『名探偵コナン 隻眼の残像』地上波初放送 古谷徹降板に見た「声優ブーム」の光と陰

毎年公開されるたびに次々とメガヒットを飛ばしているのが、劇場アニメ『名探偵コナン』です。『名探偵コナン 黒鉄の魚影』(2023年)は興収138.8億円、『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』(2024年)はシリーズ最高となる158億円を稼ぎ出しています。
昨年公開された『名探偵コナン 隻眼の残像』(2025年)は、147.4億円を記録しました。「黒ずくめの組織」が関係せず、アクションも控えめにもかかわらず、すごい数字となっています。30年にわたって築かれてきた『名探偵コナン』のブランド力の高さを感じさせます。
4月10日(金)より公開の最新作『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』は、どれだけの数字を弾き出すのか、ファンならずとも気になるところです。同日の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)で地上波初放映(本編ノーカット)される『隻眼の残像』の見どころを紹介します。
毛利小五郎と長野県警トリオが物語の中心に
小学生探偵の江戸川コナン(CV:高山みなみ)は、信州の八ヶ岳連峰へと向かいます。私立探偵の毛利小五郎(CV:小山力也)の警視庁時代の同僚で、長野県警に勤めていた鮫谷が何者かに射殺された事件を追うためです。
今回、大いに活躍するのは長野県警トリオです。捜査中に片目を負傷した大和敢助、大和と幼なじみの上原由衣、諸葛亮孔明のような明晰な頭脳を持つ諸伏高明の3人です。ちなみに高明の弟・諸伏景光は、公安に配属されています。次週放送の『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』(2022年)にも関係してくるので、押さえておきたいポイントです。
事件の鍵となるのは、8年前に長野県で起きた銃砲店強盗傷害事件。二人組の犯人は逮捕されたものの、銃砲店経営者の娘は怪我を負い、将来を悲観して自殺しています。また、この事件を追うコナンを、なぜか公安は気にして盗聴器をコナンに仕掛けます。
かつての相棒・鮫谷の無念を晴らそうと雪山での捜査を懸命に進める小五郎たちですが、事件の真相は二転三転することになります。
近年は大掛かりなアクションシーンが見せ場になっていた劇場版『名探偵コナン』ですが、今回は毛利蘭と犯人との格闘シーンや雪崩シーンはあるものの、それほど目立ったものではありません。あくまでも「謎解き」がメインとなっています。
8年前に起きた銃砲店襲撃事件、そして国会で法改正が審議中の「司法取引」が関係した遺恨劇となっています。
愛憎渦巻く大人のサスペンスドラマ
本作の脚本は、『名探偵コナン 純黒の悪夢』(2016年)や『名探偵コナン ゼロの執行人』(2018年)などの大ヒット作を放った櫻井武晴氏です。『名探偵コナン』に参加する前は、『科捜研の女』『相棒』(テレビ朝日系)などの刑事ドラマの脚本を手がけてきました。今回の『隻眼の残像』は実写化できそうな、愛憎渦巻く大人のサスペンスドラマとなっています。
エンディングには岩崎宏美が歌う「聖母たちのララバイ」が似合いそうな、「火曜サスペンス劇場」っぽい内容です。
さて、「司法取引」は米国だけでなく、日本でもすでに取り入れられている制度ですが、実際はほとんど利用されていないようです。そうした実在の司法制度を使って、リアルさを感じさせるフィクションドラマに櫻井氏は仕立ててみせています。
灰原哀(CV:林原めぐみ)や少年探偵団の出番は少なめながらも、事件解決にそれぞれ関わり、うまくバランスを保っています。ファンを楽しませる配慮は抜かりありません。
人気キャラ・安室透に訪れた突然の交代劇
地味な内容で大ヒットしたことも驚きですが、もうひとつの注目ポイントとなったのが人気キャラクター・安室透役の声優の交代劇でした。劇場版では『純黒の悪夢』から登場した公安警察の降谷零こと安室透は、ベテラン声優の古谷徹が務め、劇場版『名探偵コナン』がメガヒット化した立役者として人気を集めていました。
古谷徹は、昭和世代には懐かしい『巨人の星』(日本テレビ系)の星飛雄馬、『機動戦士ガンダム』(テレビ朝日系)のアムロ・レイなどの大人気アニメの主人公を演じてきたレジェンド声優です。そんなレジェンドでも、近年の安室透の過剰人気は想定外だったようです。
2024年5月に「週刊文春」(文藝春秋)によって、37歳年下の女性ファンと不倫関係があったことがスクープされました。不倫の事実を認め、古谷徹は『名探偵コナン』の安室役、さらに『ONE PIECE』のサボ役の降板を自分から申し出ています。
その結果、安室役には同じ「青二プロ」所属の草尾毅が起用され、『隻眼の残像』からチェンジしています。『隻眼の残像』が大ヒットしたことから、ファンに二代目安室透は受け入れられたと言っていいでしょう。
レジェンド声優として独自のポジションを築いてきたと思われていた古谷徹ですが、結局のところ代替可能な存在だったことになります。不倫スキャンダルに加え、その事実もショックでした。
声優ブームの裏で起きていること
古谷徹降板トラブルに先立って、2022年には『鬼滅の刃』の冨岡義勇役で人気だった櫻井孝宏、2021年には『東京卍リベンジャーズ』のドラケンこと龍宮寺堅役の鈴木達央の不倫スキャンダルが発覚する騒ぎとなっています。
人気声優といっても聖人君子ではないので、スキャンダルが起きてもおかしくありませんが、かつてない声優ブームがさまざまな騒ぎを引き起こしているのも事実でしょう。
女性誌には「人によりけりですが、声優のなかにはもともとは目立たないタイプだった人も多い」などと一連の不倫騒ぎについての記事が出ています。学生時代は女性にモテない「陰キャ」だったのが、声優になってモテ始め、浮かれてしまうケースがあるようです。
数々のアニメ作品に出演する人気声優たちに対し、「新人ランク」の若手声優は声優業だけでは食べていけず、アルバイトをしないとやっていけないことも知られています。過酷な労働環境で働くアニメーターだけでなく、同じアニメ界の声優業も光と陰を感じさせる職業です。
人間が持つ夢や欲望は、プラスに働けば生きるエネルギーになりますが、コントロールを誤ると虚栄心や嫉妬心を生み出し、トラブルを招くことにもなりかねません。江戸川コナンは、そんな人間たちのダークサイドを30年間以上も観察してきたことになります。
余計なお節介ですが、小学生探偵の将来が今からちょっと心配です。
(文=映画ゾンビ・バブ)
