くすぐり×グラビア フェチ盛り界隈の新たな世界線

このところSNS界隈で話題の「くすぐり」。たとえば「くすぐり」というキーワードの検索ボリュームは月間53万回以上で、さまざまな関連動画が人気を博している。この数字はビッグワードと言えるもので、もはや「くすぐり」はニッチなジャンルではなく一大カテゴリーと言えそうだ。※検索ボリュームはvidIQ調べ
そんなグイグイきている「くすぐり」に着目した雑誌サイゾーのグラビア班が、くろは & 髙橋七瀬という人気モデルを迎えて新たな世界線のグラビアに挑戦。サイゾー2025年11月号のグラビア特集でお披露目となった。
本サイトでは、そんな「くすぐり」をテーマに撮影されたグラビアを紹介しつつ、監修に入ってくれた、くすぐり愛好家にしてくすぐり文化研究家の琥珀りぜ氏のインタビューを掲載したい。
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【琥珀りぜ】
くすぐり文化研究家/X@lizekohaku
琥珀りぜ、くすぐりとの出会い
ーーまずは自己紹介をお願いします。
琥珀りぜ(以下、琥珀) くすぐり愛好家として、くすぐりについて研究しながら表現活動をしております琥珀りぜです。
ーーくすぐりとの出会いというのは?
琥珀 くすぐりとの出会いは、幼いころ、小学二年生のときまで遡ります。当時の担任の先生は、新任でとても人気のある方でした。私は内向的な子どもだったため、周囲のように積極的に先生に話しかけることができず、どこかで「仲良くなりたい」という気持ちだけが膨らんでいたのだと思います。
その思いが、ある日ふとした拍子にカタチになって表れたのが「くすぐり」でした。
教室を出る先生の背後にそっと近づき、脇腹に両手を差し入れて、ギュッギュッと指を動かした瞬間、先生は驚きの声を上げて、その大きな背中がくずれるように廊下へ倒れていきました。
何が起きたのかわからずに立ち尽くす私の視界に、倒れた先生の上履きの先が映りました。ほんのり桃色がかったその色は、おそらく私の頬の色と同じだったと思います。
胸が高鳴り、頭の中はふわふわとした光に包まれて、まるでアニメのきらきらとした世界に迷い込んだかのような、不思議な感覚に満たされました。
それ以来、くすぐりは私の感性とともにあり、時を重ねながら、今も静かに、そして確かに私の中に息づいています。

ーーこのところ、「くすぐり」というキーワードをSNSなどでよく見かけます。
琥珀 現代においては、XやnoteなどのSNSを通じて、自らのフェチや嗜好を言語化し、発信する動きが活発化しています。中でも「くすぐり」を主題としたイラストや小説など、二次創作の作品群が広がりを見せており、それに呼応するかのように、くすぐりをめぐるコミュニティも静かに、しかし着実に成長を遂げているように感じます。
とりわけ、SNSや動画コンテンツの影響を受けて、10代20代といった若い世代が、くすぐりという感覚に初めて関心を寄せるケースも増加傾向にあります。情報との偶発的な出会いが、内側に潜んでいた感受性や欲求をそっと呼び起こす──そうした瞬間が、日常の中に散在しているのかもしれません。
また、かつてに比べて「くすぐりを体験できる場」としての店舗も徐々に増えてきてはいますが、それらを実際に利用しているのは、フェチ全体から見ればまだ限られた一部にとどまる印象です。店舗へ足を運ぶことなく、くすぐりフェチ向けのイベントやオフ会を主な活動の場とする方々もいれば、自宅の静けさのなかで、くすぐられる/くすぐることへの憧憬をただひっそりと抱きつづけている方も少なくないでしょう。
くすぐりとは、単なる肉体的な刺激にとどまらず、人の深層にある“感覚の記憶”や“誰かと繋がる願い”に触れる行為でもある――そんな風に捉えることもできるのではないかと考えています。
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くすぐり界隈SNS最前線
ーーSNS上では「くすぐり動画」が人気のように思います。
琥珀 くすぐり動画の人気傾向は、プラットフォームごとに大きく異なります。
たとえば、YouTubeでは「耐久くすぐり」や「我慢対決」など、ゲーム性のある構成が支持されており、VTuberによる配信も人気です。また海外では、ASMR的な演出で“感覚の余韻”を楽しむスタイルも見られます。
TikTokでは、短尺でリアクション映えを狙ったくすぐり動画が主流です。特に女性同士の明るく軽やかな“じゃれ合い”系や、笑いを誘うカップル動画が多く投稿されていますね。
Xでは、販売動画や作品紹介が中心で、フェチ性の強いコンテンツも散見されます。海外系の本格的な拘束くすぐり動画も、この場で注目を集めています。
Fantiaやmyfansなどのファンサイトでは、よりニッチで深度のある表現が可能になっており、制作者と視聴者の距離が近いのも特徴です。
プラットフォームの文化的特性に応じて「遊び」「反応」「嗜好」「芸術」といった多面性を持ち、その表現は今なお拡張を続けています。
くすぐりという行為・感覚は、その根底に「身体の無防備さ」「反射的な感情の表出」「コントロールの逸脱」といった要素を含みますが、プラットフォームの性質によって、その受容と表現のされ方は大きく変容します。
YouTubeやTikTokでは「演出された身体反応」として消費され、Xやファンサイトでは「実際のフェティッシュ実践」として尊重される傾向が見られます。

