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世界を巡るコスプレビデオグラファーDAIの「日本人がまだ知らない“最前線”をいく」⑤

台湾に3万人集結!日本最大級のコスプレイベントが海外進出で見せた現地の熱狂と課題

文=
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3日間、筆者をサポートしてくれた台湾のコスプレイヤー・Kaoriさん。日本のコスプレイヤーが大好きで、「acosta!@台北」の開催を心待ちにしていた。

 日本のコンテンツが海外で盛り上がりを見せている。“コスプレ”もそのひとつ。今ではコスプレの世界大会が開かれるほどで、伝統的な同人イベントから一歩進んだ、ビジネス革新のフロントランナーとして注目されているのだ。新規ファン獲得のため戦略的な市場展開を実践する日本のコスプレイヤーも現れるなど、同イベントはグローバル市場での協業や投資チャンスを生み出すプラットフォームとなっている。未来の成長分野への参入を検討する企業にとって、必見の現場だ。
 海外のアニメコンベンションで取材を重ねてきた筆者が、世界中で行われているイベントの現場をレポートする。

世界が注目、あのバンドを直撃

日本最大手が海外初挑戦!

 世界中で注目されるアニメやマンガ、ゲームなどの日本のサブカルチャー。”コスプレ”も同様で世界中で愛されるコンテンツとして人気を博しているものの、日本とは大きく違う独特なスタイルとなっている。

 そんな中、日本で最も有名なコスプレイベントが、初めて海外でのイベント開催を発表し、界隈で話題となっていた。

 2025年5月30~6月1日の3日間、台湾・台北市にある松山文創園区にて、コスプレイベント「acosta!@台北」が開催されたのだ。

 「acosta!」は、株式会社ハコスタが主催するコスプレイベントだ。2014年3月に池袋サンシャインシティで始まった「acosta!」は、わずか10年ほどで急成長を遂げ、2024年の発表では年間動員数20万人を達成した。

 関東では池袋サンシャインシティを中心に、さいたまスーパーアリーナ、ところざわサクラタウン、幕張メッセなどで定期的に行われるほか、京都駅やみずほPayPayドーム【福岡PayPayドーム】、東北から九州まで拡大中だ。日本でコスプレをする人なら、知らない人はいないし、多くの人が参加したことがあるイベントだろう。

 そんな「acosta!」だが、近年はゲストとして海外のコスプレイヤーを誘致するなど、国際化を進めていた。2024年にはシンガポールのアニメコンベンション「AFA Singapore」に出展し、「acosta!」へよく出展するコスプレイヤーやイベントへの認知拡大をはかっていた。そのため、「2025年にはさらなる展開を行うのではないか?」と筆者は予測していたが……想像より早く海外でのイベント開催が決まり驚いた。

「シンガポール最大級アニメコンベンション「AFA Singapore 2024」にコスプレイベント「acosta!」ブース初出展」(2024.12.18ハコスタニュースリリースより)https://www.hacosta.co.jp/case/press_241218
 

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「acosta!@台北」の会場である松山文創園区は、台湾で歴史あるタバコ工場の跡地を使ったカルチャーセンターで有名。ここでコスプレができることが台湾ではとても珍しいそうだ。

「acosta!」初の海外進出には期待もあり不安もあり 

「acosta!」が台湾で開催されると発表されたとき、筆者は期待と不安があったことを覚えている。

 期待としては、「acosta!」が世界的に認知されつつあったことだ。海外のコスプレイヤーに日本のコスプレイベントを尋ねると、「コミックマーケット」に次いで「acosta!」と答える人が多い。特に男装や男性コスプレイヤーは非常に興味を持っていて、また海外で人気の男装コスプレイヤーが参加していることもあり、女性ファンからも注目を集めている。

 すでに海外での知名度も高まっており、いつ開催しても人気が出るのではないかとも感じていた。実際にFacebookアカウントが開設され、台湾で開催するとアナウンスされた際、多くの喜びのコメントが寄せられた。

https://www.facebook.com/photo.php?fbid=122097569288763926&set=pb.61572917788640.-2207520000&type=3

 イベント開始直前になると、SNSでは台湾コスプレイヤーやカメラマンの参加表明が多く投稿された。

https://www.facebook.com/groups/1163325711003514

※台湾最大のFBコミュニティ。参加しないと見れませんが……。

 一方で、「日本スタイルのコスプレイベントは台湾では受け入れられないのではないか」という声も多く上がった。中でも特に懸念されたのが、入場料の問題だ。

 日本のコスプレイベントでは、コスプレイヤーもカメラマンも、参加にあたって入場料を支払うのが一般的である。しかし、海外のイベントでは入場料を払わずにコスプレを楽しむことが当たり前という認識もある。

 もちろん、海外のイベントでも会場への入場料は必要だが、台湾においては少し事情が異なる。というのも、台湾の多くのコスプレイベントは、イベント会場の外にある広場などでコスプレを楽しむのが主流となっているからだ。

 日本のコスプレイヤーに会いたい、コスプレイヤーのグッズを買いたい、コスプレのパフォーマンスを見たい……そういった方は入場料を支払って会場入りするだろうが、ただコスプレを楽しみたいという人は果たしてお金を払うのだろうか……。

