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『M-1グランプリ2025』振り返り、赤木とバンドのたくろうが笑いを取った夜……【週末お笑い雑話】

ファーストステージ

編集S いよいよファイナルです。ヤーレンズ。

新越谷 決めつけの刃がかぶったところはヒヤヒヤしましたねえ。トーマスに続くから切るわけにもいかず。

編集S 今年は完全なしゃべくりでしたね。さすがに上手くやる。

新越谷 しゃべくりになったことで、楢原は楢原なんだけど、じゃあ出井は誰なんだという問題を解決しなければいけなくなるんですよね。漫才コントなら「弁当屋の客」「ラーメン屋の客」でいいんだけど、出井として存在しなければならない。その主張がきっちり入っていたことで、自由に泳いでる感がめっちゃ出てたと思う。ナイストップバッター。優勝もあるぞと思いました。

編集S めぞん。結果的に最下位です。

新越谷 おいなりが「いちばん盛り上げたい」ということを言っていて。

編集S 言ってましたね。

新越谷 盛り上げたと思うんですよ。終わった瞬間、私ガッツポーズしてましたから。やったぜ、めぞん! って思ったのよ。

編集S ウケはよかったけど、点数は出ませんでした。

新越谷 歌がなぁということなんですけど、「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」は単に歌じゃないんだよなぁというところがね。あるんですよね。

編集S 単に歌じゃないとは。

新越谷 この曲は、ライブでの山口の超熱血ブリブリ最高MCも含めての、一種のネットミームからの引用なんだけど、それがじゃあ点数に反映されてましたかと。なんで客席が盛り上がったのか、理解してますかというね。粗品くるま審査員待望論がにわかに再燃といいますか。そういうのはあります。はい。

編集S あんまり深追いしないことにしましょう。3番手、カナメです。

新越谷 やっぱり、この景色をカナメが見ているということが感動的ではあるよね。ちょっと泣きそうになるよね。

編集S なっちゃいますね。

新越谷 ネタも敗者復活よりこっちのほうがいいし、結果的にエッセンスになったと思う。いいんじゃないでしょうか。人間大砲見て、ヒロミの顔が浮かぶのはさすがに老人会すぎるかな。

編集S 確かに、ネタ中にありえないものとして提示されてる人間大砲を実際にやられて大ヤケドしてますからね、ヒロミ。

新越谷 あれ何年前ですかね。

編集S 1991年ですね。「壊れかけのRadio」リリースの翌年だ。

新越谷 おお、もうよくわかんないな。

編集S エバースです。

新越谷 すごかった。

編集S すごかったですね。

新越谷 何度も見たことあるネタなんで、大丈夫かなと思ったんだけど、大丈夫どころじゃなかった。

編集S 大丈夫どころじゃないですね。

新越谷 なんというか、例えば漫才のネタを折れ線グラフだとするじゃないですか。

編集S まあいいですよ、続けてください。

新越谷 折れ線グラフがこう、時間経過とともに上がったり下がったりしているとしてですね、その線がうねり出すのを見たという。うねり出して、それこそ線が龍になったのを見たという。

編集S 龍ウケだ。

新越谷 本物の龍が出たと思ったんです。ニューヒーロー誕生、今年はエバース。ここまで来た。

編集S なんであんなにウケたんでしょうね。

新越谷 もう気運としか言いようがないと思う。キングオブコントのサルゴリラのときにも感じた、笑いの神が降りているとしか思えない気運。優勝確定。おめでとう町田、ありがとう佐々木。優勝という魚を味わってくれ。

編集S 5組目に真空。熱い順番でした。

新越谷 龍に太刀打ちできるのは真空しかいないですからね。笑神籤はよくできてる。鳥人直後のハライチ、コーンフレーク直後のオズワルド。そういう役割を背負わされるのもまた、強者の宿命なのかもしれない。

編集S M-1ですねえ。

新越谷 M-1やなぁ。

編集S ヨシダ2000です。

新越谷 正直、本当によくないと思った。M-1に来るならせめて知っててくれ、ヨネダ2000のことを。打ち合わせとリハをちゃんとやってくれと。

編集S 小田凱人という人が悪いということですか。

新越谷 いや、小田凱人という人じゃないから。史上最高車イステニスプレイヤーだから。この人、フェデラーとかマイケル・ジョーダンとかアイルトン・セナとか、そういうクラスの人なわけですよ。現役バリバリのそういう人にヨネダ2000をチェックしとけと誰が言えるのか。

編集S それは言えないですね。

新越谷 だから、そこも含めて笑神籤引く人のチョイスはちゃんとやってほしいし、呼んだからにはちゃんと準備させなきゃですよ。ABCの人たちも猛省してると思うけど。自らM-1の格を下げるようなことを起こしてしまったんだから。

編集S ネタの話しましょう。

新越谷 超楽しかった!