くすぐり愛好家事情
ーーくすぐり愛好家には、どんなタイプがあるのでしょうか。
琥珀 くすぐりの愛好家は一見シンプルに分類できそうでいて、実際には非常に多様で繊細な嗜好のグラデーションが存在します。
基本的には大きく分けて、「くすぐることに快感や興奮を覚える責め手」、「くすぐられることに高揚を感じる受け手」、そしてその両方を楽しめる「スイッチャー」 という3つのタイプが存在します。
どの立場に惹かれるかは、その人がくすぐりを好きになったきっかけや当時の感情、またはもともとの性的傾向(いわゆるS・M気質)にも深く関係しているように思われます。
また、成長の過程で身近なくすぐり体験――たとえば家族や友人とのスキンシップの中で芽生えた記憶――から、この嗜好に導かれる方もいれば、SMや他のフェティッシュを辿るうちにくすぐりという感覚にたどり着く方もいます。
くすぐりだけに特化したフェチの方もいれば、強い拘束や羞恥の要素をともなうSM的世界観と結びつけている方もおり、その在り方は本当に人それぞれです。
単なる感覚遊びに留まらず、支配と被支配、無力と快楽、緊張と笑いといった感情のあわいに惹かれている方も多く、まさに「感覚と心の交差点」に存在するフェティッシュといえるかもしれません。

ーー海外でも「くすぐり」は人気があるのですか?
琥珀 アメリカやイギリスなどの欧米では、「くすぐりフェチ」はひとつの性嗜好としてしっかり認識されていて、専用のコミュニティや映像作品、ドキュメンタリーなどを通じて、その存在が広く知られています。
一方で、それ以外の国や地域では、くすぐりについて語られること自体がまだ少なく、情報も限られているため、どちらかというと「静かな嗜好」として、ひっそりと存在しているように感じます。
こうした違いは、文化的なタブー意識や公共性のとらえ方、メディアでどう扱われるかなど、社会的な背景によるものが大きいのではないでしょうか。
最近では、日本のくすぐり表現に惹かれる海外の方も少しずつ増えてきている印象があります。欧米では、全身で大笑いしながら激しく動くような、ダイナミックなスタイルが主流ですが、日本では、可愛らしさや恥じらい、そしてときに快楽へとつながっていくような、繊細で演出的なくすぐりが好まれる傾向があります。
その違いがかえって新鮮に映るのか、日本で制作されている超ハード系のくすぐり作品に強く惹かれ、注目している海外の愛好者も少なくありません。

