六代目山口組が導入した「若返りと安定」を両立する総裁制、その意義と未来

これまで山口組では、一組織1人直参制度が採用され続けてきた。だがヤクザ業界を取り巻く目まぐるしい環境に適応するかのように、それが今、大きく変貌しようとしている。すでに五代目吉川組や二代目一道会では代替わりと共に、組長・会長と並んで総裁という重職が誕生し、一組織から2人の六代目山口組の直参が誕生している。
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そして今度は、六代目山口組において由緒正しき組織の三代目司興業でも、代替わりを行うとともに総裁制が導入したという。
司興業は、六代目山口組・司忍組長が創設した組織であり、同じく司組長が発足させた弘道会から内部昇格して直参となった。これまで司興業の三代目を務めた森健司組長は、司組長から厚い信頼を受け、幅広い人脈を持つことで知られていた。そして新たに四代目組長を襲名したのが、三代目体制で若頭を務めていた川﨑誠治組長。同時に森組長は総裁に就任したことで、司興業からも二人の六代目山口組直参が輩出されたのだ。
しかし、業界に詳しい業界関係者はこのように語る。
「今後も11月までに、他の二次団体でも同様の動きがあるという。つまり、他組織でも代替わりが行われ、これまでのように組長が禅譲して引退するのではなく、総裁として高所から組織を見守り続け、そのまま六代目山口組の直参親分衆として組織発展に尽力するということである。それは六代目山口組の竹内若頭(三代目弘道会・竹内照明会長)の体制によって、組織の維新と若返りを図るだけでなく、山口組の新たな時代の幕開けをも意味しているのだろう」
それだけではないという。長きにわたり若頭を務めた髙山清司相談役時代に、最高幹部として六代目山口組を支えてきた執行部も、大きな動きがあるのではないかという話だ。こちらも11月までに、親分衆の入れ替えが行われると囁かれている。ヤクザに詳しいジャーナリストが解説する。
「組織の若返りを計る際には、ヤクザ組織に限らず、多くの業界で一気に行うケースが多いものです。その結果として軋轢が生じるのもよく見られるケースですが、六代目山口組はそうではない。十分に時間をかけて、組織の若がりを図りながらも、維新させるだけでなく、総裁制を導入させることで、スムーズな代替わりを行っていく方針ということでしょう。それこそが髙山相談役が描いた新たな山口組の組織像ではないでしょうか。髙山相談役は分裂抗争に終止符を打った時から、次なる組織づくりまで見据えていたと思われます。普通ならば、絶対的指揮官と言われていた髙山相談役が、次の山口組組長に就くことが順当だったはず。しかし、実際には腹心である竹内若頭に若頭の地位に譲り、自らは相談役という名誉職へと就かれた。普通ならば、誰もが次は組長へと考えるものですが、髙山相談役は私利私欲などではなく、六代目山口組のため、司組長のために職務をまっとうし、次世代へとバトンを託した。それこそが髙山相談役の凄みではないでしょうか」
こうして竹内若頭にそのバトンが託されたのだ。しかし、多くの関係者が口にする「11月までに刷新を整える」とは何を意味するのだろうか。もしかすると、総裁制を導入した七代目体制への移行が視野に入っているのだろうか。前出の関係者はこう語る。
「さまざまな噂があるが、山口組の情報は『菱のカーテン』に遮られていると言われているほど、情報管理が徹底されており、外部に重要情報が流出することはない。したがって、実際にその時を迎えなければ何が起こるかはわからない。ただ言えるのは、六代目山口組から処分された神戸山口組、池田組、絆會などを全く相手にしていないということだろう。現に六代目山口組が矢継ぎ早に新体制へと進んでいく中で、そうした離脱した組織からは何の動きも聞こえてこない。分裂抗争中に、血を流して、長い懲役を賭けて、命すらも落としてきたのは若い組員たちだ。離脱組には、山口組と袂をわかった大義はもはやない。本当に組員を思うなら、解散して若い組員を自由にすることこそが、離脱した組長たちに残された唯一の使命ではないか」
今後、六代目山口組では新体制に向けどのような動きが続々と断行されるのか。業界関係者の注目が集まっている。
(文=山口組問題特別取材班)
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