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ドジャース入り決定の佐々木朗希、“ワガママ移籍”の代償 「日米で総スカン」への一本道

ドジャース入り決定の佐々木朗希、ワガママ移籍の代償 「日米で総スカン」への一本道の画像1
佐々木朗希(写真:Getty Imagesより)

「令和の怪物」こと佐々木朗希(23)の移籍先が決まった。高校時代から160km超の速球で注目を集め、2022年には28年ぶりとなる完全試合を達成。まさにこれからという時期でのメジャー移籍だが、祝福ムードとは程遠い。

「佐々木が入団当初からメジャー志望だったのは周知の事実。メジャー移籍は既定路線でしたが、ロッテは完全に踏み台された形です。1年目は登板ゼロなのに1軍に帯同。2年目はようやくデビューするも、登板は基本的に中10日。3年目は完全試合を達成するなど、才能が開花しましたが、1年を通じて働くことはできず、4年目もシーズン途中で離脱(CSで復帰)。キャリアを通じて1度も規定投球回に到達しませんでした。

 それでもロッテは本人の意向を尊重して佐々木を送り出しましたが、メジャーには25歳未満の選手の契約金に上限があり、佐々木の契約金は約10億円で、ロッテに入るのは約2.5億円。あと2年待てば大谷翔平や山本由伸のような数百億円契約も夢ではなく、逸失利益は半端な額ではありません」(週刊誌スポーツ担当記者)

 佐々木は移籍について「正しい決断だったと思えるように頑張ります」とInstagramで綴ったが、活躍できるかどうかは未知数だ。

「ドジャースには大谷や山本がおり、環境はベストですが、佐々木には偉大な先輩に並ぶ実績はありません。ポテンシャルの高さは折り紙付きですが、現時点ではたかだか“通算29勝の投手”でしかなく、1年を通じてローテーションを守った経験もない。試合数が多いメジャーでは、勝ち星を上げること以上にローテーションを守ること、イニング数をこなすことが最も大事な評価基準です。

 日本の先発ローテーションは中6日ですが、アメリカは中5日。佐々木はこれまで最多でも1年で129回3分の1(2022年)しか投げていませんが、メジャーで先発ローテーションに入れば、年200回がノルマです。日本の緩い待遇でもしょっちゅう離脱してきた線の細い彼が、メジャーの過酷な日程や移動に耐えられるかどうか。プレー以外の点で心が折れなければ良いですが……」(フリーの野球ライター)

佐々木のドジャース入り、迎え入れる「現地の目」は

 大谷や山本、さらにダルビッシュ有、菊池雄星、今永昇太、千賀滉大らの活躍により、日本人投手の評価は上がるばかり。佐々木のドジャース入りは現地でも大きな話題になっているが、決して温かい目が注がれているわけではない。

「佐々木の移籍先は当初からドジャースだと噂されていましたが、代理人が思わせぶりなコメントを発したため、20以上のチームが獲得に動くことになりました。若手選手との契約には上限があるため、各チームとも“佐々木待ち”の状態。ところが、フタを開けてみればドジャースに入る出来レースで、多くの球団は“踊らされた”と怒り心頭です。

 また、ドジャースのなりふり構わぬ補強も批判を集めています。昨年は大谷に1000億円超、山本に約465億円を投じたばかりなのに、今年も佐々木以外にも着々と補強を進めている。世界一になったチームがさらに補強を続けることで、現地では“ドジャース憎し”の機運が高まっています。メジャーは戦力均衡のため、年俸総額が基準を超すと課徴金が掛かるルールを設けていますが、大谷との巨額の契約金を“後払い”にして課徴金を逃れたため、大いに批判を浴びました。今やドジャースは完全にヒールです」(同上)

 翻って日本を見ても、佐々木が置かれた状況は厳しい。

「評論家陣からは表立った批判こそないものの、内心では思うことがあるようで、『モヤモヤする』『釈然としない』といったコメントが多く上がっています。これまでのメジャー移籍は、日本でしっかりと結果を残した選手のみに許された権利でしたが、佐々木の成績を見ると、日本は完全に腰掛け。日本球界のOBが面白く思うわけがありません。

 それは現役選手も同じです。まず、ロッテの待遇が異常でしたし、わずか5年でポスティングが認められることも本来あり得ない。プロ野球の世界は、『ドラフト何位だろうと、入ってしまえば横一線』だったはずなのに、彼だけは永遠に特別扱いが許され、選手たちは白けています。

 そして決定的なのは、佐々木が2023年オフに選手会を抜けたことです。メジャー志向の選手は選手会にいるメリットがないという理由だったようですが、FAやポスティングといった制度は、先人たちが苦労して獲得した権利。まるでリスペクトがないことに、現場の人間は腹を立てているのです」(前出・週刊誌スポーツ担当記者)

 そして、日本のファンの心情としても、佐々木は“悪役”にしかなり得ない。

「もし佐々木が今季バリバリに活躍すれば、誰もが『日本では本気出してなかったの?』『何で去年、できなかったの?』と思うはず。特に、佐々木を温かく見守り続け、快く送り出したロッテファンはたまったものではないでしょう。一方、佐々木が日本時代と同様に出たり休んだりを繰り返したり、あるいは長期離脱するようであれば、『ほら見たことか』と言われるのも目に見えている。どちらにしても叩かれる運命です。佐々木の移籍を喜んでいるのはパ・リーグのバッターか、大谷と山本のついでに佐々木の取材もできるマスコミぐらいでしょう」(同上)

 アメリカでも完全試合をやるようなことがあれば雑音は消えるだろうが、二刀流の大谷とタイトルを争う夢のようなシーズンとなるか。

(取材・文=石井洋男)

石井洋男

1974年生まれ、東京都出身。10年近いサラリーマン生活を経て、ライターに転身。野球、サッカー、ラグビー、相撲、陸上、水泳、ボクシング、自転車ロードレース、競馬・競輪・ボートレースなど、幅広くスポーツを愛する。趣味は登山、将棋、麻雀。

石井洋男
最終更新:2025/01/23 22:00