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サメ映画の金字塔『MEG』シリーズ、アマプラでも人気キープ! 識者が指摘する「大資本で意味不明なことを…」

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映画『MEG ザ・モンスターズ2』より。

 米中合作のサメ映画シリーズ第2弾『MEG ザ・モンスターズ2』(2023、以下MEG2)がAmazon Prime Videoで5月15日より配信中。配信から約1カ月超が経過した6月24日現在も、同サービスの「何度も観られている人気映画」ではトップをキープ。クセになるその魅力は何なのか——。

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 本作は、200万年前に絶滅したとされていた巨大ザメ「メガロドン」との闘いを描いた大人気シリーズの続編。主演はアクションシーンをスタントマン無しで演じることでも知られる“ハリウッド最強の男”ジェイソン・ステイサム(57)。時には潜水艦で、時には生身でメガロドンに立ち向かう豪快な立ち回りは2作目でも健在で、全長20メートルを超える巨大ザメの群れに水上バイクと手作りのヤリだけ(!)で立ち向かうシーンは圧巻だ。

 “サメ映画”といえば「B級映画」のイメージを強く持つ人も多いだろう。たしかに、台風で運ばれてきた大量のサメが人々を襲う『シャークネード』(2013)や、サメの頭にタコの足を持った怪物と闘う『シャークトパス』(2010)など、大衆映画ではとてもお目にかかれない突飛なアイデアの作品も多いジャンルだが、本作はれっきとしたハリウッド製の“A級映画”。

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映画『MEG ザ・モンスターズ2』より。

 前作『MEG ザ・モンスター』(2018、以下MEG)は、サメ映画の原点『ジョーズ』(1975)の興収約4.8億ドルを超える約5.3億ドルを記録した“世界一売れたサメ映画”であり、続編である本作も製作費約1.4億ドル、興収約3.9億ドルという特大ヒットを飛ばしている。

 いったい『MEGシリーズ』の何が愛好家たちの胸を打ったのか。Xのフォロワー5.6万人、サメ映画専門のバイヤーでサメ映画の翻訳も務める「サメ映画ルーキー」さんに、その魅力を語ってもらった。

「巨大サメvsジェイソン・ステイサム」という画期的な対戦カード

──サメ映画ルーキーさん的に、『MEGシリーズ』の評価は?

サメ映画ルーキー:『MEGシリーズ』はハリウッドが作ったこともあって、“ちゃんとした映画”(笑)。ストーリーもシンプルでわかりやすいし、絵面も派手でクオリティも高いんだけど……やっぱ、やっていることは変ですよね(笑)。

──“変”というと?

サメ映画ルーキー:いわゆるサメ映画って基本的に低予算で有名な俳優が出演することはほぼなかったんです。

ところが『MEG』には、ハリウッドスターのジェイソン・ステイサムが出るという。しかもアクション映画を見ている人ならステイサムがいかに強いかを知っているので、メガロドン相手でも「もしかして勝つんじゃないか?」と思わされる。そして、実際勝っちゃうわけです。お金かけてとびきりのB級サメ映画ど真ん中(笑)というのが、“変”だとしか。

──「お金をかけて壮大なバカをやる」という大人の夢を実現させたのが『MEG』シリーズだという。

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映画『MEG ザ・モンスターズ2』より。

サメ映画ルーキー:『MEG』でやっていることって、『ゴジラvsメカゴジラ』とか『ゴジラvsコング』のような、怪獣映画の文脈なんですよね。それで対戦カードの片方を人間にして成立させたのって、相当すごいことですよ。さらに言えば『MEG』よりも『MEG2』の方が、ステイサムはさらに“人間をやめて”いる。だって、水深7000メートルを素潜りして生きて帰れる男なんておかしいでしょ。

──対策として、「副鼻腔に水を入れ、気絶するまで30〜60秒耐えられれば(生還の)望みはある」という説明があったけど、そんなわけない(笑)。

サメ映画ルーキー:でもステイサムだったら確かにやるかもしれない、みたいな謎の期待感がある(笑)。『MEG2』に関してはもう1人、海洋研究所「マナ・ワン」のCEOであるジウミン・ジャン(演:ウー・ジン)も生身で巨大タコに立ち向かうという、なかなかの“無敵っぷり”を見せていました。もはや『MEG』の制作陣は怪獣映画を撮りたいんだろうなっていうのがものすごく伝わってくるんです。

