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今年の主役は大谷翔平だけじゃない! 山本由伸と鈴木誠也…オールスター直前! 日本人メジャーリーガー3人の現在地

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今季も絶好調の大谷翔平(写真:Getty Images)
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2025年のMLB前半戦は、やはり「大谷翔平」が話題の中心だった。だが今季は、かつてないほど日本人選手たちの活躍が光る年でもある。

大谷翔平がホームラン王、MVP争いの主役であることは疑いようがないが、ほかにも山本由伸が防御率で堂々の上位に入り、鈴木誠也がナ・リーグ打点王争い絡み評価軸で揺るぎない地位を築いている。

「主役は大谷」である一方、「脇役ではない2人」が確かにいる。彼らの現在地と、後半戦の可能性を見ていきたい。

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 “二刀流”完全復活へ! 投打両面でタイトルを狙う異次元の存在・大谷翔平

 2025年、大谷翔平が「完全な二刀流」としてメジャーに戻ってきた。2023年終盤に右肘の手術を受け、2024年シーズンは打者専念で戦った彼は、今季、再び投打の両面でチームを牽引している。

 まず打者としては、ハイレベルな成績を継続している。7月上旬時点でホームラン数は30本台に到達し、ア・リーグのHR王争いでトップ争いを展開。長打率は.600超、OPSは1.000を超えるなど、いずれの打撃指標でもリーグ上位に名を連ねている。特に引っ張った打球の角度と伸びは凄まじく、甘いボールを確実に仕留める技術は健在。

 ただし、シーズン全体を俯瞰すると、すべてが完璧というわけではない。今季は「得点圏での打撃内容」がやや課題となっており、チャンスの場面で詰まる、あるいは空振りが目立つケースも少なくない。得点圏打率はリーグ平均を下回っており、「大谷なら決めて当然」とされる場面で結果が出ない試合もある。

 とはいえ、スランプらしいスランプがなく、波を抑えながら年間50本塁打以上ペースを保つその姿は、スラッガーとしてすでに“超一流”の域を超えている。チーム全体に与える影響力は、たとえ得点圏で数字が伸びていなくとも揺るがない。バットに当たった瞬間、スタンドインを確信できる打球が今季も何度も飛び出している。

 一方で、「投手・大谷」も着実に前進している。復帰登板後の現在はショートイニングでの登板にとどまっているものの、登板を重ねるごとに球威・球速ともに上がってきている。

 最速160キロに迫るストレートに加え、スプリット、スイーパー、シンカーの精度も戻りつつあり、1回〜2回限定の登板ながらも毎回のように三振を奪っている。

 まだ規定投球回には遠く、サイ・ヤング賞などのタイトル争いには直接関与していないが、登板内容自体は極めて優秀だ。打撃成績と合わせた総合WARはリーグトップクラスに位置しており、「MVPの現実性」という文脈では、依然として筆頭候補のひとりに挙げられている。

「1番・投手・DH」という唯一無二の出場スタイルも健在で、開幕から今に至るまで日々当たり前のように、先頭打者として出塁し、次の回にはマウンドに上がる。その存在は、もはや“特別”ではなく、“基準”として球界に定着しつつある。

 打者としてホームラン王を、総合的な価値でMVPを、そして投手としての再完成に向けて……。数字の眩しさとともに、どこかに「納得しきれていない」顔を浮かべる大谷翔平の姿こそが、今季のリアルだ。偉業の中でなお、己の基準と戦い続ける。今、野球というスポーツの最前線には、そんな男が立っている。

“エース“として確立が求められる1年・山本由伸

 2025年シーズン、MLB2年目の山本由伸が見せている完成度は、もはや「適応中の投手」という枠を超えている。

 初のMLBでオールスター出場を決めた山本は、7月8日の試合こそ打ち込まれたものの、ここまで18試合に先発し、96回2/3を投げて防御率2.77、WHIP1.07、奪三振率10.08(8日時点)。いずれの数字もリーグでは上位を記録している。

 今シーズンの山本は、奪三振力・被打率などのバランスが極めて優れている。特に被打率.199はナ・リーグで3位、WHIP1.068は同5位、奪三振率は7位(8日時点)。これは“打たせず・崩れず・抑える”という条件を、すべて満たしている証でもある。昨年と比較すると、球種の幅と投げ分けも明確に進化している。

