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沖田臥竜の直言一撃!

“職業・小説家”のリアル―食えぬ時代に書き続ける理由

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『ムショぼけ』4巻(秋田書店)

 病院が大嫌いである。月に一度は行っていて、かかりつけ医からは「そろそろ健康診断を受けてください。血液検査だけでも!」と言われるが、結局は検査は受けず、誤魔化しながら十数年が過ぎた。早いものである。

 しかし、Amazon。彼はなかなか侮れないではないか。私は少々みくびっていた。友人の漫画家、『ザ・ファブル』でおなじみの南勝久先生から、「Amazonは良いですよ!」と言い続けられて、Amazonで評価が高かったマッサージ機を購入したのだ。それを使ってみると、首、頭部、背中、腰の痛みに地味ながら酷く悩まされていたのだが、だいぶ改善された。遅まきながら文明の進化をAmazonに思い知らされるとは思いもしなかった。お陰さまで、筋トレを再開するまで回復してしまったではないか。Amazon最強説の爆誕である。

絶対に泣ける小説

 5月15日に小説『木漏れ陽』(角川春樹事務所)を送り出し、抱えている書籍は残り3冊。1冊は初稿を叩き終え、原稿をリライトしてから編集者に送ったら、来週からは10月発売の小説の仕上げに入る。その作品には、おおっ!と驚いてもらえるのではないか。それも終わると、年末に発売予定の小説の仕上げだ。この作品では、初めて女子高生を主人公に据えている。

 『木漏れ陽』を含めると一時は書籍を4冊抱えていたが、一つひとつの作品が世に送り出すところまでが見えてきた。そして、これまでにない試みも取り入れていたりしている。私の中では画期的とさえ言えることだ。「濡れ場」である。濡れ場を物語の中に入れ始めたのだ。

 ずっと嫌いだった。濡れ場を書くのも読むのも嫌いだった。それを克服したかというと違うのだが、作品の幅を広げていくために少しずつ、以前だったら書かなかった描写も取り入れていくようにしている。

 だからどうしたという貴方に、だったら凄い話を聞かせて黙らせる必要があるだろう。

 現段階で言えば、半年間、最大4作品を抱えながら執筆しているのだが、まだ一円もそれらの原稿料のようなものをもらっていないのだぞ。普通だったらそろそろ野垂れ死ぬところではあるまいか。

 だが私の場合は違う。圧倒的なスピードを持っているので、だいたい3〜4時間の睡眠時間で、作家活動以外にもほかの仕事もやっているのだ。なんだったら会社だって経営している。頑張ってると錯覚している愚民に私が言ってやろう。何を頑張っているのかね、と。それはただの錯覚なのだよ。フッフフフ……目の前のことを懸命にやるだけで、頑張っているとのぼせ上がることができるとは、えらく幸せであるまいか…。失礼、嘘である。小説家とはそもそもそういう仕事なのだ。それで筆を折り、朽ち果てていった書き手たちの残骸の上で戦っているのである。

 私はただそこで圧倒的な執筆スピードを持っていて、単純に睡眠時間を削れば、なんとでもなることを実践しているだけである。何も特別なことではない。嫌ならばやめればよいだけのことだ。でも、やめないのは、物語を生み出すことへの私なりのこだわり、私にしかできない作品作りがあるからである。

物語の題材は日常に転がっている

 さて宣伝もさせてほしい。毎月、毎月、何かを出版したりリリースしたりしていると、麻痺でもしているように、誰からも「出版おめでとう!」とすら言われないが、案ずるな。私とてそんなものは微塵も気にしていない。ただ小説『木漏れ陽』の出版で1番に「出版おめでとうございます!」とLINEが来たのが、秋田書店の岩もっちゃんであった。さすが東大卒だけあって、抜かりがない。その岩もっちゃんが編集担当してくれているマンガ『ムショぼけ』4巻(秋田書店)が、6月19日に発売される。推薦文は、登録者285万人を誇るYouTuberのたっくーTVれいでぃおに、書いてもらった。ありがたいことである。

 4巻の表紙を見てもらえればわかるように、我々、作り手が勝負を懸けているほど、おもしろい展開になっていると思う。信長アキラ先生が描く4巻の表紙を見て、みなさんは買わなくて良いと本当に思えるだろうか。私ならば、当然、買いである。

 私が原作者という立場ではなく、たまたま本屋さんでこの表紙を見れば、絶対に買っていた。そして中身も「おもしろいやん!」と言わしめることができていると思っている。

 だいたいどのマンガもドライブがかかるのは、4巻、5巻くらいからと相場が決まっているものだ。その期待に十分、応えていると思う。さらに、おまけのページには、私のクスッとできる豆知識も掲載されていて、お買い得となっていること必至である。ただ、大人の事情で大変恐縮だが、できるなら電子書籍は購入してもらえないだろうか。本屋さんの話を出しておきながら恐縮だが、電子書籍がよいのだ。諸事情で大変すまない。

 末尾ではあるが、今小説家を目指している若い人たちはいるのだろうか。これだけSNSが普及してしまったのだ。時代と共に表現方法も随分と変わった。それは嘆かわしいことなのではなくて、それだけのチャンスが、若い人たちに増えたということだ。純粋に素晴らしいことだと思う。

 若い人たちの発想力が世の中の常識を変えてきたことは、歴史が証明している。どんどん凄い若い子たちが世に羽ばたいていってほしい。それでも小説家を目指しているという若い子がいるならば、聞きたまえ。一つだけだ。日常のすべてが題材にできるということだ。

 今、小説だけで食べられている書き手は20人もいない。私がデビューした10年前で50人と言われていたが、この先、それがもっと減っていくだろう。だからこそ、日常を題材にして、それをユーモラスに変換できるか。つまりは読みやすさにかかってくるのだ。そのために、書く、読む、写すを繰り返すのは当たり前である。

 全ての物書きの最高峰に君臨する小説家になりたければ、突拍子もない妄想なんていらない。目の前の日常をすべて、物語の題材として変換させてしまうのである。そうすれば、儲からないかもしれないが、プロとなり、小説家として生き残ることができるだろう。

 もう一度言う。小説『木漏れ陽』は発売中で、マンガ『ムショぼけ』は、6月19日発売である。よろしくどうぞである。

(文=沖田臥竜/作家・小説家・クリエイター)

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沖田臥竜

作家・小説家・クリエイター・ドラマ『インフォーマ』シリーズの原作・監修者。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』シリーズ(サイゾー文芸部)がドラマ化もされ話題に。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

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最終更新:2025/05/31 12:00