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「牛乳って注げば全部白いじゃないですか」…これまで飲んだ牛乳は700種類! ミルクマイスター高砂が語るミルクの魅力

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牛乳は全部白いけど、どれも同じではない。(写真/Getty Images)
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 これまで飲んだ牛乳の種類は700種類を超えるという「ミルクマイスター高砂」。

 類を見ない肩書を持つ同氏の『ミルクの本』(自由国民社)では、地元で愛される牛乳から、日々の食卓に並ぶ定番品まで、日本全国の美味しいご当地牛乳を200種類近く紹介しており、個性豊かなパッケージとともに、味を想像しながら楽しむことができる。

 そんな牛乳マニアのミルクマイスター高砂氏に、牛乳の奥深い魅力について語ってもらった。

「マーベルが激怒」は大嘘!

世界にただ一人!? 「ミルクマイスター」という肩書

――そもそも「ミルクマイスター」とは何ですか?

ミルクマイスター高砂氏(以下、高砂) 幼少期から牛乳が好きでした。そして大学生のとき、「自分が一番好きなものを調査する」という課題があり、大好きな牛乳をテーマに選んだのですが、その過程で牛乳の消費量が年々減っているという社会問題を知りました。自分の好きな飲み物が飲まれなくなっていることが悲しくて……。そこから「自分にできることはないか?」と考え、牛乳の魅力をもっと世の中に広めたいと思うようになりました。

――なるほど。使命感が芽生え、ミルクマイスターになったのですね。

高砂 当時はデザイナーを目指してグラフィックデザインを学んでいました。「クリエイティブなことと牛乳を掛け合わせれば、もっと多くの人に牛乳の魅力を伝えられるのでは?」と考えて、今の活動を始めたのです。

――『ミルクの本』では200種類近くの牛乳が紹介されています。本書の注目ポイントはどこでしょうか?

高砂 牛乳って注げば全部白いじゃないですか。だからこそ、パッケージから伝わる美味しさを表現したかったんです。見た目でも美味しさが伝わるように、デザインにはこだわりました。

――執筆だけでなく、本のデザインもご自身でされたんですね。

高砂 そこはデザイナーとして譲れない部分でした。それと、牛乳の特徴も細かく書いています。味だけでは伝わりにくいので、想像しやすいように、牛乳を飲んだシーンも紹介しています。例えば「富山県で白エビバーガーとご当地牛乳を一緒に飲んだら美味しかった」とか……。ぜひ、真似してほしいです(笑)。

――それは絶対美味しいと思います! 確かに具体的なシーンがあると想像しやすいですね。

高砂 ご当地牛乳の良いところは、旅を感じられるところだと思っていて、旅行ガイドブック的にも楽しんでほしいです。いろんな地域を巡って牛乳の個性を知ってもらえたらうれしいですね。牛乳を飲むこと自体が旅の目的になるような体験を「ミルク旅」と呼んでいるんですが、ぜひ皆さんにも体験してもらいたいです。

知らなかった…牛乳は牛や季節によって味が変わる!?

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広島県のご当地牛乳。春夏と秋冬で味もパッケージも違う。

――ご当地牛乳は、味も地域によって違うのでしょうか?

高砂 製法が地域や乳業メーカーによって異なるため、味もまったく違います。例えば、日本の牛の99%はホルスタインという白黒の牛ですが、残り1%にはジャージー牛などもいます。ジャージー牛は乳脂肪分が高く、濃厚で、いわゆるバターっぽい味がするんです。牛の種類によっても違いますし、殺菌温度や殺菌方法によっても味わいは大きく変わりますね。

――乳脂肪分が牛の種類で変わるとは知りませんでした。

高砂 牛の種類だけでなく、食べている餌や季節によっても変わります。牛は生き物なので、1年を通して水の摂取量や運動量も変わり、それによって乳脂肪分も変化します。冬は濃く、夏はすっきりした味になる。なので、季節でラベルを変えて販売するメーカーもあります。牛乳の味で季節の変化を楽しめるんです。

――人によって好みもあると思うのですが、高砂さんが個人的に美味しいと感じる牛乳はどんなものですか?