 また、日本ではイベント会場内にある更衣室で着替えて参加するのが一般的だが、海外では自宅やホテルから着替えて参加することが当たり前。そもそも更衣室がないことがほとんどだ。「acosta!」はどう対応するのだろうかと気になっていたが、更衣室は設置しつつもコスプレをしたまま来場しても良いという海外基準に合わせた形となった。

 果たして「acosta!」は台湾でも通用するのだろうか……そう思いつつ、イベントが始まった。

ここまで人気になるとは……。

 結論から言うと、“参加者目線で見るなら”大成功だったのではないかと感じた。

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日本・台湾のゲストコスプレイヤーの集合撮影。撮影しようと多くのコスプレイヤーやカメラマンが集結した。

 公式発表によると、3日間の開催で3万人超のコスプレイヤーとカメラマンが来場。初めての台湾開催であること、さらにスマホゲーム「鳴潮」1周年イベントや他の即売会イベントが期間中に別会場で開催されたこともあり、これだけの集客ができたことはかなりの成功だったと言えるだろう。

「台湾初開催のコスプレイベント「acosta!」3 日間で3万人超のコスプレイヤー・カメラマンが来場」(株式会社ハコスタ 2025年6月2日 10時00分 PRタイムス配信より)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000035464.html
 
 また、台湾と日本から各50名、計100組のコスプレイヤーが出展した即売会「acosta!マルシェ」も大盛況。大行列ができるブースも多数あった。中でも注目を集めたのが、世界的に活躍するウィルさん(https://x.com/wiru_son)と伊織もえさん(https://x.com/iorimoe_five)のブースだ。

 ウィルさんのブースでは多くの女性が列を作り、ウィルさんが登場すると大きな声援が送られていた。またファンミーティングも同会場で行われたが、チケットが即完売の人気っぷりだ。

 もともと台湾で絶大な人気を誇る伊織もえさんは、開催直前になって緊急参加することが発表された。これによって来場者数が増えたのは間違いないと私は考えている。

 それに加え、先月取材した「Fancy Frontier 開拓動漫祭」で毎回人気のコスプレイヤーも人気だ。すでにファンがいるため、彼女たちのために訪れた方もいるだろう。

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「acosta!マルシェ」会場の様子。終始大行列で移動が困難なレベルだ!
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台湾でのイベントは3回目だというkipiさん。Kaoriさんはkipiさんの昔からの大ファンで、今回会えることを非常に楽しみにしていた。

 ステージも人気だ。日本で開催されているコスプレダンスエンターテインメントフェスティバル「CDEF」や「TIF ASIA TOUR 2025」とのコラボステージでは、多くの人が集まり、3日間常に盛り上がっていた。

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コスプレパフォーマンスを行う台湾の人気コスプレグループCOSIR叩舍。ステージを見ようと多くのファンが集結した。

 企業ブースでは、「SONY」が無料撮影体験を実施。日本で有名なコスプレカメラマンとして知られる井田達也さんが撮影を行うこともあり、整理券はすぐに配布終了。3日間で約150人のコスプレイヤーを撮影し人気を博した。

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「SONY」ブースの模様。撮影企画を行った井田達也さんは「1日で最大60人を撮影した」と笑顔で語った。

 会場内では「アニメイト」や「らしんばん」といったアニメショップが出展しており、こちらも多くの人が訪れた。

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「アニメイト」で販売していた缶バッジ。”攝影OK!”はコスプレイヤー用、”攝影師”はカメラマン用。

 来場者数を見ても、実際に現場で取材した筆者の観点から見ても、「acosta!@台北」は大成功だったと感じた。

次回開催はあるのか? 待たれる公式発表

 ただし、ビジネス面で大成功だったのかは分からない。いくつか不安要素があるためだ。これについては筆者が現場で聞いた声などが含まれているため、正確な情報ではないことをご了承いただきたい。

 ひとつはチケットを購入していない方がいたという点だ。チケットを買わずに会場内に入った人や、1日だけチケットを買い、それを別の日でも利用して入った人など、明らかな不正行為があったという話も耳にした。これは不確定情報なため信じすぎるのも良くないが、そういった話が聞こえてきたのはあまり良くない。

 また、もともと危惧していた点ではあったが、やはり台湾式に会場外でコスプレをする人も多く、中にはチケットを買わず、会場内に入らないまま楽しむケースも見られた。

 また、会場レンタルや設備、日本からの多くのゲストなどにかかる費用が分からないため、完全な成功だったとは言いづらい。もし成功だと断言できるとしたら、再び開催されるかどうかにかかっているだろう。

 イベントとしての盛り上がりは素晴らしく、また開催してほしいとの声も多い。是非とも次回開催し、「acosta!」が台湾で完全に定着してほしいところだ。

(文/写真=DAI)

関西屈指の美女コスプレイヤー
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DAI

岐阜県出身。NHKやNetflixなど番組カメラマンや多数アーティストのMV制作を行う映像制作会社の社長であり、世界中のエンタメイベントに赴き取材や映像撮影を行うビデオグラファー。得意分野はコスプレ。活動歴は10年以上にわたり、20カ国以上、述べ120回以上の海外イベントを取材している。
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Instagram:@daicinematography

DAI
最終更新:2025/06/16 00:01