日本の企業やコスプレイヤーに注目してほしい、シアトルのアニメコンベンション

日本のコンテンツが海外で盛り上がりを見せている。“コスプレ”もそのひとつ。今ではコスプレの世界大会が開かれるほどで、伝統的な同人イベントから一歩進んだ、ビジネス革新のフロントランナーとして注目されているのだ。新規ファン獲得のため戦略的な市場展開を実践する日本のコスプレイヤーも現れるなど、同イベントはグローバル市場での協業や投資チャンスを生み出すプラットフォームとなっている。未来の成長分野への参入を検討する企業にとって、必見の現場だ。
海外のアニメコンベンションで取材を重ねてきた筆者が、世界中で行われているイベントの現場をレポートする。
世界中で注目されるアニメやマンガ、ゲームなどの日本のサブカルチャー。”コスプレ”も同様で世界中で愛されるコンテンツとして人気を博しているものの、日本とは大きく違う独特なスタイルとなっている。
そんな海外で人気を博す日本のサブカルを語る現場として、さまざまな分野で世界トップを走り続けるアメリカ合衆国は外せない。
2025年4月18~20日の3日間、アメリカ・シアトルにあるSeattle Convention Centerにて、アメリカ屈指のアニメコンベンション「Sakura-Con」が開催された。筆者は今回で3度目の取材で、アメリカで開催されるものの中でも、好きなアニメコンベンションのひとつだ。
西海岸屈指のアニメコンベンション「Sakura-Con」
「Sakura-Con」は、1998年からスタートした、アメリカの老舗アニメコンベンションの1つ。コロナ禍真っ只中だった2020~2021年を除き、毎年3~4月に3日間開催されており、シアトルという土地柄、西海岸沿いに住むアニメファンを中心に親しまれている。バンクーバーから車や鉄道で2~3時間ほどでアクセスできるため、カナダからの参加者も多い。
2017年には来場者数25000人を記録。この数はアメリカではTOP10に入る規模で、75万人規模の都市で開催されていると考えたら来場者数は多いと言えるのではないだろうか。
ちなみにシアトルには街中に多くの桜の木があり、開催時期に桜が咲くことで有名(ただし今回は開催時期が遅れたため、桜を見ることはできなかった……)。
2025年は、「羊文学」や「れをる」といったアニソンを手掛けるアーティストや、「徳井青空」「天城サリー」「土屋神葉」など日本の声優がゲストで呼ばれており、ステージやサイン会で会場を盛り上げた。
日本企業は手応え! 一方で怪しい展示も…アメリカの企業ブースの現状
企業ブースの広さは、「東京ビッグサイト」東ホール1.5個相当。そのスペース内に約500ブースが出展していた。
数は多くないが、日本企業の出展もみられ、例えばアメリカ内に17店舗を展開する「紀伊国屋書店」がマンガの物販を中心として大型ブースを展開。オーディオビジュアルブランド「Aviot」は日本のVTuberとコラボした製品を展示・販売し、アメリカの有名声優が訪れるなど注目を集めた。

チョコレートで有名な「ROYCE」はさまざまな種類のチョコレートを販売していたが、海外で人気の高そうな抹茶味はそれほど人気がなく、あまり人気のない期間限定商品が人気だったとのことだ。

そのほか、兵庫県がアニメと絡めたブースを展開しており、特に「NARUTO -ナルト-」など人気アニメのアトラクションを備えた淡路市のテーマパーク「ニジゲンノモリ」への注目度が高かったとのこと。
いくつかの日本企業を発見したが、全体で見ると出展数はそれほど多くない印象。ただし、多くの出展企業が手応えを感じており、「次回もまた出展したい」と語っていた。


アメリカのアニメコンベンション全体に共通して言えることだが、全体で見るとアニメや日本文化と全く関係ないブースや、アニメやマンガ、フィギュアを集めた商店のようなブースが目立つ。そういったブースでは「これ絶対に許可取ってないだろうな…」と思われる海賊版商品もある。特にフィギュアや「ポケットモンスター」関連の商品はその確率が高いのではないだろうか…。確認が取れていないので、あくまで筆者の感想で留めておく。
このような海賊版を扱っていると思われるブースはやや減少傾向にある、もしくは目立たない場所に配置されるようになってきている。しかし完全に排除は難しいだろう。このようなブースが出展し、イベント側に出展料が入るのだから…。
シアトルのコスプレ事情は…?
では「Sakura-Con」のコスプレに注目してみよう。コスプレイヤーの多くはシアトル在住だが、距離の近いオークランドやカナダのバンクーバーから来る人も多い。
人気のコスプレは「ダンダダン」や「葬送のフリーレン」といった日本の人気アニメや、「原神」など世界的に人気のゲーム作品。日本やアジアと傾向がとても似ている。
日本やアジア、東南アジアでよく見かける”コスプレイヤーのブース”はなく、イベントを楽しみながらコスプレをする方が圧倒的に多い。コスプレに着替えて家やホテルから向かい、会場や周辺をコスプレでまわる。ステージやサイン会に行く人もいれば、撮影映えしそうなエリアで撮影をする人、コスプレでパフォーマンスを行う人など、各々のスタイルでコスプレを楽しむ。
日本やアジアと違い、アメリカはカメラマンが少ないため”イベントでコスプレ撮影をする”のではなく”コスプレでイベントを楽しむ”のが当たり前。「Sakura-Con」もその傾向が強い。
ただし、そういったエンジョイ勢ばかりではなく、例外もある。それは中華系のコスプレイヤーだ。シアトルやバンクーバーに留学に来ている人や移住した人は、アジアのコスプレ文化を継承していることが多い。それはコスプレイヤーもカメラマンもだ。
撮影ガチ勢の場合、撮影映えする場所に集結する。「Sakura-Con」ではコンベンション内にあるテラスがとても人気で、ここに中華系のコスプレイヤーやカメラマンが集まった。ここだけ見ると、まるでアジアのイベントのようだ。

実は現在、カナダからアメリカへ入国する場合のトラブルが多く、カナダから参加する人は少ないのではないかと筆者は思っていたが、特に問題はなかったそうだ。ただし、筆者の知り合いは別のイベントで影響を受けたそうなので、運が良かっただけかもしれない。
観光組み合わせたら最強のイベントなのでは?
筆者が前回、「Sakura-Con」を取材したのは2019年のこと。そのころと比べると日本企業が減った気もするが、盛り上がりは全盛期と変わっていない印象だ。商品の売れ行きも良かったと聞いている。
アメリカ西海岸のアニメコンベンションといえば「Anime Expo」があり日本からの注目度も高いが、個人的には「Sakura-Con」をオススメしたい。アメリカだけでなくカナダの来場者へもアピールできるからだ。
ただし、桜の時期ではなかったこと、イベント中に雨が降るなど、残念な部分もあった。こればかりは仕方がない。来年以降の開催に期待したいところだ。
またシアトルに着目すると、「Amazon」や「マイクロソフト」といった世界のトレンド企業が集結しており、観光としても非常にオススメできる。筆者は「スターバックス」が好きで世界の店舗を巡るのが趣味だが、シアトルにある1号店に寄ったことがきっかけだ。また「Sakura-Con」会場の近くには世界で6店舗しかない「スターバックス リザーブ® ロースタリー」があり、イベント終了後に広大なカフェで編集作業をしながらまったりする。このルーティーンがたまらなく好きだ。イベントと観光の両面で考えると、アメリカで最も良いのではないだろうか。
そんなシアトルのアニメコンベンションだが、都市によって出展企業や雰囲気は変わってくる。今後もアメリカに注目してアニメコンベンションの模様を発信していきたい。