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目黒蓮『ほどなく、お別れです』パネル展「不謹慎」騒動…葬儀関係者が感じた「現場」と「世間」のギャップ

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 時代の顔の一人として、各界から引っ張りだこのSnow Man・目黒蓮(28)が、浜辺美波とW主演を務める映画『ほどなく、お別れです』。2月6日の公開直前、葬儀場という“リアル”でのPR施策騒動で思わぬ炎上が起こったものの、興行収入ランキング初週1位と出足は好調――だが、マナーやそのあり方について議論が発生しやすい「葬儀」というイベント。業界関係者に話を聞くと、想像以上に特殊で複雑な事情が絡み合うようで……。

芸人が「映画界」に踏み出すワケ

エンタメに「死」をめぐる作品が増えた

 孤独死や老老介護など、高齢化社会をめぐるトピックが喫緊の課題として差し迫るなか、エンタメ界にもその波は押し寄せる。昨年だけでも『終活シェアハウス』(NHK BS)、『ひとりでしにたい』(NHK総合)、『介護スナックベルサイユ』(フジテレビ系)といった「終活」や「死に方」をテーマにしたドラマが数を増やし、今シーズンも『終(つい)のひと』(TBS系)が放送中。映画では『安楽死特区』が1月末から上映されている。またドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ)では、安楽死を遂げるためスイスに渡った女性とその家族を追った回が反響を呼び、2024年のTVer見逃し配信「報道・ドキュメンタリー部門」で84万回と歴代最高再生数を記録した。

 それぞれの「死に方」があれば、それをサポートする人も当然いる。ただ、葬儀に関連するネタは社会において長らく“タブー”扱いだった。業界歴30年、「考える葬儀屋さん」こと赤城啓昭さんは、そうした歴史から「業界にとって、エンタメ界が葬儀をテーマに扱ってくれるのは歓迎すべきこと」としたうえで、“乗っかり方”への不慣れな事情を明かす。

パネル展が「葬儀場でなければダメ」だった事情

 本作は目黒と浜辺美波(25)演じる2人の葬祭プランナーがタッグを組み、遺族にとっての“最高の葬儀”を目指すストーリー。旬の俳優たちが「葬儀」をテーマにした作品に出るとなれば、業界にもこれまでにないスポットが当たることになる。葬儀業界も熱視線を送らざるを得ず、「あんしん祭典」は1月21日、映画のペアチケットやオリジナルグッズが当たるSNSキャンペーンやコラボCMといったPR企画にくわえ、全国59か所の自社葬儀会館で公開記念パネル展を開催することを告知。するとSNS上では葬儀場に多くのファンが集まる可能性に慎重な見方を示す声が上がり、同社は1月26日、Xにてマナーを呼びかけた。ただし、その内容が〈葬儀が行われている日程・時間帯により、展示スペースが開放できない場合があります〉と、あくまでも葬儀第一だとしながらも、〈ご来館いただく皆様だけでなく、同じ時間帯にホール内で故人をお見送りされているご遺族もいらっしゃいます〉と、まるで葬儀とパネル展を“同時開催”するようにも読めてしまったことから、Snow Manファンの心を盛大に煽ってしまった。

〈スノ担ですが大反対です スノ担への注意喚起よりも何よりもまずご遺族の理解と許可が必要になりませんか?〉

 怒りに震えたファンの投稿は瞬時に大拡散し、リアルな“現場”でのパネル展は遺族への配慮が足りないと非難轟々。当該投稿は2月6日までに約770万回ビューを集め、複数のネット媒体が取り上げた結果、開催中止が決定した。Googleトレンドを見ても注意喚起以前はほとんど無風ともいえるレベルだったのに、だ。

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 もちろん、映画そのものに非は全くない。パネル展という企画自体も珍しくないだろう。目黒や浜辺が写るポスターとあれば、展示したい思惑も頷ける。Xには〈実際の葬儀場でやるのは流石にどうなんだ〉〈せめて別の場所でやるとかできないものか〉という疑問も散見されたが、赤城さんは「場所は問題ではない」という。元来、葬儀場は「ホール」としてさまざまな利活用がなされているためだ。

「葬儀場は土着のビジネスなので、地域住民からの理解が何よりも大切です。普段から一般利用に貸し出しているほか、葬儀会社主導のイベントもごく当たり前。特に友引の日は火葬場が休みで葬儀が行われないため、音楽会や絵画教室を開いたり、野菜の即売会をしたりしています」(赤城啓昭さん、以下同)

 たとえば、ある葬儀社はオープン1周年時、感謝祭と称したイベントを開催。終活セミナーや終活写真撮影会といった催しのほか、抽選会や子供向けのお菓子つかみどりといったお祭り的なイベントも行われた。「あんしん祭典」でも、お笑いライブなどのイベントを開催している。

「式場側には、地元で少しでも認知を上げたいという思いがある。多くの人にとって普段は使わない施設ですから、どうしても“自分には関係ない”と、視界に入れてもらえないのが葬儀場です。『ここに葬儀会館がある』と知ってもらうには1度でいいから足を運んでもらうことが重要なので、パネル展をするとして、逆に葬儀場以外の場所で開催する発想はなかったはずです」

