CYZO ONLINE > カルチャーの記事一覧 > 弱者男性たちの結婚相談所(3)
弱者男性たちの結婚相談所

「“いいな”と思う22歳の後輩がいるんです」――44歳男性の自分勝手な告白 恋愛コンサルタント「分不相応な相手にアプローチしようとする男性はとても多い」

「“いいな”と思う22歳の後輩がいるんです」――44歳男性の自分勝手な告白 恋愛コンサルタント「分不相応な相手にアプローチしようとする男性はとても多い」の画像1
成本拓哉さん(仮名・44歳)は、学生時代に自分勝手に告白してフラれたことから、恋愛に対して奥手になってしまった。(写真:Getty Imagesより/写真はイメージです)

「結婚したいのに結婚できない」――。そう考える男性は少なくない。

 別に女性を蔑視しているわけでもない。性格がめちゃくちゃ悪いわけでも、見た目が極端に悪いわけでもない。それでも、“普通の人生”を歩めないのはなぜなのか?

 この疑問を抱える中年男性たちに、自らの半生を振り返ってもらい、「なぜうまくいかないのか」を自己分析してもらった。

 俺がおかしいのか? それとも、社会がおかしいのか? 弱者男性たちのリアルな婚活事情に迫る。

冬になるとマッチングアプリの登録者数が増える

いきなり告白するも撃沈! それがトラウマに

「結婚する夫婦の年齢差としては、3歳差以内であればよくある傾向ですが、それ以上離れると“高望み”と見なされがちです。例えば、50代の男性が30代前半の女性にアプローチするようなケースは、“おじアタック”と呼ばれ、昨今問題視されています。しかし、不利な立場にもかかわらず、分不相応な相手にアプローチしようとする男性はとても多いのです」

 そう語るのは、恋愛・婚活コンサルタントの菊乃さん。

 おじアタックだけではなく“告白ハラスメント”という言葉が登場するほど、中年男性と若者の恋愛は当然ながら難しい。

 そのことを理解していても、過去のトラウマを引きずったまま独身の中年男性もいる。

 岡山県出身の成本拓哉さん(仮名・44歳)も、そのひとり。性格は明るく、人と話すのも得意。見た目はややオタクっぽいが、コミュニケーション能力は高め。

 職業はセールスエンジニアで年収も高く、いわゆる「高給取り」の部類であり、ぱっと見では「モテない」タイプには見えない。しかし、これまで一度も彼女ができたことがないという。

 ただ、告白した経験はある。中学生のとき、吹奏楽部の先輩に一目惚れしたそうだ。成本さんは卓球部で、普段は接点がなかったが、廊下ですれ違ったときに「ビビッ!」ときたという。

 ある日、たまたま帰り道が一緒になったタイミングで思い切って告白……。しかし、軽く流されてしまった。

「高校のときも、2人に告白したことがあります。どちらも同級生で、ひとりはとても美人で、クラスの“マドンナ”と呼ばれていたような子でした。僕はオタクともヤンキーとも仲が良いタイプだったので、彼女とも普通に会話できていました。だから、“ワンチャンあるんじゃないか”と思ったんです」

 そして、中学生のときと同じく、帰り道に告白。あっさりフラれてしまった。

 その後、クラスの地味目な女の子と文化祭をきっかけに仲良くなり、「これはいけるかも!」と思って告白。ところが、またもや撃沈してしまう。

 恋愛は何度かデートを重ねて、少しずつ信頼関係を築いてから告白するのが王道だが……。

「デートに誘ったり、繰り返し告白したりはしませんでした。2回フラれて、“もう高校では恋愛はやめておこう”と思ったんです。ちょうど受験も近づいていたので、気持ちを切り替えて勉強に集中しました。もともと勉強は嫌いじゃなかったので、1年がんばって浪人せず東京の大学に合格できました」

一晩過ごしただけで“彼女面”する女性にイラっ

 しかし、大学生になっても結局、彼女はできなかった。地元の友達とばかり遊んでいて、恋愛よりも男同士でワイワイしているほうが楽しかったという。中学・高校での失恋経験が、自然とそうさせていたのかもしれない。そのまま4年間で大学を卒業し、就職することになった。

「就職氷河期だったので、正直まともな仕事なんて全然ありませんでした。そんな中、システムエンジニアだけは人手不足だったんです。当初は派遣社員でしたが、けっこういい給料をもらえていました。新卒で年収500万円くらい……。今思えば、かなり恵まれていたましたね。そこから付き合いで、セクキャバ(セクシーキャバクラ)など夜の店に行くようになりました」

 社会人になって夜の世界にも少しずつ慣れ始めたころ、一度だけ「恋っぽいこと」があった。行きつけの飲み屋でよく顔を合わせていた女性から「彼氏と別れたから慰めてほしい」と連絡があり、自宅に呼んだのがきっかけだった。