静かで温かな芽生え
ーーくすぐりの起源というのは?
琥珀 くすぐりのはじまりは、いつの時代も静かであたたかいものだったと思います。母と子の間に流れる、言葉を持たない笑いのやりとり。あるいは、恋人同士や親しい友人がふと指を滑らせる、その一瞬のふれあいの中に、くすぐりの原初的なかたちがあったのでしょう。
そこには「親密さ」と「信頼」があり、それゆえにくすぐりは快楽にも羞恥にも、時に罰にも姿を変える、不思議な表現として成り立ってきました。
この多義的な性質こそが、後の「フェティッシュ」や「パニッシュメント(罰)」といった文脈へと枝分かれしてゆく、大きな分岐点になったと考えられます。
記録として確認できるものでは、たとえば中世ヨーロッパでは、身体に傷をつけず苦しめる手段として足裏のくすぐりが拷問の一形態として記されていた例もあります。
つまりくすぐりは、ただのふざけや遊戯ではなく、人間の感情の深部を揺さぶる手段として認識されてきた歴史を持っているのです。
20世紀以降、とくに欧米では「Tickling Fetish(くすぐりフェチ)」という概念が明確になり、愛好者による同人誌や映像、コミュニティなどを通じて独自のカルチャーが形づくられていきます。
このあたりから、くすぐりはフェティッシュのひとつとして確立されたジャンル性を帯びはじめました。
そしてインターネットの普及によって、その文化は急速に広がり、匿名性と即時性を武器に、静かなる愛好者たちが世界中でつながってゆく時代が到来します。
くすぐりを愛する人々は、ついに「孤独な想像」の世界から、「共有される嗜好」の時代へと足を踏み入れたのです。
日本においても、長らくニッチな趣味として扱われがちだったくすぐりですが、近年ではイベント開催や、くすぐりに特化した店舗の登場など表現と実践の場が徐々に増えつつあります。
とりわけここ数年は、可視化された「嗜好の居場所」としての意味合いを帯びてきており、くすぐりという文化が「人前で語っていいもの」へと変わりつつあることを感じます。
現在では、くすぐりは単なる笑いのツールではなく、羞恥、愛情、快楽、そして時に「人間関係の境界を測る儀式」のような側面をもつ、きわめて多面的な行為へと進化しています。
くすぐりという、たった指先の行為がここまで多層的で繊細な意味を持つ。それはきっと、人間が「ふれあい」の中に何より豊かな想像力を宿している証なのかもしれません。

くすぐりフェチの特異性
ーーくすぐり界隈の近しいカルチャーといえば?
琥珀 くすぐりフェチは、ひとつの独立した嗜好であると同時に他のフェティッシュときわめて自然に交差・融合しやすい、感覚的に「ひらかれた領域」とも言えます。その柔軟さゆえに隣接するジャンルとの親和性も高く、嗜好の層が幾重にも重なり合う様相を呈しています。
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◉ 身体部位フェチとの親和性
• 足フェチ(フットフェチ)
• 手フェチ
• 髪フェチ(髪でくすぐられたい)など
これらは視覚的フェチの代表格ですが、くすぐりと接続することで、視覚と触覚、羞恥と笑いという多層的な感覚刺激を生み出します。特に「髪でくすぐられたい」といった嗜好は、フェミニンな印象や非暴力的な演出とも相まって、くすぐりフェチの一変種として捉えられることもあります。
◉ 拘束・緊縛フェチとの接点
くすぐりという行為において「逃げられない状況」は、ある種の前提条件として存在します。この点から、拘束・緊縛とのフェティッシュ的親和性は非常に高く、肉体的な拘束に加えて、「動いちゃダメ」「手を下げちゃダメ」など言葉による精神的拘束を愉しむ傾向も広く見られます。
こうした演出は、責める側と責められる側の間に<緊張と信頼が共存する共同作業>として機能しているように思われます。
◉ 女性上位(Femdom)/BDSM(ボンデージ、ディシプリン、サディズム、マゾヒズム)との連続性
くすぐりは外見こそ可愛らしいですが、その内実には「支配と無力化」という構造が潜んでいます。そのため、特に<女性が上位に立つシチュエーション(Femdom)>や、BDSM的な<支配関係の演出>と自然につながる場面が多く見られます。
笑っているのに相手のペースで崩されていく──この相反する感情の交錯が、くすぐりの奥深さでもあります。
◉ 羞恥・コントロール系フェチとの重なり
• オシガマ(おしっこ我慢)
• 女装フェチ
これらのジャンルに共通するのは、「自分では制御できない身体の反応」や「人に見られることへの羞恥」といった心理です。
くすぐりもまた、「理性を超えて笑ってしまう」という制御不能性に特徴があり、それゆえにこれらのフェティッシュの中で補助線のように作用する役割を担うことがあります。
◉ トラウマフェチ(記憶再現フェチ)
くすぐりフェチの中でも、記憶の再演に特化した嗜好傾向がこの「トラウマフェチ」です。
これは過去に受けた強烈なくすぐり体験『羞恥や緊張、支配感』を、そっくりそのまま再現したいという欲求に根差しています。
たとえば「当時と同じ服装」「言われた言葉の再現」「相手との関係性の設定」など、極めて細やかな演出を通じて、自らの記憶に埋め込まれた<快楽の原風景> にもう一度アクセスしようとする試みとも言えるでしょう。
このような心理構造は、他ジャンルにも見られますが、くすぐりの場合は身体感覚と密接に結びついているため、より強烈に作用するのが特徴です。
◉ 百合的要素との共鳴
日本国内では、女性同士のくすぐりシチュエーションが特に人気を集めている傾向があります。
その背景には「美しいものとして見られる」「男性の視線を介さない没入感」「可愛らしさと儚さの同居」といった要素があるようです。
フェチというよりは表現としての親和性が強い分野ではありますが、「百合×くすぐり」という組み合わせは、映像作品やイラストでも非常に多く見られます。
◉ 総括:フェティッシュの交差点としてのくすぐり
このように、くすぐりフェチは他ジャンルと交差しながら、痛みを伴わない支配という独自の立ち位置を築いてきました。
• 笑いと羞恥を同時に引き起こす
• 身体の制御を失わせる
• 弱さや無力さを曝け出させる
こうした『あいまいで柔らかな支配』の構造は、くすぐりならではの個性であり、同時に他フェチとの接続点として、今後さらに多様な形に進化していく可能性を秘めています。

