復帰が遅れる松本人志、『M-1』不参加…“松っちゃんがいないM-1”で起きること
お笑い界の一大イベント『M-1グランプリ2024』(テレビ朝日系)決勝が12月22日に行われる。一昨年はウエストランド、昨年は令和ロマンが大会を制したが、今年の大会は様相が一変しそうだ。審査員席から松本人志が姿を消すことになったのだ。
「松本は『週刊文春』(文藝春秋)の性加害疑惑報道を受け、今年1月から活動を休止。発行元の文藝春秋に対し、名誉を傷つけられたとして約5億5000万円の損害賠償と訂正記事を求める裁判を起こしましたが、11月に訴えを取り下げました。しかし、松本は会見を開かず、芸能活動も再開できないまますでに1カ月が経過しています。
ネットやSNSでは、疑惑がうやむやのまま復帰することを疑問視する声が多く、復帰反対の署名運動には12月15日現在4万5000人以上が署名しています。現状ではスポンサーの了解を取り付けるのは厳しいですし、松本が出演すれば話題が彼に集中し、漫才を披露する芸人たちが霞んでしまう問題もある。そういった事情から、松本の『M-1』出演は見送られたと思われます」(週刊誌記者)
エントリー数は1万組を超えたが…
優勝すればスターの座が約束される『M-1』。審査は近年、7名の審査員によって行われていたが、今年は9人体制で石田明、海原ともこ、柴田英嗣(初)、哲夫、博多大吉、塙宣之、山内健司(初)、礼二、若林正恭(初)といった顔ぶれ。松本がいなくても大会は開催されるのだ。しかしカリスマの不在は、“たかがひとり、審査員が変わるだけ”では済まない。
「M-1は今年、ついにエントリー数が1万組を超えましたが、多くの芸人にとって松本人志は絶対的な存在。松本さんに“ネタを見てもらいたい”“ネタを講評してもらいたい”というのが出場の大きなモチベーションになっています。決勝進出コンビにとって“松本さんが何点を付けたか”は、ある意味で優勝するより重要。これがないだけでも芸人のテンションは相当下がるでしょう。
残念なのは視聴者も同じです。M-1では例年“疑惑の採点”が物議を醸しますが、松本の採点は妙なサプライズがないので、これを指針にしている視聴者は多いはず。審査員の中には、自分の好みに合わないだけで低い点を付けたり、“えこひいき”のような大甘採点をする人もいるので、採点に一本筋が通った松本が審査員席にいないのは、見る側もガッカリでは」(お笑いライター)
繰り返しになるが、松本が大舞台に現れる可能性はほぼゼロだ。5日には決勝に進出する9組のコンビが決まったが、彼らは回避不能なアクシデントに晒されるかもしれない。
「実は松本は2004年と2015年にもM-1の審査員から外れています。2004年は、裏(番組)で浜田雅功がMCの『ジャンクSPORTS』(フジテレビ系)の特番があったから、2015年は大会が5年ぶりの開催で、新機軸として歴代のM-1チャンピオンが審査員を務めたからと、それぞれ理由がありましたが、今年は早くから松本の出演の可否が大きな話題になってしまい、結局不在となりましたから、今年の優勝コンビは、“松本人志は認めていないチャンピオン”と言われる可能性があります。それくらい松本の影響力は大きいのです。
また、絶対的な評価軸が消えることで、審査結果を巡ってネットが荒れることも予想されます。M-1の審査員は猛烈なプレッシャーがあるため、以前から多くの大物芸人が『しんどい』『やりたくない』と漏らしており、今年の9名はより一層プレッシャーが強まる。そのうち、審査員が集まらないという理由で大会ができなくなるかもしれません」(同上)
松本不在でジャッジされる「注目のコンビ」
それでも22日には新たなチャンピオンが誕生する。決勝戦に駒を進めたのは、昨年優勝の令和ロマン、昨年準優勝のヤーレンズ、4年連続の決勝進出となる真空ジェシカ、2018年以来2度目の決勝進出となったラストイヤーのトム・ブラウン、そして決勝初進出のママタルト、ジョックロック、エバース、ダイタク、バッテリィズの9組だ。ここに敗者復活戦を勝ち上がった1組を加えた10組で争われる。注目のコンビについて、エンタメウォッチャーの大塚ナギサ氏はこう話す。
「実力は誰もが知るところの令和ロマン、ヤーレンズ、真空ジェシカの3組はもはや盤石。キワモノ的に見られがちなトム・ブラウンも予選から爆発的にウケていますし、幅広い層にウケるネタを持っているママタルトも強い。そしてラストイヤーで初進出となるダイタクは、とにかく漫才が上手すぎて感嘆してしまうほど。世間的な知名度はまだまだのジョックロック、エバース、バッテリィズですが、いずれもネタのクオリティは文句なしですし、それぞれ個性も持ち合わせています。今年の決勝進出者たちは、いずれも確実にウケそうなコンビばかりでかなり期待できると思います。
なかでも個人的に注目しているのは、エバースです。ちょっとした事柄に対して、ほのかにズレた解釈をしながら展開されるしゃべくりが心地いい。飄々としたボケとイラついたツッコミのバランスも素敵です。ジョックロックもいわゆる“漫才コント”の構成ですが、特徴的なツッコミで笑いが増幅していくタイプで、ハマったときの爆発力はすごい。決勝戦の場を掌握することもあると思います。
そしてダイタクの決勝進出もうれしいですね。双子コンビならではの要素もありつつ、とにかくネタの運びが完璧。どの劇場に立っても確実に笑いを取る、あの名人芸をM-1決勝戦で見られるのは楽しみです。たくさん面白いネタがある中で、どのネタを披露してくれるかという点も気になります。今年はとにかく誰が優勝してもおかしくない決勝戦のメンバーになったと思います。そういう意味では審査は本当に難しくなりそうです」
ダントツの優勝ならネットが荒れることもないが、優勝賞金1000万円を手にするのは誰か。
(取材・文=木村之男)