編集S はい。

新越谷 もう一回言いましょうか? 超楽しかった!

編集S そんだけでいいですか?

新越谷 いいですよ。点数とか順位とかじゃないでしょう。毎年見たいし、優勝して卒業なんてされたら寂しいもん。

編集S はい。じゃあたくろうです。

新越谷 それこそ「今年のあいつらはヤバイ」枠。前評判通りでしたね。

編集S おもしろかったですね。

新越谷 おもしろかった。リングアナを2人でやりたい願望ってなんなんだよというところから、もう。

編集S どうやって思いつくんですかね。

新越谷 あのね、私ボクシングファンなわけですよ。だからタイトルマッチの光景とかめちゃくちゃ容易に浮かぶわけです。

編集S はい。

新越谷 そんで、細かく聞いてたら体重と階級が合ってないとか、保持しているタイトルに矛盾があるとか、そういうこともあるんだけど、マジでまったく気にならないのね。おもしろさがディテールを完全に凌駕している。バンドに圧がないけど、赤木が圧のないバンドに飲まれていくくらい最弱であるという構図が、なんともいえない可愛げになってる。そんで最弱のくせに大喜利が激強。たくろうがいろいろ試行錯誤しながら守ってきた、その柔らかいものが花開いた感じ。すごくよかった。はい、準優勝確定。今年はエバースだったけど、たくろう2本目は競馬かな、来年どうすんのかな、そんなふうに考えていた時期が、私にもありました。

編集S 私にもありました。

新越谷 前々回の雑談で、「今年のM-1はナベとギャンゴリの全国デビューの回」と言いました。

編集S 言いましたね。

新越谷 「この人はこれから日本中に愛されていくのだ、という、人が報われる瞬間が見られるかもしれない」と。

編集S そうですね。

新越谷 この時点でドンデコルテ、豪快キャプテン、ママタルトが残ってるわけです。

編集S 残ってます。

新越谷 大丈夫かなと思ってたんです。ちゃんと愛されてくれるだろうかと。

編集S そのドンデコルテですが。

新越谷 ね。

編集S はい?

新越谷 ね、愛されちゃうでしょうこれは。

編集S ああ、はい。そうですね完全に。

新越谷 どうですか。

編集S 別にあなたの手柄じゃないけど。

新越谷 でもいいじゃない。すげえ完璧なパフォーマンスだった、ナベ。報われるべき人が報われる瞬間を見た。

編集S 見ましたね。豪快キャプテンもそうでしたね。

新越谷 ギャンゴリもめっちゃよかった。テラサでも、みんな口々に「ギャンゴリを怒らせたい」って言ってて、すごいうれしかった。

編集S なんか急に感想がシンプルになってますけど。

新越谷 疲れてきていることは確かですよね。ここまででもう6時間以上ずっと漫才を見てるわけですから。そら疲れますよ。

編集S お腹も減るし。

新越谷 川瀬名人が「M-1の食卓にはピザポテトがいい」って言ってたから、ピザポテト買ったもんね。

編集S 今する話ですかそれ。いちおう仕事として請けてる原稿ですよ。

新越谷 じゃあちゃんとやります。ママタルト。

編集S ちゃんとやりましょう。

新越谷 ママタルトねえ、もちろん超すげえおもしろい、ほのぼの漫才コントの到達点だと思うし、檜原も肥満も大好きですよという前提で言いますけど。

編集S なんですか。

新越谷 ほのぼののわりに、やってることが迷惑系なんですよね。

編集S 迷惑系。

新越谷 去年は公共の銭湯で大暴れしてたし、今回も鳥居に自転車くくったり、神社を崩壊させたり、ひでえことやってんの。これあんまり誰も気にならないんですかね。道徳の乱れというか。

編集S ギャグマンガみたいなもんでしょう。

新越谷 やりたいことはそうなんだと思うけど、この道徳的な乱れの一点においてのみ、ママタルトを愛しきれないんですよ。肥満はハゲてもいるし、ひわちゃんリアル日本人中年だし、目をこらせばこらすほど、ママタルトのネタってマンガに見えなくなっていく。

編集S それは新越谷さんがデブだからじゃないですか?