 何より目を見張るのは、投手としての総合力をうまく生かし、試合中も自身の投球を修正していることだ。その結果、ズルズルいかない、打たれてもそれ以降は締める……。メジャーの先発投手として必要な地力を、20代半ばにして堂々と体現している。

 6月から疲れが見え始め、成績がやや伸び悩んでいるが、今後は修正していき、最終的には敗戦数以外は2016年の田中将大ぐらいの成績を残すことに期待していきたい。

 1年目はシーズン中に怪我もあり、ポストシーズンで地力を証明したシーズンだったが、2025年は「MLB仕様に深化した山本由伸」が誕生したシーズンだ。ドジャースの命運を背負う存在となった今、後半戦のピッチングは、球団だけでなくリーグ全体のタイトル争いを左右する可能性すらある。派手さはないが、打者にとっては“最も隙のない投手”……。それが今の山本由伸である。

勝負強さが光るMLB4年目! “打点王”争いで見せる進化・鈴木誠也

 2025年、MLB4年目を迎えたシカゴ・カブスの鈴木誠也が、ついに“数字の重み”でリーグにインパクトを与え始めている。打率やOPSといった表面的な派手さはやや抑えめながら、今季は「打点」という最も試合の得点に貢献する指標でナ・リーグ1位(7月8日時点)を走っている。

 開幕から一貫して中軸を任されてきた鈴木は、ランナーを置いた場面での打席内容が格段に進化している。海を渡った後は、怪我と不安定さに苦しんだが、今季はその経験値が“結果”に結びついている。

 まず特筆すべきは、シーズン30本塁打ペースという長打力の進化だ。MLB入り当初は中距離打者として見られていたが、今季は引っ張り一辺倒ではなく、逆方向にもスタンドに届く強い打球が増えた。加えて、速球にも変化球にも対応できる打撃の幅が広がり、甘いボールを逃さない集中力が、ホームラン増加という形で結果に表れている。

 その一方で、今季の鈴木を象徴する数字は「打点」だ。7月上旬時点で、ナ・リーグの打点ランキング上位に名を連ねており、本塁打数以上に「勝負どころで1本が出る打者」として存在感を放っている。

 本塁打王争いではやや後方に位置しているものの、30本塁打&100打点超えは射程圏内。もし今季、ナ・リーグで打点王のタイトルを獲得すれば、それは松井秀喜でも到達できなかった「日本人野手の新たな到達点」となる。

 MLB4年目、適応と苦悩を経た先に、打点王というタイトルが現実の目標となっている。もしこのままタイトルを手にすることができれば、それは「MLBで通用した日本人打者」ではなく、「MLBの舞台でタイトルを争った日本人打者」として、ひとつの新しい歴史になるだろう。今、鈴木誠也は“期待”から“結果”へと評価を変えつつある。

「大谷の年」は「日本人メジャーの成熟の年」へ

 これまでのMLBにおける日本人プレイヤーは、「象徴的なひとり」によって時代を代表されてきた。野茂英雄、イチロー、ダルビッシュ有、大谷翔平……。いずれもひとりでMLBに風を吹かせてきた存在だ。

 だが、2025年は違う。

 3人の日本人選手が、それぞれの持ち場で「主役」となり、異なる切り口からタイトル争いに絡んでいる。それは、単なる“個の才能”ではなく、“集団としての成熟”を物語っている。

 後半戦、彼らがどんな記録を残すか、どのタイトルを手にするか……。それは日本野球の未来にとっても、ひとつの試金石になるだろう。

 2025年は「大谷の年」であると同時に、「日本人メジャーの時代の始まり」なのかもしれない。

“原政権の遺産”か“阿部巨人”の創造か?

(文=ゴジキ)

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ゴジキ

野球著作家・評論家。これまでに『巨人軍解体新書』(光文社新書)や『戦略で読む高校野球』(集英社新書)、『甲子園強豪校の監督術』(小学館クリエイティブ)などを出版。「ゴジキの巨人軍解体新書」や「データで読む高校野球 2022」、「ゴジキの新・野球論」を過去に連載。週刊プレイボーイやスポーツ報知、女性セブン、日刊SPA!、プレジデントオンラインなどメディアの寄稿・取材も多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターにも選出。

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ゴジキ
最終更新:2025/07/10 22:00