くすぐりグラビア
新たな世界線
ーーサイゾーが「くすぐりグラビア」に挑戦すると聞いたときには、どんな印象を持ちましたか?
琥珀 お話をいただいたときは、胸いっぱいの嬉しさと、「サイゾーさん、すごいことをされるな」という気持ちになりました。これまでの日本における「くすぐり表現」の中で、グラビアというジャンルは手つかずのままだったように思います。
やはり、くすぐりは「動き」あってこその行為。静止画では伝えきれない感覚が多く、これまでは動画や音声で表現されることがほとんどでした。愛好家の方々にとっても、そちらの方がなじみがあるはずです。
でも、その“隙間”をあえてグラビアで描くという今回の試みに強く心を動かされました。
打ち合わせが始まってからは、「サイゾー×くすぐり×グラビア」でしか見せられない表現をチームで丁寧に探っていきました。サイゾーさんやカメラマンさんもくすぐりについて真剣に取り組んでくださり、とても感動しました。
ひとつずつ形になっていく工程は、私のくすぐり人生の中でも、かけがえのない経験になりました。

ーーくすぐりグラビアの撮影現場では、琥珀さんに直接指導の監修もお願いしました。
琥珀 撮影日は8月の初め。まさに猛烈な酷暑のなかでした。
こうした撮影の現場に立ち会わせていただくのは初めてだったこともあり、緊張しながら現場に向かいました。
モデルを務めてくださったのは、髙橋七瀬さんとくろはさん。
おふたりのしなやかな視線、可憐な佇まい、そして表情ににじむ儚さに、つい見惚れてしまいました。
「夢うつつな表情で」「感情を少し消してみてください」──そんな抽象的な私のお願いにも、期待以上の表現で応えてくださる姿は本当にプロフェッショナルで、現場に静かな感動が走っていました。
そして、くすぐりという世界の“余白”や“余韻”にまで丁寧に目を向けて、繊細に切り取ってくださったカメラマンの日暮さんには尊敬しかありません。
撮影に関わってくださったスタッフの皆さんも、ニッチなフェティッシュである「くすぐり」に理解と興味を持って接してくださって、本当にありがたく嬉しかったです。
心から楽しく、忘れられない現場でした。
このグラビアが、日本の方々だけでなく、海の向こうの愛好家さんたちのもとにも、そっと届いてくれたら。そう願っています。

撮影:日暮圭介
スタイリング:松田亜侑美
メイク:もとこ
くすぐりグラビア情報
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