「売り上げはチャンネル登録者数には比例しない」…VTuber・懲役太郎が語るYouTubeで利益を得る方法と収益化停止の恐怖

2018年よりVTuberとして活動を開始し、「バーチャル刑務所への服役中に、篤志面接委員(矯正施設に収容されている受刑者に対して面接や教育を行い、社会復帰を手助けする民間ボランティア)の許可を得て、職業訓練の一環としてYouTube活動を始める」という設定で動画投稿を続けている懲役太郎。
先日、登録者数49.5万人を誇る『懲役太郎チャンネル』が収益停止となり、活動拠点をサブチャンネルに移した。1月からは『シン・懲役太郎チャンネル』として再起を図っている。
ただ、YouTubeそのものの再生回数が伸びにくくなっており、広告収益も削減されたことで、YouTuberとして生計を立てることが、以前よりも難しくなってしまったという。そこで、最近のYouTube事情や、彼の活動内容について話を聞いてみた。
非公開動画もアルゴリズムがチェックしている!?
――『懲役太郎チャンネル』の収益化は、なぜ停止されたのでしょうか?
懲役太郎(以下、懲役) 昨年、マンガの連載を持っていたんだけど、その資料を作画担当や編集者に情報共有する目的で、懲役太郎チャンネルに非公開で暴力団の盃動画をアップしたんだよね。すると、YouTubeから公開していないのに指導が入り、その後、収益停止の通知が届いたんだ。
――チャンネルがBANされたわけではないので、動画はすべて残っています。しかし、いくら動画が再生されてもお金にはつながらないということですね。
懲役 「えっ? いきなり、どういうこと?」とびっくりしちゃって。収益停止の直接の原因には触れられていなかったけど、おそらく反社会勢力のコンテンツだと判断されたんだと思う。何度も異議申し立てをしたんだけど、全然収益化を戻すことができなくてね。ただ、最近、YouTubeのコンプライアンスがどんどん厳しくなっているのを見ていたから、いつかはアカウントが停止されるかもしれないと覚悟はしていたよ。
――収益が停止したとき、パニックにはなりませんでしたか?
懲役 そうはならなかったね。メインチャンネルの収益はマンガ家の俺太郎というビジネスパートナーのものだったから、収入が途絶えてもオレ自身には影響はなかった。でも、俺太郎の収入がなくなるので、サブチャンネルのほうをメインに切り替える形で、俺太郎に枠を渡したという感じかな。
YouTubeだけではなく活躍の場をリアルに

――配信業以外にも、いろいろなビジネスに着手されていますよね。
懲役 「任侠カフェ」というコンセプトカフェを運営したり、「任侠ホテル」といってラブホテルの一部屋をプロデュースさせてもらった。これらはオレ発信ではなく、「こういうのをやりませんか?」と誘われたんだ。何事もやってみないとわからないしね。
――結果的にはそれで大成功しました。
懲役 何事も経験だと思って新しいことには必ず一度挑戦するようにしている。今やっているYouTubeもきっかけはそう。「しゃべりが上手いからやりませんか?」と誘われて、「試しにやってみるか」というところから始まったからね。
――最近は本を出したり、マンガの原作なども手がけていました。
懲役 『裏社会から人生を守る教科書』(さんが出版)という本を2024年に出した。この本は悪事に手を染める若者が少しでも減るようにという思いを込めて作ったんだよね。書籍ではテーマごとにQRコードを掲載していて、そこから『懲役太郎チャンネル』の動画に飛べるようになっている。かなり斬新な作りで、これを読めば闇バイトなどに引っかからないように、教養が身に付くようになっている。
――「FRIDAYデジタル」では『極道楽園』(講談社)というマンガを連載していました。
懲役 単行本も4巻出たんだけど、打ち切りになってしまって、かなり悔しかった。どんなに思いを込めて作品を作っても、数字がついてこないと、発表すらさせてもらえない……。これは本当に勉強になったね。
――ネット活動以外での主な収益はありますか?
懲役 たまに講演会の仕事が来る。大学で特別講師を頼まれるんだ。こんな中卒の元ヤクザ者が、人様に何かを教える立場になるなんて思ってもみなかったよ。ちょっと前までは、「元ヤクザに仕事なんて振れません」という流れだったけど、最近は少しずつ受け入れられてきた感じはある。
――ほかにも、VTuberとしてではなく、生の姿で登場するトークイベントも開催されています。
懲役 顔出しも絶対にしないと決めているわけじゃなくて、出すところでは出している。トークイベントを始めたばかりの頃は、楽屋からマイクで参加するみたいなやり方だったけど、今は普通にサングラスとマスクをつけたまま壇上に上がるようになった。でも、マスクしたままだと水も飲めないし、結構しんどいよ。
――メンバーシップ限定イベントでは、素顔も公開しているそうですね。
懲役 イベントで実際にオレと会った人は、「YouTubeと声が一緒! 結構、男前なんですね!」と驚くことが多い(笑)。
「好きなことで、生きていく」のも大変!

