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映画『ジョーズ』公開50周年 ニューヨークでイベント目白押し

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Steven Spielberg In ‘Jaws’(写真:Getty Imagesより)

 人食いザメの恐怖を描いたパニック映画の傑作『ジョーズ』が、6月で公開から50年を迎える。米国では「夏といえばジョーズ」と言われるほど映画ファンに親しまれ、繰り返し鑑賞しているファンも少なくない。50周年を迎えるとあって、各地で記念の上映会やイベントが目白押しだ。また、SFコメディ映画の金字塔『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は7月で公開から40年となる。主演のマイケル・J・フォックスが映画の重要なシーンで演奏したギターの所在がわからなくなっており、ギターの行方を探すプロモーションイベントがスタートし、メディアの話題をさらっている。古き良き映画がオールドファンのみならず幅広い層の心を鷲づかみしている。

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スピルバーグ監督の出世作 業界の流れ変えた映画

 『ジョーズ』は、米北東部ニューイングランドの小さな海辺の町を舞台に、人を襲う凶暴なサメと、サメの襲撃を食い止めようとする地元の人々の闘いを描いたスリリングなパニック・サスペンス映画だ。スティーブン・スピルバーグ監督の作品で、1975年6月20日に劇場公開がスタートした。

 900万ドルという、当時としても低予算の制作費でありながら、全世界で4億7600万ドルもの興行成績をたたき出した。スピルバーグ監督の出世作となり、映画界はこれ以降、興行成績を最も重視するようになった。『ジョーズ』は映画界の流れを大きく変えるきっかけを作った映画である。

 サメをできるだけ観客に見せないようにし、観客の恐怖心に訴えかけた。手に汗握るオープニングシーンは、映画全体の雰囲気を決定づけ、恐怖と期待感をかき立てた。海の広大さと神秘性をとらえた撮影技術は、美しさと、その下に潜む恐怖の両方を鮮やかに描き出した。ジョン・ウィリアムズ氏が作曲した音楽は、緊張感を高め、サスペンスに深みを加えている。

 その後も続編が製作され、ビデオ、ケーブルテレビ、DVD、ストリーミングなど再生手段は時代とともに変わっても、熱狂的なファンを獲得し続けてきた。現在ではいつでも自宅で鑑賞できるが、ニューヨークでは「ジョーズの醍醐味を味わいたいなら、もっと大きなスクリーンが必要だ」とばかりに、各地の映画館が6~8月にかけて上映会を開催する。ディナー付きの特別上映会もあり、新作以上に観客をもてなす映画館もある。『ジョーズ』にまつわる演劇上演やコンサートも予定されており、ニューヨークは「ジョーズ祭り」の様相を呈することになりそうだ。

秘話つづるドキュメンタリーも放送予定 秘蔵映像も

 『ジョーズ』の撮影が行われ、架空の町「アミティ」の舞台となったマサチューセッツ州のマーサズ・ヴィニヤード島では、地元の博物館が6月19〜23日に『ジョーズ』についての特別イベントを開く。撮影スタッフや出演者を招いたトークショーが行われ、ゆかりの品が特別展示される。マーサズ・ヴィニヤード島は歴代の大統領の多くが夏休みに訪れる高級リゾート地だが、今年は大統領よりも「ジョーズ」の方が気になる存在となる。

 また、『ジョーズ』の撮影の裏側に迫ったドキュメンタリーが7月10日、ドキュメンタリー専門チャンネルの「ナショナル・ジオグラフィック・チャンネル」で放送される。タイトルは『Jaws @ 50 : The Definitive Inside Story』で、放送後「Disney+(ディズニープラス)」や「Hulu」でストリーミングされる。

 スピルバーグ監督自身がドキュメンタリーの製作に参加し、監督公認のドキュメンタリーとされる。スピルバーグ監督が個人的に保管してきた未公開映像やNGシーンなども放送されるという。

 50周年ということで、地元や製作者の熱の入れようは並々ならぬものがあるが、50周年でこれだけ盛り上がる映画は、日本では『男はつらいよ』ぐらいではないだろうか。「寅さん」は2019年に、第1作の公開から50年を迎えた。その際、寅さんの甥の満男が主人公となった『男はつらいよ お帰り 寅さん』が公開されている。「お帰りジョーズ」という新作こそないが、『ジョーズ』は米国で寅さん並みのスターと言えそうだ。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は名シーンのギター探し

 一方、1985年7月3日に公開された『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は今年で公開40周年を迎える。『ジョーズ』同様、現在でも映画専門チャンネルで繰り返し放送される娯楽映画の定番だ。

 その『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で、主演のマイケル・J・フォックスが学校のダンスシーンで演奏したギターの所在がわからず、映画会社やギターメーカーが探していると発表した。

 ギターはチェリーレッドの「ギブソンES-345」で、1989年の続編製作中に所在がつかめていないことがわかった。テネシー州ナッシュビルにあるギターメーカーのギブソンはギターについての映像をYouTubeにアップ。フォックスら出演者が登場し、ユーモアたっぷりに情報提供を求めている。

 映画公開40周年のPRキャンペーンの一環だが、長く親しまれた映画をさらに見てもらうための米国らしい軽妙な企画で、古き良き名作の存在感を改めて認識させられた。

(文=言問通)

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言問通

フリージャーナリスト。大手新聞社を経て独立。長年の米国駐在経験を活かして、米国や中南米を中心に国内外の政治、経済、社会ネタを幅広く執筆。

最終更新:2025/06/21 09:00