渡辺恒雄さん死去で「セ・リーグDH制」「松井秀喜の関係」が激変か
読売新聞グループ本社代表取締役主筆の渡辺恒雄氏が12月19日午前2時、肺炎のため都内の病院で死去した。
言うまでもなく、本業とともに強い影響力を誇ったのはプロ野球界で、読売巨人軍のオーナーとしても辣腕をふるった。
新聞副社長時代の1989年に、巨人の最高経営会議メンバーに選ばれた頃から発言力が増したとされており、その後1996年には球団オーナーに就任。毎年3月の公式戦開幕前には都内のホテルには、巨人を応援する財界人らが集う『燦燦会(さんさんかい)』が行われ、これに出席。今年は車いす姿で登壇して阿部慎之助監督、選手らが見守る中で「今年こそはひとつ頑張って優勝、日本一に向けて頑張っていただきたい」と檄を飛ばした。
一方で10月のセ・リーグ優勝祝賀会は欠席し、山口寿一球団オーナーが祝辞を代読。体調について「微熱が出てもう治ったが大事を取った」と説明していた。
球界関係者は「プロ野球界の転換期に必ず関わる人だった」と振り返る。
2004年に起こったプロ野球再編問題。12球団から複数球団を合併させて球団数を減らし、1リーグ化を推進する道筋を作ろうとしていた。だがこれに古田敦也氏ら当時のプロ野球選手会が猛反発。球界にたてついた面々を「たかが選手が!」と激怒したことはあまりに有名な話だった。しかしこれを機に、世論は選手側につくことになり結果、計画は頓挫した。同年にはドラフト1位候補のアマチュア野球選手に「栄養費」名目で裏金を渡していたことが発覚、責任を取り役職を辞していた。
前出関係者は次のように語る。
「意外かも思われるかもしれないが、渡辺氏の生前で止まっていた議論は多くある。まずはソフトバンクの王貞治球団会長らが提言するプロ野球16球団構想。今年ファームチームと対戦する新球団が静岡にくふうハヤテベンチャーズ、同じく新潟にはオイシックス新潟が誕生したが、さらに四国、沖縄などに設立する動きがある。これがどう進むのかがポイントとなっている。また渡辺氏が反対していたと言われているセ・リーグのDH(指名打者)制導入問題の議論も再燃するだろう」
さらに米メジャーリーグや巨人OB選手との関係も変わるのではないかと続ける。
「米メジャーリーグを含めて進化している野球にどう対応していくかは急務。細かいところだとヤンキースへ移籍するタイミングで巨人、そして渡辺さんと疎遠になったと言われている松井秀喜氏(現ヤンキースアドバイザー)の動向が注目されている。近年は以前ほど距離を置くことは無くなってきており阿部慎之助監督の後任候補になる可能性がかなり上がってくると考えられます」
スポーツ以外にも政財界に強く影響を与えた渡辺さんだが、球界はどのように変わっていくのだろうか。
(取材・文=CYZO sports)