「あんしん祭典」に企画意図などについて問い合わせたが、ノーコメント。赤城さんは「四六時中葬儀をしているわけでもないし、さすがに参列者の隣にファンがいるような導線にはしないはずですが……」といいつつ、「会社側の説明不足は否めません」と指摘する。

競争が激化する葬儀業界

 ハレとケの「ケ」を扱う葬儀会社は「忌避されがちな存在」(赤城さん)だったうえ、過疎地域の人手不足や葬儀の縮小などにより、大手あるいは大手の傘下に入ることでしか生き残れない。全国区で公開されるエンタメ作品のリリースを、自社の存在感を高める機会と捉える発想はごく自然にも思えるが、不慣れなPR施策の落とし穴を浮き彫りにしたともいえそうだ。

「そもそも葬儀社は地元の半径3キロメートルでビジネスをするような世界。人は必ず死ぬので(葬祭業は)盤石のビジネスかと思われがちなのですが、今や跡継ぎややりたい人もいないし、実際は地方の零細企業からどんどん潰れている。生き残るためには、マス戦略が必要不可欠になってきている現状があります。たとえば2024年と2025年には、最大手の葬儀会社『公益社』を抱える燦ホールディングスが同業他社を買収して、規模をさらに拡大しました。寡占化が急速に進んでいるのです」

 帝国データバンクによると、2024年の葬儀社の倒産・休廃業件数は47件と過去最多を更新、27件だった前年比1.7倍ペースで増加。背景には、コロナ禍をきっかけに少人数かつ簡素な葬儀スタイルの需要が拡大し、各社の収益が伸び悩んだことがある。一方で東京商工リサーチの調査では、同年の葬儀業の新設法人数は105件と倒産・休業の件数(74件)を上回る。廃業も多いが、新しい葬儀のあり方として新興勢力も台頭するなかで、全国的に注目度の高いコンテンツとのタイアップは、ビッグチャンスだ。

葬儀業界×PRの行く末は…

 しかし基本的に「お悔やみ」に寄り添うことをビジネスとする業界の立ち位置は、「PR」において“ノリノリになるわけにはいかない”という特殊な配慮を求められる。

「大きな広告代理店を使う企業は業界上位のほんの一部。基本的にはドブ板営業の世界で、ネットやSNSにも疎いきらいがあります。新聞の折り込みチラシがPRの主流だったので、SNSが宣伝ツールとしての認識はあっても、炎上を招くリスクがあることまではわかっていない担当者も多いのでは。

 今回の件に関していえば、自分たちはそのつもりがなくても、目黒さんのような人気者を“利用”するように見えたことが批判の一端でもある。PRなんだから“利用”はビジネスとして当然なのですが、こと人の死が関わる業界なので、人気者にノリノリで乗っかっている感がゲスいように見えてしまった」

 ならば、今回のパネル展を実現するためにはどうすればよかったのか。

「まず最初に導線などをしっかりと説明しておけば、炎上にもならなかったのではと思いますし、炎上後の対応ももう少し上手にできた気がします。遺族の方への配慮や企画意図などを再度丁寧に説明するか、中止であればその経緯をきちんと公表する。今のままでは『無神経なイベントを行おうとした企業』というイメージで、企業が何をどう学んだのかもわからないまま。今回は中止しても、また何かやりかねないという見方が残ってしまいます」

「お葬式=話題に出すのもタブー」の風潮は薄まりつつあるが…

 この騒動を通して赤城さんは、葬儀業界の現在地と世間へのアピールの難しさを感じたという。

「お葬式は古くからタブー視され、話題にあげるのも嫌がられたものです。親に、葬式どうする? なんて聞くと、『早く死ねと言ってるのか』と怒られる。30年ほど前には、葬儀場のチラシを撒くと1000件に1本くらいの割合で『縁起でもない』『こんなもの撒くな!』と抗議の電話がかかってきました。火葬場も含めて、自宅の近くに葬儀場ができるとなると反対運動が起こるのもよくある話で、迷惑施設扱いでした。

 しかし、高齢化が進むにつれて、終活、お墓、葬儀といったものがリアルな問題になってきた。ただ、まだまだ“こうあるべき”が根強いのも事実で、マナーひとつとってもあれはダメ、いや今はもうOKなどと議論になりやすい。

 今回も、おかしいと思えば行かなきゃいい話ですが、ファンがマナー知らずと思われるのは心外だということですよね。SNS戦略は、さまざまな属性、考え方、価値観の人が見ている空間なので、ただでさえPR発信は難しい。そのうえ、“けしからん警察”が湧きやすい業界です。協賛をしてもクレジットに出すぐらいだとか、サイトで告知する程度に留めるのが無難ではありますね」

「死」や「お葬式」との距離感や、折り合いの付け方は人それぞれ。映画やドラマは“ファンタジー”として受容できても、それが現実の葬儀場に持ち込まれると“リアル”に感じて嫌悪感を抱く人も少なくないのだろう。複雑で特殊な事情が垣間見えた炎上騒動だった。

自治体は“アーティスト”なのである

(構成=吉河未布 取材・文=町田シブヤ)

町田シブヤ

1994年9月26日生まれ。お笑い芸人のYouTubeチャンネルを回遊するのが日課。現在部屋に本棚がないため、本に埋もれて生活している。家系ラーメンの好みは味ふつう・カタメ・アブラ多め。東京都町田市に住んでいた。

X:@machida_US

最終更新:2026/02/14 18:00