ポスト香川照之へ…『御上先生』北村一輝の“大トメ”でTBSが見据える10年先の日曜劇場
俳優・松坂桃李主演のTBS系日曜劇場『御上先生』が冬ドラマの中にあって覇権作品となりそうな気配だ。
1月19日の初回放送は世帯平均視聴率12.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。
本作は日曜劇場で過去に話題を呼んだ『VIVANT』や『アンチヒーロー』を手掛けたヒットメーカーの飯田和孝氏がプロデューサーを務めているが、この2作を超える好スタートを切った。
松坂が演じるのは東大卒のエリート文科省官僚の御上孝。
文科省官僚になったが、とある出来事を機に新たに設けられた官僚派遣制度によって私立高校への出向を命じられる。
“官僚教師”が、令和の時代を生きる高校生を導きながら権力に立ち向かっていくというストーリーだ。
松坂や29人の生徒役を演じる若手俳優たちに加え、吉岡里帆、臼田あさ美、及川光博、常盤貴子、北村一輝、迫田孝也、櫻井海音、林泰文、岡田将生ら人気俳優たちが主要キャストに名を連ね、第1話は国家公務員採用試験会場で起きた殺人事件が描かれるという衝撃的な展開で幕を開けたが、テレビ誌ライターはこう話す。
「熱血教師がヤンキーの生徒たちを更生させるといったよくある話ではなく、舞台が東大生を多数輩出している私立の進学校という目新しさもある。松坂演じる御上も破天荒というわけでもなく、どちらかと言うと面白みがない堅物で、それでいてシャープさがあるキャラクターとなっている。サスペンスでもあり、教育ものでもあり、政治的要素まで匂わされていて、既視感のない“令和ドラマ”に仕上がっています」
また、民放テレビ局のドラマ関係者はドラマのクレジットにも驚かされたという。
「最後にクレジットされている『大トメ』が北村一輝だったんです。“ラスボス”といえば、例えば『VIVANT』であれば役所広司のような大御所が配置されがちですが、北村といえば味のある演技でバイプレーヤーとして活躍しているものの、いいところ3番手とか4番手、あるいはトメ前のイメージのある役者です。この並びには日曜劇場の視聴者の年齢層を下げようという狙いがあると感じました。『アンチヒーロー』も主演が長谷川博己で大トメは野村萬斎でしたが、60歳未満の役者をこのポジションで使うことによって、これからは“この世代で10年やっていく”という日曜劇場の決意表明だと感じましたね。現在、テレビドラマのメイン視聴者層は中高年で日曜劇場もそれは同様。これまでは高齢者ウケを意識し、池井戸潤作品を代表とする“あの頃のメンタリティが正しかった”と言い聞かせるような作品も多く放送されてきましたが、今作はストーリーや設定も含めてより若い世代の視聴者層を意識しているのかもしれません」
インターネットやSNS、YouTubeなどの普及により若者のテレビ離れが叫ばれて久しいが、テレビ業界では以前から若い視聴者層を意識した取り組みが行われている。
芸能ジャーナリストの竹下光氏は語る。
「国民の受信料を財源とするNHKはかなり前から危機感を募らせて『NHK紅白歌合戦』でアイドルやアニソン歌手、K-POPアーティストを重用したり、『大河ドラマ』の題材としてゲーム好きや“歴女”を意識した作品を選んだりしています。民放においても『コア視聴率』をより重視したり、人気ユーチューバーやインフルエンサーをキャスティングする番組も増えています。ドラマにおいても人気漫画を原作とした作品がますます増えている印象です」
日曜劇場といえば、“大人”も楽しめる骨太なドラマを数多く世に放ってきたが、異色の学園ドラマである「御上先生」による新たなチャレンジは今後も業界内外で大きな注目を集めそうである。
(取材・文=サイゾーオンライン編集部)