密着ネトーチカ! デカ女系コスプレイヤーのアツすぎた夏コミ2日間

8月16日・17日の2日間、東京ビッグサイトで開催された「夏のコミックマーケット106」(C106)。今年も多くの美女コスプレイヤーたちが会場に華を添えた。
8月の暑さの盛りに暑苦しいほどの人々の熱気を感じられる場所は、いまどきコミケ会場か甲子園球場くらいなもの。それだけにコミケ参加者それぞれにも熱量高めなドラマがありそうだ。
そこで今回は人気コスプレイヤー・ネトーチカさん(@neti_jp)を取材。ウクライナ出身の彼女は、夏コミという日本の過酷な夏イベントをいかに満喫したのか? 熱闘の裏側を少し覗かせてもらった。
規格外のスタイルで庭園コスプレエリアに降臨
幼少期より『セーラームーン』などに親しみ、オタクとしてウクライナで育ったネトーチカさん。避難先の日本でひょんなことからコスプレ活動を始めたり、「#デカ女」としてネットアイドル的注目を浴びたりした結果、Xアカウントは現在約20万フォロワーを誇る。
近年は外国人参加者の姿も目立つようになっているコミケだが、C106では約3年ぶりに庭園がコスプレエリアとして復活。屋上展示場や東8ホールといったコスプレエリアと合わせて賑わいを見せた。
午前11時を過ぎた頃、庭園コスプレエリアに『アズールレーン』ボルチモアのコスプレ姿で現れたネトーチカさんは、遠目にもカメラマンたちの目を惹きまくり。予想通りすぐに発見できた。
なにしろ180センチという日本人女性ではなかなかお目にかかれない長身スタイル。この日は10センチのヒールを履いている。
「コスプレ活動では衣装のサイズ合わせの苦労が尽きないです。最初に届いた衣装はトップスのサイズは問題なかったんですが、下はサイズが小さくて一度返品しました。コミケ前にトライアルの撮影もしたので、コミケの準備期間としては2〜3週間ほど。なので費用は通常の2倍掛かっています」(ネトーチカさん、以下同)
「女性用・男性用のサイズがある衣装では、女性用のトップスと男性用のパンツを合わせることもあります。今回の衣装も下は“女装用”です。本来は膝上のベルトのパーツがもっと上にくるデザインなんですが、全く届きません。オーダーメイドでも対応してくれないこともあるので、衣装によっては自分で手直しすることもありますね」
ネトーチカさんの取材対応の通訳やコスプレ活動などをお手伝いしている日本人の知人も程なく合流した。来日して早3年が経ち、簡単な日本語はできるものの、彼女のコスプレ活動にとってサポート役は欠かせない存在だ。

コスプレイベントではレイヤーに“専属カメラマン”が付くこともあるが、ネトーチカさんはスラブ系のパリピ的ビジュアルとは裏腹に、自他ともに認める真性の“陰キャ”。コスプレ界隈の人間関係も希薄らしく手配したことはないという。
お気に入りの回復アイテムは「キレートレモン」
最高気温34度(気象庁発表)と夏らしい天気となったコミケ1日目。庭園エリアに立つネトーチカさんの前には、あっという間に撮影待ちの長い列ができていった。撮影が順調に進む中でも気温はグングン上昇。撮影を開始して20分ほど経ったところで、休憩も兼ねて12時から開放される屋上コスプレエリアへ向かうことになった。
どうやら広々とした芝生のフィールドをイメージしていたようだが(※コロナ禍前は防災公園がコミケのコスプレエリアになっていたこともある)、予想よりも庭園エリアが手狭に感じたらしい。実際、開放直後の屋上コスプレエリアは人口密度が低く、撮影場所も確保しやすそうだ。
その後は屋上エリアで他のレイヤーの邪魔になりにくい場所を見つけ、撮影待ちの列が伸びてきたら、3〜5分のカコミ撮影を実施。約30分の休憩に入るというサイクルを閉会の16時近くまで5回ほど繰り返した。
