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朝倉未来復帰戦に頼らざるを得ないRIZINが抱える大きな課題

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朝倉未来(写真:Getty Imagesより)

 2015年の旗揚げ以降、毎年大みそかに興行を開催している格闘技イベント『RIZIN』。24年大みそかにはさいたまスーパーアリーナで10周年記念大会『RIZIN DECADE』を開催した。

 当初は、午前10時から3部構成でイベントを開催する予定だったが、第1部のメインだった元WBC世界ライト級暫定王者のライアン・ガルシアと第4代K-1 WORLD GPスーパーライト級王者の安保瑠輝也によるボクシングエキシビションマッチが、ガルシアのケガにより消滅。

 そのため、2部構成に変更され、第1部はBreakingDown CEOの朝倉未来率いるチーム朝倉未来と平本蓮率いるBLACK ROSEによる対抗戦『雷神番外地(ライジンばんがいち)』を開催。

 第2部はRIZINベルトを賭けての3階級タイトルマッチなどを行ったナンバーシリーズ『RIZIN.49』が行われたが、試合開始前にいきなりのサプライズ発表があり、来場した観客や関係者を驚かせたという。

「朝倉と平本といえば、昨年7月開催の『超RIZIN.3』のメインで対戦。周知の通り平本が圧勝し、朝倉は事前の宣言通り引退を表明した。試合後、結局はシロだったものの、平本のドーピング疑惑が浮上。その因縁を大みそかに持ち込んだかたちとなっていたが、なんと今年5月4日、朝倉が復帰し、平本とのリベンジマッチをメインとした『THE MATCH 2』が東京ドームで開催されることを発表。当会場は一気にヒートアップし、午後1時の試合開始から、カウントダウン終了の深夜0時半まで11時間半の長丁場にもかかわらず盛り上がった」(観戦した格闘技業界関係者)

 しかし、『超RIZIN.3』の来場者数約4万8000人(主催者発表)に対し、同じ会場で開催された今回の『RIZIN DECADE』は、ステージタイプをコンパクトにしたこともあり、2万3000人にとどまった。

「昨年の大みそかの2部のカードは、いずれも格闘技マニア向け。さらに、世界最大の格闘技団体・UFCの初戦でタイトルマッチに挑戦した朝倉海も未来も出場せず。見応えのある“良い試合”は多かれど、集客という観点からすればカードが弱かったことは否定できなかった。仮に、地上波で放送していても、高視聴率は厳しかっただろう。そこが、かつてブームを巻き起こしたPRIDE、旧体制のK-1とRIZINの大きな違いだと見る関係者は多い」(同)

 そして、発表済みの『THE MATCH 2』だが、その興行名でコロナ禍の22年6月19日に東京ドームで行われた『THE MATCH』は、日本の格闘技史に残る伝説的なイベントになった。

「メインはキックボクシング・総合格闘技で無敗の那須川天心とK-1で3階級王者の武尊のビッグマッチで、残りはK-1と立ち技格闘技団体・RISEの対抗戦。約5万7000人の観客を集め、チケットは最前列300万円という、日本格闘技史上最高額に設定されたこともあって入場収益は約20億円を記録。配信のPPVの購入者数は約50万人で、その収益は約25億円と、これもケタ違い。初対決の、当時の“立ち技最強決定戦”だったから盛り上がったと見られるが、未来と平本のリマッチでそこまでの集客も収益も難しいだろう」(格闘技ライター)

 言うまでもなく朝倉未来の復帰戦が最大の売りになりそうだが、そうせざるを得なかったところにRIZINが抱える大きな課題があるという。

「コロナ禍では日本人選手中心でカードを編成していたが、コロナ収束に伴い、続々と強豪外国人選手を呼んだところ、日本人選手が淘汰されてしまった。本来、時間をかけて集客力のある日本人のスター選手を育成すべきだったが、それを怠ってしまっていたしわ寄せが今になって来ている。『RIZIN.49』で派手なTKOデビューを飾った、レジェンド格闘家・桜庭和志の息子の桜庭大世は数少ないスター候補だけに、大切に育ててほしいもの。逆に言えば、まだ名前が売れていない選手たちにも、RIZINでスターに成り上がれるチャンスがある」(同)

 RIZINの未来の繁栄のためにも、地味で時間がかかるとはいえスター発掘・育成に本腰を入れてほしいものだ。

(取材・文=CYZO sports)

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最終更新:2025/01/17 22:00