ボクシング日本人王者同士の“世紀の一戦”井上尚弥vs中谷潤人、実現への道のりは?

ボクシングのダブル世界戦が24日、東京・有明アリーナで行われ、WBCバンタム級(53.52キロ以下)王者の中谷潤人は同級6位のダビド・クエジャルを3回KOで破り、3度目の防衛に成功。戦績を30戦全勝(23KO)とした。
試合後には、IBF同級王者の西田凌佑がリングに登場。中谷が「西田選手とやりましょう」と統一戦を要求すると、西田も「中谷選手とずっとやりたいと思っていた」と応じ、WBCとIBF、2つのベルトを賭けての対戦が実現しそうだ。
群雄割拠のバンタム級
「実力的に中谷の有利は動かしがたいところだが、知名度で劣る西田サイドにとっても中谷との対戦は飛躍のチャンス。格上のエマヌエル・ロドリゲスに完勝したその実力も、決して侮れるものではない。現在、バンタム級の主要4団体の王者はすべて日本人。階級を上げようにも、1階級上のスーパーバンタム級(55.34キロ以下)は井上尚弥が4団体統一王者。日本人王者対決が避けられない状況の中で、中谷との統一戦は望むところでしょう。西田がベルトを保持するIBFはランキング1位の選手との間に課される指名試合を厳密に開催させることで知られ、西田と1位ホセ・サラス・レイエスとの間で5月25日開催で交渉が進んでいるとも伝えられていますが、IBF側が指名試合より中谷との統一戦を優先する意向を認めれば、一気に中谷vs西田が決定する可能性もありそうです」(スポーツ紙デスク)
この日、もう1試合の世界戦は、WBA同級王者の堤聖也と同級4位の比嘉大吾が対戦。ジャッジ3人とも引き分けの判定で、堤が初防衛に成功した。
さらに、キックボクシングと総合格闘技無敗でボクシングに転向したWBOアジアパシフィック・同級王者の那須川天心は、前WBO世界王者ジェーソン・モロニーに判定勝ち。
試合後、那須川は元K-1王者でモロニーから同タイトルを奪った武居由樹と今後の対戦を約束した。
武居vs那須川の世界戦が実現すればビッグマッチになるが、やはり、ボクシングファンが期待するのは、中谷と井上の“世紀の一戦”だろう。
「173センチの中谷はバンタム級では高身長で、今後、階級アップを狙っている。仮に西田に勝利して2本のベルトを手にしたら、おそらく、それを返上して井上戦実現に照準を絞ると見られる。これまで圧倒的な強さを誇示していた井上だが、一方の中谷もアメリカ『RING』誌の選出するP4P(全階級で体重差のハンデがない場合、誰が最強であるかを指す指標)のトップ10に名を連ねる正真正銘の強豪。井上にとっても過去最強の相手となることは間違いない」(ボクシング業界関係者)
夢の対決、ファイトマネーは?
史上2人目の2階級4団体統一王者となった井上だが、今後、1階級上のフェザー級(57.15キロ以下)への転向も視野に入れている。
そんな状況もあり、一刻も早く、ボクシング界の“世紀の一戦”を実現させたいところだが、その道のりは決して容易ではないという。
「昨年、現在のボクシングの中心地ともいえるサウジアラビアの『リヤド・シーズン』と30億円で契約した井上は、今や世界中の軽量級ボクサーにとって『カネの成る木』。こぞって対戦要求が寄せられており、マッチメイクも一筋縄ではいかない。一度は、5月に米ラスベガスでメキシコの人気若手選手アラン・ピカソ、秋に日本でカザフスタンの元WBA同級王者ムロジョン・アフマダリエフ、年末にフェザー級に上げてサウジでWBA王者のニック・ボールと対戦し、その後、ふたたびスーパーバンタムに戻して中谷との対戦に進むというロードマップが明らかにされたが、ここにきてその皮切りであるピカソ戦の実現にも暗雲が立ち込めており、今後は不透明な状況。いずれにしろ万が一、井上がどこかで敗れるようなことがあったら中谷戦は白紙になってしまいます。一方の中谷も、スーパーバンタムで井上と対戦するにあたっては1~2試合、同級でのテストマッチを挟んで『体作り』をしたい意向を明かしている。実現にはさまざまなハードルがあるものの、井上の所属する大橋ジムの大橋秀行会長は2月2日にインスタグラムに中谷の所属するM.Tジムの村野健会長との2ショット写真をアップ。《新年会 湯河原にて MTジム 村野会長と! 来たるべき日に備えて》とつづっており、『井上vs中谷』実現への気運が高いことは間違いありません」(専門誌記者)
世紀の一戦といえば、22年6月19日に東京ドームで開催された格闘技イベント「THE MATCH 2022」で開催された那須川と元K-1王者・武尊の1戦が記憶に新しいところ。
しかし、現在1試合で10億円以上を稼ぐといわれる井上と中谷との対戦が実現すれば、那須川vs武尊をはるかに上回る規模の興行になることは間違いない。
2人合わせてファイトマネーが30億円を超える可能性もあるといわれる、真の“世紀の一戦”。まさに日本ボクシング界はいま、黄金時代を迎えている。
(取材・文=CYZO sports)