「照り返しが強烈で高い湿度がツラいです。去年の夏コミでは『アクエリアス』を4リットル飲みましたが、手洗いには一度も行きませんでした。飲んだそばからすべて汗になるので、今日も同じくらい飲むと思います。ウィッグやブーツの中が汗のシャワーを浴びたようで、悲惨なことになっていますね」
ネトーチカさんの故郷であるウクライナ南部・オデーサでも夏は気温30度を超える日もあるが、湿度がなく海風が吹く地域のため、体感気温はずっと低いという。この日、屋上エリアも風はあったが、屋外の直射日光の下では、長くても20〜30分程度で活動の限界を感じる。
主催のコミックマーケット準備会でも熱中症対策を会場で各種講じているが、一人ひとりの意識が一番大切なのは間違いない。
「いつもイベント前は完全に戦闘態勢で、アドレナリンが出ているので、食欲も睡眠欲もあまり湧かないです。朝もおにぎり半分しか食べていませんが、『アクエリアス』と『キレートレモン』を補充しながら、夕方まで乗り切ります。こうしたイベントでしかフォロワーさんと会う機会がないので、今日はたくさんの人に写真を撮ってほしいです」
休憩中は水分補給をしつつ、SNSをチェックしたり、推しキャラの「リラックマ」のキャンペーン情報をチェックしたり。ネトーチカさんはカフェインが苦手らしく、「『キレートレモン』を飲むことが一番のリフレッシュタイム」とのことだ。
高身長のネトーチカさんは人混みの中でも見つけやすく、コスプレエリアで撮影場所を探しているだけで、ドラクエのように1人、2人とカメラマンが彼女の後ろに続く様子がなんとも印象的だった。
2日目は初のサークル参加。トラブルも……?
日付変わってC106最終日となる2日目、ネトーチカさんは朝8時に現場入り。都内では最高気温35度を超える地点もある厳しい暑さとあったが、この日は初のセルフプロデュース写真集『アニャの湯・鹿児島編』『同・ウクライナ編』、ウクライナの伝統的な微炭酸飲料「クワス」のシロップなどを販売した。
「『ウクライナ編』は今年3月に帰国した際、17世紀から湯治文化が続くウクライナの温泉地で撮影しました。カルパチア山脈にある小さな集落で、温泉まで行くのがとても大変でしたね。バスも電車もレンタカーもなく、タクシーとヒッチハイクで向かいました。
日本の温泉文化が大好きで、いろんな日本の温泉を訪ねてきましたが、鹿児島県霧島市の撮影では砂風呂にも挑戦しました。ウクライナの温泉も日本と違う文化があって、それぞれの良さがあると思います」
2日目は助っ人2名が加わり、売り子は私服姿のネトーチカさん含めて計4人という体制。昨夜はエビチャーハンとビールで夕食を済ませ、すぐ帰宅したらしく彼女の体調も万全そうだ。
「ウクライナではプロアーティストや世界的スターでなければ、こうしたサポートは受けにくいと思います。日本人は同人誌などのアマチュア的な活動が歴史的に好きで、そうした活動をサポートする人の層もとても厚いと感じます」
今回は自身初のサークル参加でトラブルも発生したそうだが、助っ人の手助けもあって開場時間の10時半には設営を無事完了できたという。
なんでも事前に申請した持ち込み部数についてChatGPTに相談ところ大量の数を推奨され、そのまま搬入したところ、規定のスペースに入ったものの「地震などで倒れたら危険」と準備会スタッフから言われたらしい。そのため、「メロンブックス」の委託受付に在庫を持ち込むという、重ためのタスクが急遽発生したそうだ。
そんなドタバタもありつつ、ちゃっかりブースの配置は “誕生日席”の角という立ち寄りやすい場所を割り振られている。もちろん、ネトーチカさんはやる気(売る気)満々。一度も休憩を取ることなく、この日はひたすらサークルスペースで写真集を売り続けた。
「初めての物販は楽しかったです。想定外のトラブルもありましたが、良い勉強になりました。反省点は次に活かしたいです。とりあえず今は油っぽい食べ物とビールがほしいですね。いつもコミケの後は2日間くらい何も予定は入れていません。明日の朝は遅くまで寝るつもりです」
(取材・文・写真=伊藤稜)