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アラスカ「魔のトライアングル」に注目集まる 絶えない謎の事故、失踪

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イメージ画像(写真:Getty Imagesより)

 「魔のトライアングル」といえば、米フロリダ半島南端とバミューダ諸島、プエルトリコを結ぶ大西洋の海域「バミューダ・トライアングル」が有名だが、アラスカ州にもある。それが「アラスカ・トライアングル」だ。

 アラスカ・トライアングルは、アラスカ州南部の最大都市アンカレジと同州3番目の都市ジュノー、州最北のウチギアグビック(旧称バロー)を結ぶ地域だ。アラスカの多くの地域と同様に「トライアングル」は北方林や険しい山々、高山湖、そして広大な原生地域と、気が遠くなるスケールの自然が広がっている。

 遭難や航空機事故が後を絶たず、捜索しても遺体どころか手掛かりとなる残骸や形跡が残っていないケースが多い。科学的な視点では言えば過酷な自然環境が原因とされるのだが、説明がつかないことから、ミステリーとして語られる。今年2月6日、10人乗りの小型機が消息を絶ち、改めてアラスカのミステリーが注目された。未確認飛行物体(UFO)の目撃情報も多く、最近では「UFOホットスポット」として研究者から熱い視線が注がれている。

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きっかけは有力政治家の航空機事故 残骸すら見つからず

 アラスカ・トライアングルが意識され始めたのは1972年のショッキングな航空機事故からだ。10月16日、米議会下院の多数派だった民主党のヘイル・ボッグス院内総務(ルイジアナ州選出)を乗せた双発セスナ310機がこつ然と姿を消した。ボッグス院内総務はアラスカ州で遊説中で、チャーター機にはアラスカ州選出で民主党のニック・ベギッチ下院議員とベギッチ議員の秘書官、操縦士の4人が搭乗していた。

 当時の米国としては史上最大規模の捜索救助活動が行われた。40機の軍用機と50機の民間機が投入され、捜索範囲は32万5000平方マイル(約86万平方キロメートル)、捜索時間は3600時間以上に及んだ。それでも残骸ひとつ発見されることなく、消息を絶ってから39日後に捜索は打ち切られた。この事故を受けて米議会は、米国のすべての民間航空機に緊急時のための捜索発信機の設置を義務付ける法律を可決した。

 この事故をめぐっては陰謀説が浮上した。1963年にテキサス州ダラスで起きたジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件を調べるために当時のジョンソン大統領が設置したウォーレン委員会にボッグス院内総務が所属していたからだ。ウォーレン委員会は、ケネディ大統領暗殺はリー・ハーヴェイ・オズワルド容疑者による単独犯行との見方を強めていたが、ボッグス院内総務はこれに強く反対していた。陰謀説も重なり、アラスカでの事故は米国民のミステリーへの好奇心をかきたてた。

ゴールまで60メートル ランナーが消える

 2012年7月4日、米独立記念日にアラスカ湾に面したシェワードで開かれたマラソン大会では、ランナーの男性が姿を消している。アンカレッジ在住のポール・ルメートル氏は65歳で初めてこの大会に出場した。険しい山道を回る約5キロのコースで、ゴールまでわずか60メートルの地点を通過し、レースの役員にゼッケンを渡したが、そこからゴールまでの間にルメートル氏は姿を消した。

 当局は、ルメートル氏が荒野を通るコースから外れた可能性が高いと考えたが、捜索が必要なエリアはごくわずかで、州警察、山岳救助の専門家、訓練された捜索犬が参加したにもかかわらず、痕跡は発見されなかった。

 1995年の独立記念日には、退役軍人のレナード・レーン氏がフェアバンクスのパレードの後、行方不明になった。当時73歳。戦場での傷が原因で足を引きずっていたが、捜索でも手掛かりは全くつかめなかった。

公開されたCIAの資料にも「ミステリー」記される

 1988年以降、アラスカ・トライアングル内では飛行機の乗客やハイカー、地元住民、観光客ら1万6000人以上が行方不明になっている。1000人あたりの行方不明者数は、全国の行方不明者平均の2倍以上だという。米国のドキュメンタリー専門テレビ「ヒストリーチャンネル」によると、1970年以降の行方不明者は約2万人に及ぶという。この数字は、「山で迷子になる」こと以外にアラスカで何か起きているのではないかという好奇心をかきたてる。

 先住民族のトリンギット族は旅人を破滅へと誘い込む「クシュタカ」という悪魔伝説を語り継いでいる。巨大なカワウソのような生物が、犠牲者を捕らえるために人間の姿に変身していると信じられている。

 アラスカ・トライアングルにあるヘイズ山(標高4216メートル)とその周辺では、未確認飛行物体(UFO)の目撃情報が1930年以降、繰り返し寄せられている。
1986年11月には日本航空の貨物機の機長がフェアバンクス上空付近で大型の未確認飛行物体を見たと証言し、米国の大手メディアも報じUFO騒動が起きた。米連邦航空局(FAA)も一時、調査した。

 米中央情報局(CIA)が2000年8月に公表した資料では、CIAが超能力を軍事利用しようとした際に、ヘイズ山がUFOの基地であることを前提とした研究・実験を行っていたことが記されている。

 今年2月に小型機が消息を絶った事故では翌日、ノームの南東約50キロの凍った海に墜落した機体が発見され、10人全員の死亡が確認された。翌月の3月23日には、アンカレジの南東にあるツスツメナ湖に小型機が墜落し、乗っていたパイロットの男性と娘2人の計3人は凍った湖に浮いた翼の上に12時間たたずんだ末に救助された。

 自然への畏敬の念を抱きながらも、超自然的現象への想像力をかきたてるのがアラスカである。

(文=言問通)

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言問通

フリージャーナリスト。大手新聞社を経て独立。長年の米国駐在経験を活かして、米国や中南米を中心に国内外の政治、経済、社会ネタを幅広く執筆。

最終更新:2025/06/09 09:00