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KIBA x tatsuo 対談 インディーズから見るメジャーとメジャーから見るインディーズ

tatsuo(L), KIBA(R)  写真=石川真魚
tatsuo(L), KIBA(R) 写真=石川真魚

 前回の対談から後編をお届け!

――現在のtatsuoさんは、ゴールデンボンバーへ楽曲を提供しているのですか?

tatsuo:ゴールデンボンバーは編曲と、オケを作っていますね。

――ゴールデンボンバーとの出会いを教えていただけますか?

tatsuo:最初は池袋サイバーです。

――池袋サイバーとなるとインディーズというか、アマチュアの方でも出演が比較的可能なライブハウスでしたね。

tatsuo:サイバーに、事務所のアーティストの関係で行ってたんですよ。撤収するまでちょっと時間があったんで、次のバンドも観ていくかって残っていたら、楽屋になんかすごい悟空みたいな頭の奴がいたんです。それがゴールデンボンバーでした。ライブを観たらすごい良くて。演奏はしてなかったんですけど。

――演奏は当時からしてなかったんですね。

tatsuo:はい。今と変わらないですね。面白いと感じたし、楽曲も良かったんです。それで事務所の次の会議で、シャレでいいから事務所で面倒を見てみませんかって話をしたら、翌々週くらいに事務所入ってきたんです。それからの付き合いですね。

――その当時からお客さんはいっぱいいたのですか?

tatsuo:いや、全然。三十人くらいですかね。しかもイベント全部でそのくらいの人数だったと思います。

KIBA:そのちょっと後くらいに、ぼくも何度か一緒になった気がするんですよね。

――Gargoyleでですか?

KIBA:Gargoyleじゃなかったかもしれないんですけど……。ステージはライブハウスでもエンターテイメント性がすごく高くて、おもしろかったですよ。

tatsuo:うちのイベントで連れて回ってたことがあるんで、それとかですかね。

KIBA:かもしれないです。

tatsuo(L), KIBA(R)
tatsuo(L), KIBA(R)

――今やもう、ゴールデンボンバーは紅白にも出演したトップアーティストになってしまいました。

tatsuo:どんどん売れていって、武道館初めての時は会場の真ん中の席で当時の社長と「ここまで来ましたね」って、しんみり話をした覚えがあります。でもやっぱり彼らを見ていると、売れると売れるで大変なんですよね。

――例えばどんな大変な面があるのですか?

tatsuo:常にトップにいなきゃいけないんですよ。(アーティストとして)活動的でいなきゃいけないし。かといってちょっと渋谷とかで飲むと、隠し撮りをされたりするじゃないですか。

――あそこまで露出していると顔バレしますよね。

tatsuo:やっぱりしますね。全盛期の時なんてすぐにバレるし、生きづらくなるなって見てて思いました。売れると何かが引き換えに犠牲になるんです。

 あと、メンタルの強さがないとダメですね。叩かれることも多いだろうし、揚げ足も取られます。難しいですよね。

KIBA:それでも、そうなりたくて、ものすごくたくさんの人が音楽をやっている面があるじゃないですか。そこで得られたことは、きっとすごいものだろうと思います。そうなりたくないと思っている人なんて、実際はいないんじゃないかな。

 YouTubeだろうが、ライブ活動だろうが、何だろうと自分たちの活動をたくさんの人に認めてほしいっていうのが、根本にあるはずなんですよ。まあ音楽だけじゃなくて芸術すべてに言えるのかもしれませんが。そこに辿り着けたのがすごいし、tatsuoくんはそれに携わるって経験が出来て、素晴らしいことだよね。

――KIBAさんもすぐに顔バレしそうですよね。

KIBA:あっ、そう? でも、絶対数が少ないから(笑) 気軽に生きてますよ、ぼくは。

――tatsuoさんから見てKIBAさんのボーカルスタイルとか歌い方とか、メジャーのスタイルからするとだいぶ異なると思うのですが、印象ってお持ちだったりしますか。

tatsuo:ぼく、X(※X Japan)とかからバンドを好きになったんですけど、そこから色々なバンドを辿っていくじゃないですか。で、ロッキンf(※かつて流通していたメタルやヴィジュアル系を中心とした音楽誌。現在は『WeROCK』と改名)とか見てると「あっGargoyleがいるな」とか見てて。忘れもしないのが中学校の時に『天論』(※Gargoyleの4thアルバム)を買ったんですよ。もう一曲目からびっくりしちゃって! なんだこれ!って。