高砂 やっぱり、新鮮な牛乳が美味しいですね。酪農家と工場、販売店が近いと、搾った牛乳がすぐ店頭に並ぶ。そういう牛乳はすごくフレッシュで、爽やかな味わいがします。

――「ミルク旅」で出会いたい牛乳ですね! スーパーに売っている牛乳でオススメはありますか?

高砂 低温殺菌牛乳ですね。これは一般的な牛乳より低い温度で、時間をかけてじっくり殺菌するのですが、その分、甘みが濃くて後味がすっきりしています。「牛によってこんなに味の幅があるんだ!」と、初めて飲んだときは衝撃でしたね。普通の牛乳ももちろん美味しいですが、低温殺菌牛乳を飲んだことがない人には、ぜひ飲んでほしいです。牛乳の奥深さを感じられると思います。

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パスチャライズ製法とは風味や栄養をできるだけ損なわないようにする製法で、こちらの牛乳は65℃30分間という低温で殺菌している。高砂さんイチ押しの島根県産ご当地牛乳。

――わたしも牛乳は好きなんですけど、飲むとお腹が痛くなることがあって……。何か対策はありますか?

高砂 冷やしすぎないことですね。ホットで飲んだり、量を減らして少しずつ飲むのもオススメです。直接飲まずに料理に使うのも良いですし。それでも気になる方には、乳糖不使用(ラクトースフリー)の乳飲料をおすすめします。

――乳糖不使用?

高砂 乳糖(ラクトース)というのは牛乳に含まれる糖分なのですが、それを分解しにくい体質の人はお腹が痛くなりやすいんです。スーパーで「おなかにやさしいミルク」という名前で売られているものがあるので、そういう商品を試してみてください。厳密には牛乳ではないのですが、栄養面ではほとんど変わりません。

――牛乳はカルシウムが豊富だと聞きますが、栄養面でも飲んだほうがいいんですか?

高砂 牛乳のカルシウムをほかの食材で補おうとすると、かなりの量を摂らないといけません。当然、コストもかかります。その点、牛乳は調理いらずで、飲み物として手軽に摂れるのが大きな魅力です。ただ、今は飲み物が多様化しているので、家庭で牛乳を飲む機会も減ってきていますけどね。

――本当に飲み物が多様化していますよね。

高砂 牛乳の消費量は相変わらず横ばいのままです。でも、牛乳を飲むことで骨密度が上がり、骨粗しょう症の予防にもつながります。子どもだけでなく、大人にもぜひ飲んでほしいですね。

――ちなみに、高砂さんの骨密度はどれくらいなんですか?

高砂 おかげさまで、かなりしっかりしています(笑)。数値も良好です。これは間違いなく牛乳のおかげだと思っています。

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『ミルクの本』(ミルクマイスター高砂・著/自由国民社)

2ちゃんねる発“参加型コンテンツ”の功罪と今昔

(構成=桃沢もちこ)

ミルクマイスター高砂(みるくまいすたー・たかさご)
1983年生まれ、山形県寒河江市出身。これまでに飲んだ牛乳は700種類以上という牛乳マニア。劇場用牛乳アニメ『ミルクのケビン THE MOVIE』や、牛乳ソング「サンキュー☆牛乳」、「ご当地牛乳トレカ」など、さまざまなアプローチで牛乳の魅力を発信する、世界一牛乳好きなグラフィックデザイナー。世界中の牛乳を探索しながら、オススメの牛乳や楽しみ方を紹介し、牛乳の魅力を広めるために活動している。

桃沢もちこ

1993年生まれ、愛知県出身。東京都在住のフリーライター。社会問題からトレンド、著名人のインタビュー、体験レポなど幅広いジャンルで執筆。

桃沢もちこ
最終更新:2025/07/10 12:00