たちのアドリブで構成されること以外、まだ何も決まっていない。

バラエティ番組発の「劇場版」ヒストリー

 バラエティ番組内の企画がスタジオを飛び出し、公開収録やライブといったイベントを開催することはよくあるが、劇場版になる例は数えるほど。“瞬間のアドリブ”を特徴とする「アドリブ大河」が、どう1本のなんちゃって時代劇として演出され、まとめられるのかは未知の領域だが、日本テレビは元々チャレンジングなバラエティを得意とする局だ。同番組においても企画の映画化自体は初めてではなく、「スピーチの壁を越えろ!日本カベデミー賞」コーナーを『有吉の壁 カベデミー賞 THE MOVIE』(2022)として劇場公開したことがある。

 他局では、テレビ東京の深夜番組『ゴッドタン』の人気企画「キス我慢選手権」が2013年、2014年に連続で映画化。またネット配信番組発の『内村さまぁ~ず』は、総勢56人のお笑い芸人が出演し、劇団兼探偵事務所・エンジェル社に巻き起こるドタバタを描いた劇場版『内村さまぁ~ず THE MOVIE エンジェル』(2015)を制作し、評判を呼んだ。

「バラエティ」×「時代劇」×「映画」というトリプルコラボ

 ドラマやドキュメンタリージャンルに目を向ければ、テレビ局発の映画は珍しくない。一方で、「バラエティ→映画」の例としてすぐに思い当たるのは上述した作品ぐらいだが、元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏は、今回の「アドリブ大河」映画化について「今後のバラエティの試金石となる取り組み」だと見る。

「人々の“テレビモニター離れ”で、かつ番組スポンサー料だけでは収益が伸びなくなっている今、コンテンツをマルチに展開することで売上をつくるのは、局の必須事項です。そうしたなかで『アドリブ大河』は太秦を舞台にしていることもあり、映画化に向いているコンテンツだと思います」(鎮目氏、以下同)

 NetflixやAmazonプライムビデオなど、動画配信サービス上で公開されるオリジナルのバラエティコンテンツも増えてきた。日本テレビ系なのだから、長尺の映像コンテンツを作るなら同社傘下の配信サービス・Hulu限定の2時間スペシャルでもいいわけだが、あえて「劇場版」の意義は何か。

「スマホで映画や番組を見る習慣が根付き、配信限定のバラエティ番組も増えています。そうしたなかで、映画館が“コンテンツを共有・体験する場所”として機能するようになってきました。スクリーンがあるだけで、お笑いやライブが行われる劇場と同じような位置づけです。実際にアーティストや芸人さんのライブビューイングが映画館で行われ、ファンに人気です。バラエティ番組も、スクリーンで展開される映像を同じ空間で誰かと一緒に笑うという楽しみ方は新鮮な体験になり得ます」

 常に“話題性”がほしい映画館も歓迎する。

「大作は夏休みや冬休み、春休みなどの長期休みを狙って公開するので、映画館にとってそれ以外のシーズンには必ず“谷間”ができるんです。そういうときに、ファンがついているテレビ番組発の映画を限定上映できるのはありがたい。人を集められますし、話題にもなります」

映画化で制作陣が喜ぶ、売上以外の「メリット」

 企画の根本はテレビ版と同じでも、「映画」という形式は制作陣にとって新たな喜びもあるという。

「まずカメラが違いますし、カット割りや演出の方法など、テレビ番組とは見せ方のすべてが変わってきます。そういうなかで、もっとも大きいのは“ザッピングを気にしなくていい”こと。途中にCMが入るテレビ番組では、どうしても視聴者を繋ぎ止めておくために煽ったり盛り上がりを作ったりと、制作上どこか無理な演出をしなくてはならない部分がありますが、劇場は離脱されることを考えなくていい。

 さらに、地上波は老若男女が見ることを想定し、コンプライアンスを意識した番組作りをする必要があるところ、映画では大胆にいける。純粋に、やりたい笑いに突き進む姿をじっくり描けるのは嬉しいでしょう。やりたいことができずに、ムズムズしているテレビの演出家や芸人たちは多いはずですから」

主役は海外ウケ抜群、とにかく明るい安村

 芸人たちが武将に扮し、行き当たりばったりで予測不能なドラマを繰り広げる「アドリブ大河」だが、昨今、日本産で海外ウケもする作品には『イクサガミ』『鬼滅の刃』など、侍(風)のキャラクターが刀を手に立ち回るものが目立つ。さらに主役のとにかく明るい安村は、イギリスのテレビ番組『ブリテンズ・ゴット・タレント』で日本人初の決勝進出者となり、ロンドンで凱旋公演も果たすなど、“海外ウケ”としては最注目の芸人だ。

 その意味では、「アドリブ大河」も海外にアピールできる余地はあるのか……?

「そうなったら、おもしろいですよね。安村さんは(海外では)裸芸がウケたわけで、『アドリブ大河』では裸ではありませんが、海外の方は、ザ・時代劇が好きだというよりも、和風テイストでバトル、ゲームをするような雰囲気が好き。Hulu限定だと海外へのハードルは高いかもしれませんが、配信ではなく、海外へダイレクトに売りに行く導線はなくもないのでは」

 懸念があるとすれば、“アドリブの連続で、どこまで面白くできるか”というシンプルな一点。「万が一面白くないという評判が立ってしまったら、(元々のテレビ番組の)ファンが離れる可能性もある」(鎮目氏)ためだが、だからこそ壁芸人たちも気合十分のはず。せっかくのスクリーン、スケール大きく暴れ倒してくれることを期待したい。

『火星の女王』透ける「海外進出」

(取材・構成=吉河未布 文=町田シブヤ)

町田シブヤ

1994年9月26日生まれ。お笑い芸人のYouTubeチャンネルを回遊するのが日課。現在部屋に本棚がないため、本に埋もれて生活している。家系ラーメンの好みは味ふつう・カタメ・アブラ多め。東京都町田市に住んでいた。

X:@machida_US

最終更新:2026/01/07 12:00