新越谷 は?

編集S 世の中の大半であるデブ以外にとって、デブはデブである時点でマンガ的なんですよ。デブにリアルを見るのはデブだけなんです。わかります?

新越谷 おっ……と、すごいこと言ってるぞ。

編集S マイノリティとしての自覚を持てよ。

新越谷 ちょ、すごいこと言ってるって。

編集S これ、誰も傷つけない笑いなんてありえないとか、そういう問題にもつながってくる話だからな。

新越谷 なんだよ急に……誰なんだこの人……。

最終決戦

編集S そういうわけで、最終決戦はドンデコルテ、エバース、たくろうです。

新越谷 ……はい、そうです。

編集S エバースが2番手を選びましたね。

新越谷 ちょっと気を取り直しますね。そうです。エバースが2番手を選びました。

編集S 町田の提案だそうで。

新越谷 もうこの時点ではエバースが勝ち切ると思ってるから、なんかシャレたことやってくるな、くらいに思ってました。

編集S まずドンデコルテ。1本目が振りになってましたね。

新越谷 めちゃくちゃ笑ったし、めちゃくちゃ共感しました。町の変なおじさんと我々は地続きであるという話は、笑いながら胸に迫るものがある。前に『水ダウ』で町の変なおじさん企画あったでしょう、あれ私、最後まで見られなかったんですよね。これが私たちではないとは言い切れないぞという思いは、ずっとある。あのね、例えば町中でずっとブツブツ何か言ってるおじさんいるでしょう。変なおじさんの一種ですよ。それとは別タイプで、公園でずっとフラフープやってて、周囲に子どもが集まってるような変なおじさんもいるわけですよ。

編集S 何の話ですか。

新越谷 うちの近所の公園にね、その2人の変なおじさんを1人に融合させたようなおじさんがいるんです。派手な格好でフラフープしながら、ずっと何かブツブツ言ってるの。そのおじさんを見ると、いつも不安になるんです。そういう不安を今回、ナベに何か昇華してもらったような感じがするんですよ。

編集S ちょっと漫才見るのに私情が入りすぎじゃないですか。

新越谷 たぶんあなたのせいです。こんな話をしたいわけじゃなかった。

編集S まあいいや、エバースです。

新越谷 ハイエースかなと思ったんですけど。

編集S ネタ選び。

新越谷 うん。これもテラサで、佐々木が「自分たちを知らない人の前でやってもウケたから」という理由で腹話術を選んだと言ってまして。

編集S 言ってましたね。

新越谷 それはそれでM-1の戦い方として正しいものだと思うんだけど、もう1本目で会場も視聴者も、全員がエバースの大ファンなわけですよ。1本目に龍を出したことで、エバース自身がM-1をそういう会場に変えてしまった。だからここで出すべきは一般ウケするネタじゃなくて、一般には微妙だけど単独でバカウケするタイプのネタだったんだと思うんです。そりゃもちろん、あくまで結果論ですけど。

編集S それもM-1ですね。で、たくろう。

新越谷 まあ見事。何も言うことないし、ただ味わいたい。最高に完璧に超笑った。幸せだった。

編集S 今回のM-1も文句なしですか。

新越谷 文句なんてあるわけない。だいたいさ、独り身のデブの50手前のおじさんがさ、この年末に何時間も漫才見続けて、夢中で見て、大爆笑してんですよ。

編集S そうですね。

新越谷 お笑いっていいものだよね。

編集S ホントにね。

(文=新越谷ノリヲ)

新越谷ノリヲ

東武伊勢崎線新越谷駅周辺をこよなく愛する中年ライター。お笑い、ドラマ、ボクシングなど。現在は23区内在住。1977生。

n.shinkoshigaya@gmail.com

新越谷ノリヲ
最終更新:2025/12/22 14:51