KIBA x RYO 対談 前編 ~ライブの魅力に憑りつかれている

2025年8月11日にGargoyle5959名義で、Gargoyleのアルバムデビュー時の初期メンバー、KIBA(vo)、屍忌蛇(Gt)、TOSHI(Ba)、KATSUJI(Dr)でライブするというファンにとってはたまらないイベントが開催された。高田馬場CLUB PHASEという決して狭くないライブハウスでの開催であったのにも関わらず、用意された300枚弱のチケットはたった20分強で売り切れてしまうほどのプレミア化した。ライブMC中に、「軽い気持ちだったのに大変なことになってしまった」「武道館でもいけたかもな」などと冗談のように笑いながらも満更でもなさそうな発言も飛び出すなど、アンコール含めて全18曲という演者もファンも大きな熱狂に包まれた一日となった。
Gargoyleのデビューを1stアルバム『禊』とするなら1989年となる。このほぼ同時期にデビューしたバンドにBY-SEXUALがいる。
彼らは1990年シングル「SO BAD BOY」でデビュー。当時はなんと全員が未成年だったというから驚きだ。派手なヘアスタイルにポップでパンキッシュなスタイル、そしてキャッチ―だけど彼らにしかない独特の曲調で映画『幕末純情伝』の主題歌を担当するなど、大きな人気を得た。
音楽ジャンルもステージスタイルも異なる両バンドであるが、いまはその中心人物のRYOはKIBAの別バンドである夷狄のメンバーとしても活動している。今回はそんな縁からKIBAとRYOの対談が実現した。
――お2人の出会いを教えていただけますか?
KIBA:BY-SEXUALがデビュー前に、ライブハウスの紹介で挨拶した程度はあったんですけど、その後ずいぶん経ってからPt.(プラチナ)の頃、ライブハウスの楽屋で初めてちゃんと喋ったよね。
RYO:そうですね。表参道のライブハウスですね。
KIBA:ただ、そのときはBY-SEXUAL やZIGZOとかをやっている人だっていうのを知っていたくらいで。個人的にというか、じっくりしゃべるようになったのはtest-No.とGargoyleがCHICKEN GEORGEでやった時の、打ち上げでだと思う。すごい人で、面白い人だなぁと思って、RYO君に興味が湧いたんです。それからは、いろんな機会があったらまず誘っているというか。
RYO:ありがとうございます。僕はKIBAさんとは表参道のライブハウスで声かけて頂いたのをきっかけに話すようにはなったんですけれども、もちろんKIBAさんがおっしゃったBY-SEXUALの頃、自分がバンドやり始めたころで、大阪でGargoyleというバンドの存在はもう存じ上げていました。初めて声かけていだたいたときの感想としては「なんて理路整然とした人なんだろう」と。すごく落ち着いた大人のバンドマンを感じました。
――BY-SEXUALとGargoyleで対バンしたことはないのですか?
RYO:その当時はやってないですね。
KIBA:やってないです。GargoyleはBY-SEXUALとジャンルが違ったのもあるし、BY-SEXUALは早くにメジャーで東京に行って、僕らや周りにいるようなライブハウスで地道に活動しているというよりかは、いきなり大きい場所にバッと行ったっていうイメージでした。
RYO:大阪のライブハウスでライブ活動はしていましたが、活動拠点がズレていました。
――BY-SEXUALがメジャーデビューに繋がるきっかけは何だったのですか?
RYO:とあるライブハウスで対バン形式のライブをやったとき、その対バンのデビューが決まっていたんですよ。そのバンドを見に来ていた事務所の社長さんから「君らちょっとこの後一緒に焼肉でも食べないかい?」みたいな感じでお誘いいただいて、それきっかけですね。

――RYOさんはギターの他にボーカルもされますが、KIBAさんをボーカリストとしてどうみられていますか?
RYO:夷狄(いてき)というバンドを一緒にやり始めてからの話になりますが、KIBAさんのあの独特な声が、音楽やバンドでのキャラクターを作っていくんだなって感じましたね。声こそが、アーティスト自体の性格すらも決めるんじゃないかなと。
――夷狄ではRYOさんも曲作りをされていますが、KIBAさんは何か感じることはありますか?
KIBA:僕はGargoyleしかバンド経験がないので、Gargoyleのやり方しかわからないけど、Gargoyleの場合は曲を作るときに、どんな曲を作っても僕が歌えば面白くするだろう、みたいな信頼があるというか、そういう前提で作ってるんですね。
RYO君と作る時は僕の声でこういうのを歌うと面白くなるじゃないか? っていう自分の使い方を周りの人が考えてくれるというか、RYO君のほうでも考えてくれてるよう感じてます。その辺りがちょっと違う感じがしますね。僕の歌とか、声とか、そういうのにRYO君が興味持ってくれてる感じが違うっていうんですかね。KIBAさんがこのタイプの曲を歌うと、こうなるだろうから面白い、とか想像しながら作ってくれてるのを感じますね。Gargoyleの場合は、僕の声や歌に興味というより、前提として当たり前にあるものだから。
RYO:確かにそうですね。でもKIBAさんとの作曲では、詞が先行したのが衝撃的でしたね。「こういう歌詞を書いたから、曲を作ってくれないか」みたいな。
歌詞を見て、曲を書くという事をやったことがなかったので、歌詞を何度も読み返す中で言葉の中にリズムを見つけて何となく雰囲気にコードをつけて、メロディーになっていくその過程とかがものすごい新鮮で、初めての経験でしたね。
――作曲する側としては歌詞がない状態から作るのと、ある状態から作るのと、どちらがやりやすいのですか?
RYO:やりやすさ自体は曲が先ですかね。ギターフレーズありきでずっと曲を書いてきているので、そのほうが自分的には得意なんだろうなとは思います。歌詞に曲をつける、ギターを付けるみたいなことが初めてだったんですよ。難しい、簡単というよりも、「こんな作り方もあるんだな、そりゃそうだな」と気づかせてもらえるような瞬間でしたね。
――夷狄にRYOさんを誘った理由は何ですか?
KIBA:夷狄に誘ったっていうより、最初は「何か一緒にやらない?」みたいな感じでした。当時test-No.とGargoyleとが、ライブを結構頻繁にやり出していた時期で。僕の周りにいるハードロックだったり、メタルっていうのを下敷きにしたギタリストとは違うタイプで、ステージもかっこいいし、話してても面白い。ギターのスタイルだったりとか、プレイとか、パフォーマンスとか含めて、僕はこういう人とやったらどうなるんだろうなっていう興味がすごくあったんですよ。
一緒にやりだしてからは、音楽に向き合う姿勢とかも僕の周りにないタイプだったし、音楽を愛する気持ちも、すごい感じて。それを溢れさせて生きてるというか、周りにも振りまいて生きてる感じとかが、すごい素敵だなって思ってます。
――音楽に向き合う姿勢という言葉が出ましたが、RYOさんもKIBAさんもデビューされて、お時間かなり経っています。デビュー時と今って音楽をやることに対する、考え方が変った部分とか、変ってない部分とか、ありますか?
KIBA:たぶん全然変わっているんだろうと思いますよ。
RYO:変わっているとこもあるだろうけれども、何も変わってない部分もあるから続けているような気がしますね。

