紅白は大物歌手に期待、民放はテレ東が“一人勝ち”か…民放ベテランPが語る大晦日
近年、テレビ離れが顕著だが、俄然存在感を発揮するのが年末年始。中でも大晦日は各テレビ局が威信をかけ、とっておきの番組を用意してくるが、今年はどの局が笑い、どの局が泣くのか――業界関係者たちが、「今年の事情」を赤裸々に語る。
まずNHKは例年通り『NHK紅白歌合戦』。昨年の視聴率は歴代ワーストだったが、今年は大物歌手らの特別枠出演に期待が集まる。
「事前の予想では、今年の紅白は近年稀に見る豪華なラインナップになる期待が高かった。五輪テーマ曲のYOASOBI、『新プロジェクトX』の中島みゆき、昨年は出場ゼロだったSTARTO ENTERTAINMENTからSnow ManやSixTONES、盛大にデビューを飾ったNumber_iなど、有力候補は目白押しでした。
ただ、司会は有吉弘行、橋本環奈、伊藤沙莉の3人ですが、このうち有吉は2年連続、橋本は3年連続なので目新しさもない。現在放送中の橋本主演の朝ドラ『おむすび』も低調ですし。とはいえ、米津玄師、氷川きよし、B’zらの特別枠出演は期待が持てますが……」(エンタメ誌記者)
民放は日テレが“巻き返し”図り「ゴチ」投入
一方、民放の番組は以下の通り。TBSが12日に大晦日の特番を発表し、ようやくラインナップが出揃った。
・日本テレビ 『大晦日ゴチ特別編 5時間超スペシャル』(18:30~23:45)
・TBS 『大晦日オールスター体育祭』(17:00~23:45)
・フジテレビ 『逃走中~20周年記念特番~(仮)』(17:00~19:00) 映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(19:00~20:52) 『逃走中~大みそかSP~』(20:52~24:30)
・テレビ朝日 『ザワつく!大晦日 一茂良純ちさ子の会』(17:00~25:00)
・テレビ東京 『年忘れにっぽんの歌』(16:00~22:00) 『孤独のグルメ2024大晦日スペシャル』(22:00~23:30)
昨年からの大きな変更は、日本テレビがお笑い番組からゴチバトルに変わったこと。昨年の視聴率順は、テレビ朝日>TBS>日本テレビ>テレビ東京>フジテレビの順だったが、ゴチ参戦で民放の勢力図は変わりそうだ。
「長らく大晦日の民放は日テレの『笑ってはいけない』の一人勝ちでしたが、それが終わって混迷の時代に突入。日テレはその後3年連続でお笑い番組で勝負したものの、大きく数字を失い、今年は固く数字が取れる『ゴチバトル』で失地回復を目指すことになりました。『ゴチバトル』はレギュラー放送でも2桁をキープする優良コンテンツ。昨年の『笑って年越し』は約6%でしたが、今年はもう少し伸ばしてくるでしょう」(テレビ情報誌記者)
TBSは昨年WBC特番が当たり、視聴率は民放2位。今年は『SASUKE』『オールスター感謝祭』『最強スポーツ男子頂上決戦』など、局が誇る人気特番を惜しげもなく投入する。
「昨年は大谷特需がありましたが、今年は大谷に関しては“お腹いっぱい”といった感があり、多くは望めない。特番の目玉は五輪選手のようですが、出演者を見るとバラエティ番組に出まくっているアスリートばかりで新鮮味は薄い。数字的にはゴチを下回るのではないか」(同)
フジは昨年と同じ『逃走中』。昨年は民放最下位だったが、今年も苦しい戦いとなりそうだ。
「昨年の『逃走中』は3%台で、それが大きく変わる要素は1ミリもない。スーパーマリオの映画も中高年が見るはずはなく、とにかくコア層だけが見れば良いと割り切ったようです。数字的には今年も民放最下位でしょう」(同)
テレ朝は『ザワつく』でここ数年、民放トップをキープ。今年も安泰だ。
「『ザワつく』はレギュラー放送でもバラエティ番組のランキングトップの常連で、昨年の大晦日も唯一2桁を獲得。他局がコアを取りに行くなか、人口的に圧倒的に多い中高年を根こそぎ持って行っている印象で、今年もトップは固いでしょう」(同)
そんななか、密かな勝ち組と目されるのがテレ東だ。
「紅白が全世代を取りに行こうとして、結果的にどの世代も満足できない内容になるなか、なじみの歌手の歌をしみじみと楽しみたいシニアにとって、もはや『年忘れにっぽんの歌』は紅白以上のお楽しみになっています。昨年も6%台をマークしていて、その後の『孤独のグルメ』も4%台。コストパフォーマンスを考えればテレ東の圧勝でしょう」(同)
民放ベテランPが明かす、今年ならではの「制作事情」
今年はTBSと日本テレビが入れ替わるかが注目ポイントになりそうだ。日本テレビで42年間プロデューサーを務めた尼崎昇氏が、今年の大晦日の“制作事情”を俯瞰する。
「今年は大晦日が火曜日なのが大きなポイントです。ビデオリサーチは年間52週で計算し、今年の年間は12月29日まで。つまり大晦日の番組は年間カウントに入りません。カウントされないなら、正直それほど力を入れなくても……と考えた局があっておかしくはない。まずはそこが特殊な点です。
紅白に関して言えば、有吉はコアには強くても世帯では決して強くありません。シニアにハマるタイプではありませんし、音楽番組でアーティストに応対することにも慣れていない。毒舌でいじるのが持ち味なのに、紅白ではそれも出来ない。数字を取りに行くなら、大泉洋、櫻井翔、橋本環奈らが司会だった2022年の方が安心して見られたはずです。
民放については、日テレが昨年の反省を活かして固く取りに来た印象です。いい番組、見たい番組がいくつか集まっているほうが、全体的に視聴率は上がるもの。日テレの数字が上がれば、ザッピングすることで紅白の数字も上がる可能性はあります。ただ全体で見れば、正直弱い。結局一人勝ちするのは、新年1月に映画版の公開も控える『孤独のグルメ』になりそうですけどね」(尼崎氏)
各局ともまだサプライズを用意している可能性はあるが、何か伝説は生まれるか。
(取材・文=木村之男)