映画『フロントライン』の窪塚洋介が「I.W.G.P.のキングっぽい」と話題 25年経ってもなお色濃い影

小栗旬主演の映画『フロントライン』が、6月13日から15日の映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で動員約25万1000人、興行収入約3億4700万円を記録(6月26日までには動員数約68万人、興収約9億円)。初登場3位にランクインした本作において独特な空気感を発揮しているのが、窪塚洋介だ。
『フロントライン』の題材は2020年2月に発生した、豪華客船ダイヤモンド・プリンセスでの新型コロナウイルス集団感染。DMAT(災害派遣医療チーム)の指揮官・結城英晴を小栗旬、厚生労働省・医政局医事課の役人・立松信貴を松坂桃李、DMAT隊員・真田春人を池松壮亮が務め、窪塚はDMATの実働部隊トップで医師の仙道行義役である。
窪塚といえばロートーンの独特な話し方が特徴だが、本作でもそういった姿が垣間見られ、また役どころとしては常に冷静で、歯に衣着せぬ物言いながら小栗演じる結城のことを「結城ちゃん」と呼ぶなど、ユルい雰囲気も発揮。そんな演技に対しSNSでは、
〈キングがメガ進化して眼福〉
〈窪塚くんの結城ちゃん呼びがキングのまこちゃん呼びを彷彿とさせられた〉
など、2000年に放送された長瀬智也主演のドラマ『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系、通称I.W.G.P.)で窪塚が演じたカラーギャング・G-Boysのリーダー“キング”こと安藤タカシを思い出す観客が続出。池袋の街で、若者たちがさまざまなトラブルと対峙する『I.W.G.P.』ではキングがマコト(長瀬)のことを「まこちゃん」と呼んでおり、そのややねっとりとした言い回しが窪塚をモノマネする際の定番にもなっていたものだ。
同ドラマは暴力団、殺人、ドラッグ、風俗など、ゴールデンタイムの地上波としては刺激的な要素も描き、全話平均視聴率は14.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。万人ウケする題材ではないことを考えると、かなりの高視聴率だったといえる。大ブレイク前の俳優が多く出演したのも特徴的で、当時ジャニーズJr.だった山下智久、引きこもり役の高橋一生、巡査役の阿部サダヲのほか、小栗旬もギャング役で一瞬だけ出演している。
そんななかで強烈な個性を発揮していたのが、窪塚演じるキングだ。カラーギャングのリーダーではあるが、見た目は強そうではなく、どちらかといえば飄々としたキャラクター。一方でかなりの残虐性があり、喧嘩の実力もとんでもないという捉えどころのなさがある。それまでの不良のステレオタイプとは一線を画すそのスタイルは、『I.W.G.P.』という作品の特殊性とともに強いインパクトを与え、その後の窪塚のイメージを決定づけたと言っても過言ではない。
“キング超え”とも名高い窪塚の姿
さて、ドラマ放送から25年経ってもなお“キングっぽさ”が演技から醸し出され、独特な存在感を発揮する窪塚。その魅力について、ドラマ評論家の吉田潮さんはこう話す。
「窪塚が『I.W.G.P.』に出たのは20歳~21歳の頃。昭和のようなわかりやすく暴力を誇示するヤンチャではなく、平成初期のどこかやさぐれた空気感を飄々とまとっていたのが窪塚という印象です。枠に当てはまることを嫌うような影を持ち、社会を斜に構えて見る姿に色気がある。
2003年に結婚(その後離婚・再婚)し、2004年に転落事故を起こしてからは出演作をかなり選んでいるようでしたが、窪塚で衝撃だったのは2017年にハリウッドデビューした映画『沈黙-サイレンス-』ですね。隠れキリシタンの家族の中で、唯一踏み絵を踏んで生き延びたキチジローという役。罪悪感に苛まれ、信仰心の揺らぎもあり、心模様が最も変化する難役だが、窪塚は狡さと弱さと鋭さを器用に使い分けた。裏切って保身にはしる姿は、卑怯にもあさましくも見えるが、それこそ人間くさくて魅力的だった。
人間は本来複雑で、一面的ではないものです。でも日頃、社会生活を送るうえでは一面的に見せていたほうがラク。窪塚はそうした“体裁”にしなやかにNOを突きつける役で本領を発揮するように思います」
転落事故から20年を超え、渋みとカリスマ性を増す窪塚。“キング超え”とも名高い窪塚の姿を確認してみてはいかがだろうか。
(取材・文=サイゾーオンライン編集部)