――変わってない部分っていうのはどの辺りでしょうか。お二人ともキャリアは30年クラスですが、今でもステージに立つことは最高の楽しみみたいなところっていうのは変わらないですか?
KIBA:そこは変わらないですね。色んな人がいると思うんですけども、僕はステージに立って、ライブができるから、あの瞬間を味わいたいがために、ずっとバンドをやってるところもあります。
変わらない面で言うと、音楽自体はもちろん好きですけど、音楽をやりたいというよりは音楽を使って自分を表現したいっていう気持ちが、僕には最初からあって、今でも変わっていないですね。ともかく音楽ってタイプじゃないので。自分を表現するツールとして、音楽をどう使えばいいのかなっていう風に考えているタイプで、そこは変わってないなと思いますね。
変わったのは、以前はがっついていたというか。もちろん今でももっとやりたいとか、自分自身を上にあげていきたいという気持ちはなくならないし、減ってもないんだけど、昔はがっつく気持ちのほうが先走ってたとこもあったと思う。今はそれをやることで自分の人生をどういう風に楽しめるかっていう事のほうが重要になったってことですかね。
――RYOさんはどうでしょうか?
RYO:ステージに関してはバンドが好きで、仲間と一緒に音を出して何かを作り上げるっていうのがすごく好きで、音を一緒に出す、音を重ねる事が好きで、そしてその最終的な出口としてステージがあって、そのステージで作品だったり自分らが作ったものを演奏、表現する楽しみ、そしてなおかつステージで起こる本番ならではのマジックみたいなものが楽しくて、このためなら本当に何でもするみたいな感覚でステージに向かう気持ちは変わっていないですね。
変わってしまった部分っていうのは特に自分ではあんまり分からないです。
KIBA:僕の感覚だとそのマジックに必要なのは、一緒に演奏する人と、お客さんだな。
RYO:うんうん、交えてですよね。
KIBA:マジックなんだけど、僕はその魅力にちょっと憑りつかれている部分もあるなと思ってて。その魅力を知っちゃったから、もっとそれを感じたかったりして、離れられない。
配信とかだけで音楽をやっていて、人前でのパフォーマンスをやらなくてもやっていける人も、最近は多いと思うんだけど、それはそれですごいなと思ってます。あの魔力を感じなくても、やり続けられる人とは違う成り立ちで音楽をやっているんだろうなって。
RYO:感覚が違うんでしょうね。
――RYOさんも配信ライブ、無観客ライブみたいなものって好き嫌いで言うとあんまりって感じですか?
RYO:そうですね。それはそれなりに楽しいものではありましたけれども、やっぱり僕は、バンドの各個人としては満足するかもしれないですけれども、その集合体を一つの人格とするならば、その人格が無観客の配信ライブというものに満足はしないなという感覚はありますね。
というのもやっぱり、お客さんとのコール&レスポンスだったり、ライブハウスの人たちとの共同作業だったり、そういうのが全部重なったうえで、起こるマジックだったりするんです。その日にしかない空気感っていうのが最終的に出来上がらないっていうところが結果的にあるなと感じましたね。

KIBA:それはあれじゃない? 発表会とライブとの違い。
RYO:あー、そうかも知れません。
KIBA:発表会ならそれでいいんだよね。でもライブっていうことになると、より良い演奏というよりはマジックみたいなものを観客の人も感じられるかどうかというか、そっちのほうが重要なんじゃないかな。
RYO:良いですね。
(文/構成=編集部、写真=石川真魚)
後編に続く
【CHAIN THE ROCK FESTIVAL 2025】
日時:2025年8月27,28日
場所:川崎CLUB CITTA’
チケット:e+、ローソンチケット(Lコード:70015)、チケットぴあ(Pコード:299-751)
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