──製作陣の「これが作りたいんだ!」という思いがダイレクトに伝わってくる。そして視聴者側にも「いいんだよこういうので」と思わせられる。

サメ映画ルーキー:サメ映画が愛される理由は、その“自由なところ”にあるんですよね。映画人にとってのキャンバスみたいなもので、好き勝手いじくってもいいことになっている。『MEG』シリーズも、ハリウッドの大資本を費やしてやることがこれでいいんだ!? っていう、安心感をくれるんですよ。

サメ映画には「楽しかったかどうか」以外、何もない

――『MEG2』は、前作と比べて「サメ成分が薄まった」「人間vs人間の物語で、もはやサメ映画ではない」など、“サメ要素”が物足りないことをイジる声も多く見受けられました。

サメ映画ルーキー:特に『MEG2』は、人間サイドの動きが結構しっかり描かれるので、サメだけを見たいという人にとっては少し不満なところがあったかもしれません。でも、1作目よりも2作目の方が、サメ映画ファンにとって馴染みのある“サメ映画”に近づいてきたなっていう感じがするんですよ。

──どういうことですか?

サメ映画ルーキー:主要メンバーが、それぞれちょっとずつ人間をやめているじゃないですか(笑)。本作で初登場だったジウミンだって、冒頭のメガロドンが泳ぐ水槽に素潜りするシーンを見たら「人間をやめてるな」ってすぐわかる。特に、終盤のヘリコプターのシーンなんてすごいですよね。高いところから落ちたくらいじゃ死なない、タフ過ぎる男に仕上がっている。

あと、悪役のモンテス(演:セルヒオ・ペリス=メンチェータ)も、謎の浮き輪に捕まって深海7000メートルから海面に上がってくるじゃないですか。潜水病とかなんないのかなって(笑)。ツッコミどころ満載なんだけど、「まあ、サメ映画だし」って許されちゃう。

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映画『MEG ザ・モンスターズ2』より。

――勢いでごまかされている感じも(笑)。

サメ映画ルーキー:勢いでごまかしてくれるところが、サメ映画の良さだと思います。頭を使わないで見られるというか。特に最近の映画って、「この部分は実はこういう理由があって……」とか、感想に“答え”や“正解”ができがちじゃないですか。でも、サメ映画に関してはそういうことが一切ない。「楽しかったか、楽しくなかったか」、それしかない。

もちろん映画にはメッセージ性だったりとか、深いストーリーだったりとか、ミステリアスなところとかも必要だと思うんですけど、そういうのを全部そぎ落として、サメと人間だけで面白いものを作るのがサメ映画なので。

――ところで『MEG2』は続編を期待させるような終わり方でした。『MEG3』は、いろんなファンが勝手に予告編をつくっていますが、実際にありそうですかね?

サメ映画ルーキー:映画化の版権はすでに取得されているらしいんですが、本当に映画化するかどうかはまた別ですね。というのも、続きを匂わせて終わらせるのがサメ映画のテンプレなんです。ただ、個人的にはやっぱり見たい。

とはいえ、これ以上メガロドンの数を増やすのも芸が無いじゃないですか。なのでもう、今度はステイサムを増やすしかないでしょうね。

――まさかの(笑)。むしろ人間がサメ化していくという。

サメ映画ルーキー:それそれ。サメとガチンコの戦いができる男を増やして、また新しい狂い方をしてほしい!

『MEGA ザ・モンスターズ2』
デジタル配信中
ブルーレイ&DVD発売元/販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
権利元:ワーナー ブラザース ジャパン合同会社
Meg 2: The Trench © 2023 Warner Bros. Entertainment Inc., Shanghai CMC Pictures Co., Ltd. and Gravity Pictures International Limited. All rights reserved.

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(取材・文/町田シブヤ)

町田シブヤ

1994年9月26日生まれ。お笑い芸人のYouTubeチャンネルを回遊するのが日課。現在部屋に本棚がないため、本に埋もれて生活している。家系ラーメンの好みは味ふつう・カタメ・アブラ多め。東京都町田市に住んでいた。

X:@machida_US

最終更新:2025/06/28 18:00