CYZO ONLINE > カルチャーの記事一覧 > “性加害”もサッカー日本代表復帰の佐野海舟

“性加害”もサッカー日本代表復帰の佐野海舟 松本人志や中居正広にはなかった「ラッキー要素」を中川淳一郎が解説

性加害もサッカー日本代表復帰の佐野海舟 松本人志や中居正広にはなかった「ラッキー要素」を中川淳一郎が解説の画像1
佐野海舟(写真:Getty Imagesより)

 すでに2026年開催の北中米W杯への出場権を獲得しているサッカー日本代表。アジア最終予選の残された2試合(6月5日のオーストラリア戦、同10日にはインドネシア戦)は若手を多く含んだメンバーで臨むこととなるが、そのなかで特に注目されているのが、ドイツ1部ブンデスリーガのマインツに所属するMF佐野海舟だ。

くすぶる性的トラブル炎上の「リスク」

 佐野は昨年7月14日、鹿島アントラーズからマインツへの移籍が発表された直後のタイミングで、不同意性交容疑で逮捕された。同29日に釈放され、8月8日に不起訴処分となっている。事件によってマインツへの移籍が白紙になるのではないかとも囁かれていたが、チームに合流し、リーグ開幕から守備的MFのレギュラーポジションを獲得。そのまま、全試合に先発出場し、第4節以降はフル出場の大活躍を果たし、総走行距離ではリーグ1位になっている。

 事件以降、日本代表から離れていた佐野だが、今回代表に復帰。メンバー発表時の記者会見で日本サッカー協会の山本昌邦ナショナルチームダイレクターは、佐野を招集した理由として、相手女性との話し合いが成立したこと、佐野本人が反省していること、不起訴処分になったことで刑事事件として終了したことを挙げていた。

 ドイツから帰国した佐野は5月28日、千葉県内での自主トレ後に記者会見を開き、「昨年の自分の行動によってたくさんの方々にご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ございませんでした」と、事件について初めて謝罪した。逮捕されたことで引退も考えたというが、マインツでプレーする機会を与えられたことで、再びプレーすることを決断。「チャンスがもらえた以上、そこでやっていかないといけない」と語った。

 サッカー日本代表選手の性的暴行に関する騒動としては、昨年2月に伊東純也(スタッド・ランス)が女性に性的暴行を加えたと、「週刊新潮」(新潮社)に報じられた。女性側は伊東を準強制性交等罪で告訴したが、伊東側は事実無根だとして女性側を虚偽告訴罪で告訴、最終的に双方とも不起訴処分となっている。伊東は週刊新潮に記事が出た直後に日本代表から離脱したが、同年9月に復帰している。

「伊東選手の場合、あくまでも事実無根を主張し、逮捕もされておらず不起訴にもなっているということで、代表復帰のハードルはそこまで高くはなかった。しかし佐野選手は逮捕までされているので、事情が異なる。もし鹿島に所属したままだったら、不起訴になっていたとしても半年くらいは謹慎処分になっていた可能性もあり、代表復帰も難しかったはず。マインツが佐野選手を試合に出すという決断は大きかったでしょう。騒動から離れたドイツのチームに移籍したという事実が、佐野選手に対してポジティブに働きました」(サッカーライター)

 そして何よりマインツでの佐野の活躍は、目を見張るものだった。2023-24シーズンはリーグ13位だったマインツだが、佐野が加入した今季は6位に食い込み、ヨーロッパカンファレンスリーグへの出場権も手にした。

「今季の佐野はマインツの中盤の要としてかなりのインパクトを残しました。チームの躍進を支えたのは事実であり、海外でプレーする日本人選手の中でもトップクラスの活躍です。来季に向けてビッグクラブが佐野に興味を示しているとの話も浮上しているくらいで、やはり日本代表に呼ばざるを得ないレベル。サッカーファンはもちろん、サッカー関連メディアの間でも佐野の代表復帰を願う声も多かったですし、納得の復帰だと思います」(同)

 ただし性的なスキャンダルに対する世間からの厳しい目があるのも事実。そこを佐野がクリアできたのは何故なのか。元大手広告代理店社員でネットニュース編集者の中川淳一郎氏が分析する。

「男による女性に対する性的加害において、ネット上で激しく批判を繰り広げる層は女性が当然多い。だからこそ、松本人志さんや中居正広さんのようによく知っている人物に対しては猛烈に批判する。佐野選手は逮捕されており、サッカーファンの間では衝撃が走りましたが、激しく批判する層が『佐野? 誰?』的な状況になり、批判のしようがあまりなかったように見えました。それはある意味、ラッキーではあったでしょう。

 伊東選手の場合は、アジアカップの際の報道だっただけに、サッカーファンからはむしろ報じた『週刊新潮』への批判が多かった。ベスト8でこの大会は終わっただけに、伊東選手さえいれば……という気持ちを表明する人も多かったものです。元々アスリートの不祥事については、その後プレーで結果を出せば許す、的な空気感があります。

 だから、サッカーファンも『反省しているようだし、和解も成立しているからあとは結果を待とう』という気持ちで、過度に叩くのはやめていたのでは。ただし、まったく結果が出ていなかった場合は当然批判の対象になったと思いますよ」

 日本代表の森保一監督は、佐野の復帰について、チームの一員を家族と考えた時にミスを犯した選手をサッカー界から葬り去るのではなく、「再チャレンジする道を家族として与えることの方がいいのではないか」と話している。佐野がその言葉を裏切ることなく、選手として日本代表に貢献することを期待するばかりだ。

スポーツがテレビで見られなくなる日

(取材・文=Cyzo sports)

CYZO sports

野球や格闘技を中心にスポーツに関する情報を独自の切り口で配信。

CYZO sports
最終更新:2025/06/05 12:00