プラス・マイナス、和牛、ゼンモンキー……2024年に解散したお笑いコンビを振り返る
『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)に1万組以上がエントリーし、世は空前のお笑いブーム、いや、「お笑いを自分がやる」ブームの真っただ中にある。
その一方で、今年も数々のコンビやトリオが解散していった。積み重ねた実績も、嘱望された未来も、その時点でリセットされる「解散」を選んだ芸人たちを振り返りたい。
プラス・マイナス
異様な光景だった。昨年、漫才界の権威である「上方漫才大賞」を受賞し、『THE SECOND』(フジテレビ系)でもベスト32に残っていたプラス・マイナスの岩橋良昌が突然SNS上で「プラスマイナスも解散です どうか兼光を応援してあげて下さい」と宣言。その数日前から不安定な投稿を繰り返していたが、相方の兼光タカシには一切連絡もなく、一方的な解散宣言だった。
これを受けて兼光も自らのSNSアカウントで解散を報告。
「あまりにも急で驚かれている方も多いと思いますが、僕も寝耳に水といった感じです」
そう率直に心情を述べるしかなかった。
その後、兼光はピン芸人として活動を開始。ピンとして初めて立ったNGK(なんばグランド花月)での出番では、登場しただけで万雷の拍手を受けたという。
持ち前のモノマネ芸に加えて、解散をネタにした“解散漫談”にも磨きをかけている兼光。一方の岩橋は吉本興業を退社し、「シャドウ岩橋」として全国のイベントを駆け回り、YouTubeでの活動も活発になっているようだ。
和牛
昨年末、週刊誌にスッパ抜かれる形で解散が発表された和牛。『M-1』で5度のファイナル進出、3度の準優勝という実績を残したコンビの解散劇としては、いかにも寂しいものだった。
解散直前の3月29日に放送された冠番組『和牛のモーモーラジオ』(文化放送)の最終回には、2人のコンビ結成のきっかけとなったピン芸人・バイク川崎バイクと、15年にわたってユニット「アキナ牛シュタイン」として活動してきたアインシュタインが出演していた。
「和牛を組ませたBKBとしては、通常運転が、ありのままの最終回がいいのかなとは思っております、ほんとに」
そのBKBの言葉通り、他愛のないエピソードトークに終始する最終回。川西賢志郎は和牛について何も言及することはなく、水田信二はほとんど発言の機会さえ与えられなかった。
その後、水田は『ラヴィット!』(TBS系)などバラエティを中心に活動しており、川西はNHKの朝ドラ『おむすび』に出演するなど、お笑い以外の道も模索し始めている。
プラマイと和牛、10年後のNGKでトリを取るはずだった2組の漫才師のキャリアはそうして終わりを告げていった。
ゼンモンキー
芸歴4年にして昨年の『キングオブコント』(TBS系)ファイナリストまで駆け上がった渡辺エンタテインメントの若手トリオ・ゼンモンキーも解散の道を選んでいる。
今年の『KOC』にエントリーしていないことでファンから心配の声が上がっていたが、10月になってSNS上で各メンバーが解散を発表。わずか5年のトリオ活動となった。
その後、むらまつとヤザキは漫才コンビ「ゾンビーズ」として、荻野将太朗はトリオ「ダンゴ虫たち」として今年の『M-1』にエントリー。ゾンビーズは1回戦敗退となったが、ダンゴ虫たちは準々決勝に進出している。
1年目で「ワタナベお笑いNo.1決定戦」の決勝に進出、ファイヤーサンダーやAマッソ、四千頭身、金の国といった先輩を下して優勝し、3年後には「コント日本一」の座に手をかけた俊才トリオは、すい星のように駆け抜けて姿を消すことになった。
ハイツ友の会
女性芸人の苦悩を丸ごと背負って解散していったように見えたのが22年『M-1』で準決勝に進出したハイツ友の会だった。翌23年には『女芸人No.1決定戦 THE W』(日本テレビ系)でファイナル進出、独特な雰囲気をまとった漫才・コントの二刀流コンビとして期待を集めていたが、3月31日をもって解散を発表。
西野がSNSにつづった「私たちを応援して下さる方は女性が多くいてくださったように思います。とても嬉しかったです。女性の皆さんありがとうございました。本当に“お笑い”が好きな男性もありがとうございました」という切実な文章は、いわゆる「顔ファン論争」を呼び、多くの女性芸人からの共感を集めた。
西野はピン芸人として活動を継続。清水香奈芽は引退している。
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そのほか、尼神インター、ダニエルズ、ニブンノゴ!といった実績組や、新作のハーモニカ、10億円、都トムという有望株まで、多くのコンビが活動に終止符を打った2024年、その選択の先に、幸あらんことを祈りたい。
(文=新越谷ノリヲ)