 一夜限りの関係……。それが「恋愛」だったかは分からない。しかし、成本さんにとっては、人生で初めての経験だった。

「でも、たった一晩一緒に過ごしただけなのに、次の日から急に“彼女面”してきて、正直びっくりしました。ちょっと怖くなってしまって……。タイプじゃなかったし、年齢も自分より5歳上。もし、ここで付き合うなら、真剣に結婚とか考えないといけない。でも、正直それはない……。年齢的にも、結婚相手としてはちょっと違うと思ったんです」

 この経験をきっかけに、「次こそは本気で結婚を考えられる相手と出会いたい!」と思うようになった成本さん。友人の紹介で合コンにも参加してみたが、結果は惨敗。気になる相手がいても、「好きな人がいる」と言われると、すぐに身を引いてしまう。

「そんなふうに言われたら、“僕なんかが敵うわけない”と思っちゃうんです」

 そんな成本さんにも、30代半ばの頃に、5年ものあいだ思いを寄せていた女性がいた。バーで出会った、4歳年下の美人だ。性格にはかなりクセがあり、自己中心的でドタキャンも多く、人の悪口もよく言うタイプだった。それでも、なぜか惹かれてしまった。

「毎日のように“会いたい”と連絡して、ご飯にもよく行きました。もちろん、全部僕のおごりです。でも、いくら気持ちを伝えても付き合ってくれなかった。たぶん、本命の彼氏がいたのでしょう……。あまりにも勝手な振る舞いが続いたので、最終的には僕のほうから連絡を絶ちました。魔法が解けたみたいに、一気に冷めましたね」

同年代も同じ職場で働く女性は対象外

 44歳になった成本さんは、もうパートナー探しをしていない。支えになっているのは、趣味のスポーツ観戦や、地元・岡山にいる甥っ子や姪っ子の存在だ。

「年に何回か地元に帰ったとき、はやりのゲームソフトをお土産にして一緒に遊ぶのが生きがいです。“おじちゃん! おじちゃん!”と懐いてくれるのが、とてもかわいいんですよね……。たまに“自分に子どもがいたら、どんな感じなんだろう”と考えることもあります。でも、僕はもう44歳。今から子どもを持ちたいなら、10歳以上年下の女性と結婚する必要がある……。でも、そんな人を口説いて付き合う気力なんて、もう残っていません。ただ、同世代の女性とパートナーになりたいと思ったこともないですね。子どもができないなら、正直、結婚する意味をあまり感じられません」

 結婚は考えていないが、一緒に出かけたり、趣味を楽しめる相手がいればいいとは思っている。もちろん、それも「現実的ではない」とは本人も感じている。それでも、まったく恋心がないわけではなく、ときどき気になる女性ができることもあるそうだ。

「今、職場に“ちょっといいな”と思っている子がいるんです。サッカーの話で盛り上がったことがありました。でも、その子は22歳なんですよ。だから、『どうせ無理だろうな』とは分かっています……。あと僕、同じ職場の人と付き合うのはナシなんです。もし付き合えることになったとしても、会社を辞めてもらいたいくらいですね」

 さすがに、ワガママすぎるだろう。

「でも、自分のことを“不幸”だとは思っていません。“自分はダメだ”と思い始めると、どんどん気持ちが沈んでしまいます。そんな考えに陥らないように『僕には野球もサッカーもゲームもある!』と思うようにしています。そうすると、けっこう楽しく生きていけるんですよね」

 過去のトラウマがあまりにも大きく、恋愛や結婚をすっかり諦めてしまった成本さん。しかし、本音ではまだどこかで「恋がしたい」という気持ちが、完全には消えていないようにも見える。

 そんな彼について、前出の菊乃さんはこう語る。

「20代のうちにライフプランをしっかり立てなかった“ツケ”が、今になって響いているのだと思います。しかし、人生は70代、80代まで続くことを前提に設計すべきです。子どもが欲しいからといって、必ずしも30代の女性にこだわる必要はありません。必ず授かるわけではないという前提ですが、昔と比べれば40代で出産する女性も増えているため、まだあきらめる必要はないと思います」

 成本さんの人生が、いつかどこかで報われる日が来ることを願っている。

恋愛コンサルタント菊乃さんのオフィシャルブログ
https://ameblo.jp/koakuma-mt/

“苗字”を残さなければならない

(取材・文=山崎尚哉)

山崎尚哉

1992年3月生まれ、神奈川県鎌倉市出身。レビュー、取材、インタビュー記事などを執筆するほか、南阿佐ヶ谷でTALKING BOXという配信スタジオを運営中。テクノユニット・人生逆噴射の作曲担当で別名DJ.YMZK。

X:@yamazaki_naoya

山崎尚哉
最終更新:2025/12/04 12:00