――サブチャンネルの『懲役太郎サブチャン』では、毎日さまざまなニュースを紹介されています。知識量が豊富で、いつも感服しています。
懲役 新聞は全国紙を全部取っているので、毎朝目を通しているし、週刊誌もほぼ全誌、毎週読んでいる。テレビのニュースも録画して、早送りで全部チェックしているよ。そうすると、だんだん知識が頭の中で体系化されてきて、「この事件はあの事件と同じ流れだ。つながってる可能性があるな」ということを、なんとなくわかってくるんだ。
――ほぼ、ニュースサイトみたいになっていますよね。今、世の中で何が起きているのかが、わかりやすくまとめられていて、とても見やすいです。
懲役 スマホ1台あればすぐに発信できるからね。緊急のニュースがあると、すぐに動画を撮って少し編集して、急いで投稿する。だから、オレの1日の流れとしては、打ち合わせも含めると、ほぼ1日中しゃべり続けているよね。毎日10本くらい動画を撮っている。
――相当な数ですね。本当は扱いたいけど、載せないネタとかもあるんですか?
懲役 結構あるね。世界情勢などは掘り下げたほうがいいのではないかと思うこともあるけど、そういう動画はなかなか伸びない。懲役太郎の視聴者には、やっぱり反社・犯罪ネタの方が伸びるから、視聴者の関心を見ながらネタを調整している。だけど、いじめ問題や闇バイトのように、放っておいたらとんでもないことになるというネタについては、視聴回数が伸びなくてもガンガン言及するようにしているんだ。
――ここまでのお話を聞いていると、あまり困ってないように見えますね。
懲役 まったく困ってないね。今、YouTubeの広告費が下がっているとはよく言われているけど、実はまったくそんなことはない。稼げない人は、やり方ができてないだけ。今回のオレの収益停止も、かなりインパクト強かったけど、結果的にはプラスに働いた部分もあった。
――『シン・懲役太郎チャンネル』も軌道に乗っているのでしょうか?
懲役 そうだね。メインチャンネルに載せていた動画を一つひとつ再配信しているんだけど、再生回数が回る動画も結構あるから、売り上げは元に戻ってきた感じがあるね。実は売り上げはチャンネル登録者数には比例しないんだ。再生回数が回ればいいわけだから、収益停止されてから、今まで以上に利益が増えてきた感じもある。
――外から見ているだけだと、本質はわからないということですね。
懲役 でも、不思議なことに「困っている」と思われたほうが利益になるんだよね(笑)。ということで……。収益停止されて困っています! チャンネル登録お願いします。
(取材・文=山崎尚哉)
懲役太郎(ちょうえき・たろう)
VTuber。元ヤクザの無職。18歳から40歳までいくつかの組織を渡り歩き、その間に2年、4年、4年と3回の懲役を経験。最後は2次団体の若頭の舎弟となり、独立目前まで進んだが、活動資金が尽きて足抜け。2018年から「元ヤクザのVTuber」として活動を開始。昨年、チャンネル登録者数49万人の「懲役太郎チャンネル」が収益停止処分を受けた。
懲役太郎YouTube公式チャンネル『シン・懲役太郎チャンネル』はこちら
https://www.youtube.com/@sin.chouekitarou