――1曲目の『審判の瞳』はボーカルスタートですよね。名曲です。

tatsuo:衝撃でしたね。でもやっぱりあの当時はボーカルにカラーがないと売れない時代だったと思うんですよ。癖が強いじゃないですか、みなさん。本当に衝撃的でしたね。

 KIBAさんのボーカルスタイルは唯一無二なんで、ほんと素晴らしいと思いますよ。ライブもよく歌えるなって思いますよ。全曲制覇とかやってたじゃないですか。あれ普通の人やれないですよ。

――全曲制覇は、喉が潰れたりしなかったんですか。

KIBA
KIBA

KIBA:そんなでもなかったです。歌いすぎて歌えないとか、あんまりないですね。なんででしょうかね。特に何もしてないけど。

tatsuo:KIBAさんが歌えないとか言うイメージないですよ。でもすごいですよね、ほんと何もしないですもんね。

KIBA:ボイトレは昔ちょっと行ったことあって、すごい良い先生だなとは思ったけど、僕の歌でなんでやってるのかなと思い辞めました(笑)

tatsuo:安定してますよね。ボーカリストって波が日によってあるじゃないですか。でもGargoyleは演奏もそうですけど、常に安定しているイメージ。「今日ダメだったね」みたいなライブないんじゃないかって。

――KIBAさんは普段から喉のケアをされていないと聞いていたんですけど、逆にtatsuoさんは日々気を付けてることはありますか。

tatsuo:いや、ないですね(笑)

――今でも毎日ギターを弾くとかもない?

tatsuo:それがもう、時間に追われているんで弾かないですね。ギター録りって、仮ギターを録ってレコーディングするっていうよりも、(演奏内容を)忘れちゃうんで、全部一回ギターも打ち込んでるんですよ。もう指先は、すげー柔らかいです。やわやわです。

――ギターを打ち込んで、その後は実際に弾き直すんですか?

tatsuo:それはそうですね。清書って感じで最初からやるんで。

KIBA:tatsuoくんは音楽の最前線で戦ってるじゃないですか。ゴールデンボンバーも。ぼくらみたいなのとはまた違うところで。いろんな今流行りの音楽とかにアンテナを張るんですか?

tatsuo:そうですね。聴くし、息子と娘とかが朝なんか聴いてるんで「それ、何の曲?」とか質問したりします。

KIBA:アンテナの貼り具合が違うんだろうな、ぼくらとはね。すごいよ。

tatsuo:それこそ、バンドはあまり聴かないですね。K-POPとか聴いちゃいます。バンドって良くも悪くもさほど昔と変わらない面がありますから。

 でもバンドマンの頃は売れてる音楽というのに一線引いてたんですよ。けど東京ドームとかまで行ける人たちって、心打たれる何かがあるから行けるんだろうなと思って。それを聴いたりして影響受けないともったいないなと思うようになったんですよね。

――楽曲を作ったりする際に売れている曲を参考にすることってあるんですか?

tatsuo
tatsuo

tatsuo:参考というか、発注の際はこういうイメージの楽曲なんで、こんな風にしてくださいって指示があるんですよ。なので、そういうのに寄せて作りますね。基本がこういう音楽で、こういうテンポで……みたいなのが多いです。

KIBA:話は変わりますが、日々どうやって毎日を過ごされてるんですか?

tatsuo:いや、薄いっすよ(笑)

KIBA:そういうところに興味があるけど。

tatsuo:まず、5時に起きるんですよ。うちの息子が中学で野球やってて。6時集合とかなんですよ。だからそのくらいにもう起きて、それから朝飯食って、6~7時くらいから一階のスタジオにこもって仕事です。夜の6~7時には切り上げて、10時くらいに寝ちゃうんです。

KIBA:ご飯でも食べて?

tatsuo:毎日飲んじゃいますけどね。

――ご自宅で飲まれるのですか。

tatsuo:そうですね。あとは近所に飲みに行ったりもありますけど、毎日酒だけ。そういう生活だから太っちゃいます。

KIBA:でも時間帯はすごい健康よ。

tatsuo:そうですね。時間帯は健康なりましたね。

――tatsuoさんのようなお仕事の場合ですと、休みとか、明確な休日みたいなものはないのですか?

tatsuo:ないですね。リアルに休めないです。

KIBA:ずっと発注が来るの?

tatsuo:発注も来ますし、(スケジュールを)巻いとかないといけないんで。ちょっと空きそうなときがあっても、巻いて作業しといた方が「過去の自分よくやった!」ってなる日が来るんで。あと、パソコンが普及しているお陰で締め切りがめっちゃ早いんです。

――どのくらいなのですか?

tatsuo:もう、今日の明日とかありますよ。

KIBA:えっ! 曲を?

tatsuo:はい。本当に今、すごいですよ。テレビも挿入歌とかでも放送の二週間くらい前に書いたやつが、もう流れてるみたいな。

――話は変わりますが、tatsuoさんは歌詞も書くんですか。

tatsuo:詞はほぼ書かないですね。ぼく、歌詞のセンスはないと思います。

KIBA
KIBA

KIBA:それは逆に音楽が得意すぎるからかもしれないよね。別にこんだけ得意だったら、それやっとけばいいし、それぞれ、やりたいことをやるべき世界やし。

tatsuo:KIBAさんは歌詞を作るのに時間かからないんですか?

