怖い話に魅せられて40年…ホラーの“当たり年”に遭遇した恐怖体験

つい先日のことである。次に映像化されるドラマにも出演のオファーを出している友人のYouTuber「たっくーTVれいでぃお」(チャンネル登録者295万人)にLINE電話をかけて、怖い話をおねだりしていた。
「なあなあ、なんか怖い話してやー!」
『地獄に堕ちるわよ』の舞台裏
ふと思うことがある。来年2月で50歳になるのだが、40年以上も前から、私はこのフレーズを飽きることなく口にしている。
50歳目前かと思うと、私の人生も思えば遠くまで来たものだという境地に達し、感傷の秋ということもあってか、物悲しい気分にならないこともないのだが、それでも「怖い話」というワードには、今も変わらず、わくわくドキドキすることができる。
年を重ねるということは、わくわくしたりドキドキする機会が必然的に減っていくことでもある。だが、「怖い話」というのは、永遠に私をわくわくドキドキさせてくれるものなのかもしれない。
そして、事件は起きてしまったのである。
「たっくーTVれいでぃお」のチャンネル登録者数295万人は伊達ではない。いつ何時であっても、私の「なあなあ、なんか怖い話してやー!」とお願いすれば、わくわくした声色で「仕方ないですね! まだ話していないとっておきのがあるんですけど、これいきましょうか?」と応えてくれるのだ。一言で言えば、彼は瞬時に怖い雰囲気を作り出す天才なのだ。
今回「たっくーTVれいでぃお」が私にしてくれた「怖い話」は、わかりやすく言えばやばかった。えぐちである。しかも話だけでは終わらなかった。そこから「たっくーTVれいでぃお」は、私を恐怖のどん底へと突き落としてくれたのだ。
「そのときの写真があるんですよ! 今からLINEで送りますね」と言われ、「たっくーTVれいでぃお」がLINEに送ってくれた画像を観て、私は戦慄を覚えた。しっかりと鳥肌が立つほど怖かったのだ。
「ねえ? これめちゃくちゃ怖くないですか ⁈」と「たっくーTVれいでぃお」に言われ、「うん……めちゃくちゃ怖い…」と言いながら、私は1人だったことを後悔していた。
そう私はそのとき1人だったのだ。もう一度言わせてほしい。間違いなく私は、そのとき室内を無音の状態にして1人でいたのだ。
私は怖い話や怖い動画、怖いテレビ番組、怖い映画がとてつもなく好きなのだが、1人でひっそりと楽しみたいタイプではない。みんなとそれを共有したいのだ。それをもちろん「たっくーTVれいでぃお」も知っていて、いつも彼の怖い話を電話で聞くときはスピーカーにして、もう一台のiPhoneでムービーを回して収録するのである。その収録動画を、後日、仲間たちと楽しむのだ。
そして、後日談である。繰り返し書いたのだが、もう一度、思い返してほしい。
ーそう私はそのとき1人だったー
間違いなく、そのとき室内には私1人だった。いや、1人のはずだった。だがもしかすると違ったのかもしれない。
数日後、みんなで「たっくーTVれいでぃお」がしてくれた怖い話を聞いていると、1人が「あれっ? 今、なんか聞こえへんかった?」と言い出し、動画を巻き戻すことにしたのだ。するとそこにこの世のものとは思えない女性の声が入っていたのだ。何度も巻き戻してそこを聞き直すと、レベッカの「MOON」という曲に入っていた「先輩」級の声がはっきりと入っていたのである。
ここで聞かせてあげられるものならそうしたいのだが、まずは9月28日「たっくーTVれいでぃお」と京都のお化け屋敷に行くので、そのときに彼に聞かせたいと思っている。
私は「たっくーTVれいでぃお」に怖い話をしてもらったとき、確かに1人だった。1人のはずだった。だけど、もしかするとそうではなかったのかもしれない……。
さて、マインドは怖い話を受け入れる状態に整ってくれただろうか。はっきり言って、まさに今年はホラー映画の大収穫である。
「ホラー映画は予算が集まりにくいんですよね〜」と、私がホラー映画をやりたいと口にするたびに、プロデューサーのジョニーはしたり顔でこう言うのだが、なんのなんのである。6月13日(金)、そう“13日の金曜日”に公開された長澤まさみ主演・映画『ドールハウス』なんて、劇場が超満員だったし、同じく『事故物件ゾク 恐い間取り』を観に行ったときも同様だった。
人怖にも触れてよいだろうか。
私は映画『事故物件』を観るとどうしても、シーズン1に出演していた元俳優の木下ほうかを思い出してしまう。女性問題で「週刊文春」に叩かれて、一時、私が住んでいたタワマンにほうかを匿っていたこともある。未完に終わったが、そのときにほうかに頼まれて、ショートドラマを撮ったのは私で、その際すぐに文春の記者から連絡があったのだが、私が匿っている以上、ほうかを庇い通した。そのことで不仲になってしまい、それ以降、連絡をとっていない記者もいる。それでも仕方ないと思っていた。だが今ならはっきりと言える。本当に庇うんじゃなかったと。それくらい不愉快な思いをさせられた。ほうかの身勝手な理由でショート動画を削除することになった。それ以来、連絡すらとっていないのだが、どうしても映画『事故物件』を観ると、ほうかのことを思い出してしまうのである。
だが『事故物件』は間違いなく、わくわくドキドキさせてくれる作品で、『事故物件ゾク 恐い間取り』も、公開前から観に行くのを楽しみにしていた作品で、しっかりと映画館で観てきた。
ジョニーよ……どうせこのコラムは読んでいないだろうが、超満員だったぞ。そして次に映画館で観たのが、映画『近畿地方のある場所について』である。
台湾にジョニーとシナハンに行ってるときだった。
「あれっ? 沖田さん、知りませんでした? 『近畿地方のある場所について』って、『インフォーマ』のシーズン1に入ってたスタッフの子も入っていますよ〜」
私の原作作品に入ってくれていたスタッフが入っているのならば、当然、映画館まで観に行くに決まっているではないか。台湾から帰国したその足で観に行ってきた。映画を見終わったあとに、晩ごはんをそのまま食べに行き、「あれが怖かったよな〜」と近畿地方のある場所についての感想を何時間も語り合った。たかが2000円で、何時間も語り合うことができるのだぞ。だから映画は素晴らしいと思うのだ。その時間が思い出となり、懐かしく思い返す日がくるのだ。たかが2000円でだ。
それを私は知っているから、時間があれば映画館に足を運ぶのだと思う。だからこそ、自分の書いた小説が映画館で上映されることにこだわり続けているのだと思う。

それだけではない。現在、映画館で上映されている観たいホラー映画が、あと2作品ある。今年はどこまで私をわくわくドキドキさせてくれるというのだろうか。夏が終わり秋になっても、私の怖い話に対するわくわくドキドキは続いている。
末尾に、秋といえば「読書の秋」でもある。現在、徳間書店から発売中の『日本黒幕大全』(黒井文太郎)がとにかく面白いのだ。怪物と呼ばれた48人のフィクサーたちが登場するこの書籍は、黒幕のルーツから始まり、彼らが蠢いた日本の裏面史までを描いていく。今秋に読んだ本の中で群を抜いていた。どこからでも読める本となっているので、ぜひ、お勧めしたい1冊である。
(文=沖田臥竜/作家・小説家・クリエイター)
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