映画化が決定するも“期待度が低い”苦境のフジテレビドラマとは

フジテレビの親会社「フジ・メディア・ホールディングス(FMH)」が7月31日、2026年3月期の連結業績予想を下方修正し、本業の利益を示す営業損益が120億円の赤字に転落する見通しであることを発表した。
フジといえば、元タレントの中居正広氏と同局の元女性アナウンサーとのトラブルに端を発した一連の問題で、一時期は大半の大手スポンサー企業がCM出稿を見合わせる苦境に陥った。
そうした中、6月25日の株主総会で同局は清水賢治社長を筆頭とする新体制が株主の承認を得て本格的に始動。以降はグループの組織改革などが評価され、トヨタ自動車などの大手企業がCMを再開し始めている。
だが、従来予想は25億円の黒字だった26年3月期の連結業績予想も大幅な赤字の見通しに。通期で営業赤字に陥れば、08年の放送持ち株会社移行後で初となる。
「大幅な収益減の影響はドラマやバラエティー番組のキャスティングにも悪影響を与えています。とくに今期のドラマは本来ならGP帯(午後7~11時)での主演クラスとはいえない俳優陣を起用せざるを得なくなった。とはいえ、フジのみならず他局のドラマの視聴率も低迷はしていますけどね」(テレビ局関係者)
いまだ厳しい状況が続いている同局だが、大幅に減った収益を少なからずカバーしているのが製作に出資しているフジの映画事業だ。
1月に公開された俳優・山崎賢人主演の『アンダー・ニンジャ』は興行収入15.6億円を記録し、公開前に田中圭との不倫疑惑報道があった永野芽郁主演で5月に公開された『かくかくしかじか』は約9億円を記録。
8月22日には人気コミックを実写化したラブストーリー『隣のステラ』、翌9月には東野圭吾氏の原作小説を福山雅治主演で実写化した『ブラック・ショーマン』、そして10月には『君の名は。』などで知られている新海誠監督のアニメ映画を実写化した『秒速5センチメートル』がそれぞれ公開される予定となっている。
そんな中、ここに来て昨年ドラマ版が放送された『全領域異常解決室』の劇場版が来年公開されることも発表された。藤原竜也主演の同作は捜査機関〈全領域異常解決室〉のメンバーが科学では解明できない異常事件の真相に迫っていくさまを描いた作品。
とはいえ、ドラマ版の全10話の平均世帯視聴率は5.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)とお世辞にもヒット作とは言い難い状況だ。
映画業界関係者は明かす。
「フジの出資映画としては、他にも来年に木村拓哉さん主演のドラマシリーズ『教場』の劇場版、織田裕二さん主演の人気シリーズの劇場版最新作『踊る大捜査線 N.E.W.』の公開がすでに発表済みで、この2本に関してはヒットが確実視されています。その一方、『全領域異常解決室』と同様に人気コミックを実写化したドラマ版が振るわなかった向井理さん主演の『パリピ孔明 THE MOVIE』が4月に公開されたものの、興収は5億円にも届きませんでした。それだけに、『全領域異常解決室』の劇場版についても苦戦が予想されています。それでも“大人の諸事情”で映画化できる作品は少ないのが現状なので、ドラマの視聴率はあまり気にせず、可能な作品は赤字覚悟で映画化する方向なのでしょう」
同局では長澤まさみ主演の連続ドラマ『コンフィデンスマンJP』を19年に映画化しているが、ドラマ版に関してはそこまで視聴率が高くはなかった。
また同局のみならず、日本テレビも嵐の櫻井翔と広瀬すずのW主演による連続ドラマ『ネメシス』を一昨年に映画化しており、こちらの作品もドラマ版は視聴率的に成功とは言い難いものだった。
近年はフジに限らずテレビ局が自社のドラマ作品を映画化するムーブが盛んだが、その背景にはそれなりのメリットが存在するという。
芸能ジャーナリストの竹下光氏は語る。
「近年の映画は製作委員会方式のものが多く、すでにドラマ化されている作品に関しては資金集めやプロモーションの面で一から作り始める作品よりも有利というのはあると思います。加えて、ドラマのファンという一定のパイが興行収入の面で計算できますからね。それにドラマの映像を再利用したり、あらかじめドラマの撮影時のセットなどを利用して映画のシーンの撮影も並行して行ったりと製作コストの面でもメリットはあると聞きます」
ここに来てますます力を入れている自局のドラマの映画化は、いまだ苦境が続くフジを救うことはできるのだろうか。
(取材・文=サイゾーオンライン編集部)