KIBA:あーその時によるかな。十分くらいで書ける時もあるし、二か月くらい何も書けない時もあります。たぶん良くないのは、締め切りがないことですかね。

 前はメンバーがみんないたんで、この時期にレコーディングしましょう、じゃあ、この日までに歌詞を…みたいなのがあったから、とりあえず書くんです。それで、その日までで一番いいものだったらいいか、ってなります。

――締め切りはあった方がいいんですか?

tatsuo:多分ミュージシャンって締め切りがないとずっとダラダラしてますよ。

KIBA:本当にそう! 本当にその通り!

tatsuo:まだ時間あるからいいか。みたいな。

――作曲する際に歌詞があった方がやりやすいんですか? それともない方がいいんですか?

tatsuo:どっちでも大丈夫ですね。まぁ曲先の方がパターンとしては多いです。

――tatsuoさんはもう一回バンドをやろうとか、そういう気持ちはないんですか。

tatsuo:今はなんか気持ちが追い付かないというか。仕事で手いっぱいでそういう気になる暇もないっていう感じですね。ライブを観に行っても「こんな曲があるんだ、これを取り入れよう」っていう考えになるんですよ。ステージに立つとなると、仕込みも必要だし、ちょっと時間が…っていうのもありますね。

KIBA:それも1つの関わり方だよね。そういう関わり方がtatsuoくんに合ってるんだろうし、才能を伸ばせたり発揮もできてるし。ステージでもすごく才能を発揮してたけど、今のtatsuoくんには今の形が合ってるってことなんだろうし、無理にやるもんじゃないから。むしろ今の関わり方でそんなに成功している人は少ないんだし。

 もしかしたら今バンドやってる人たちの中にも、バンドから出てこっちの方が向いてる、やってみたいって人がいるのかもしれない。そういう人の指針になるんじゃないですか。ステージで弾くよりも、tatsuoくんみたいなのやってみたいって人が今は多いかもしれないよ。

――tatsuoさんは、ご自身でやってみて合ってるなとは思いますか?

tatsuo:なんか自分がやってたバンドよりも関わってる若手にどんどん追い抜かれて行って…なんだろうこの気持ち…っていうのは、ありましたよ。ありましたけど、難しいんですよね。ミュージシャンの中にもタレント性って必要じゃないですか。そこもないとダメで。でもいや、俺はタレントっぽさはねえな、どっちかっつったら裏方向きだな、とは思っちゃいますね。誰かを立てるタイプなんですよ。だからあんま立とうとも思わないんだろうし。

――tatsuoさんって今後、目標とかあったりしますか。

tatsuo
tatsuo

tatsuo:目標というか、願望はありますよ。いっぱい稼いで海外に移住する。南国に移住する(笑)

――ストレートな質問になりますが、音楽プロデュース業って収益の面では良いのですか?

tatsuo:いや、びっくりしますよ、ない。

――低いってことですか?

tatsuo:低いっていうか、皆さん思ってる稼ぎじゃない。

KIBA:ぼくはそろそろ九州くらい買えるんじゃないかって思ってたけど(笑)

tatsuo:そう思うでしょ、みんな言います。

――ゴールデンボンバーに関わっている方ですからね。

tatsuo:みんなに言われるんですよ。一億円くらい持ってるでしょって。でも本当にない!

――案件の単価自体に変化はあるのですか。

tatsuo:ずっと横ばいです。でも、物価が上がってきてるし、機材も倍に上がってます。CDが売れないんで、印税も配信になってから激減してます。

――そういうものなんですね。今後もプロデュース業を続けていかれるのですか。

tatsuo:そうですね、続けられるだけ、続けて。でもこの仕事がなくなったら何しようかな、とは考えちゃいますね。

――KIBAさんにはどうですか。

KIBA:自分が楽しいなと思えることをやっていく。

――KIBAさん毎回ぶれませんね(笑)

KIBA:それしかない。楽しくないことは嫌。
(文・構成=編集部、写真=石川真魚)

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最終更新:2025/01/30 16:00