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「RESOUND CLOTHING」代表デザイナー・梅本剛史のカルチャー✕ファッション考現学

【ユニフォームに見るファッション】なぜその色は“街”で映えるのか? レイカーズ、ブルズから紐解く米国流デザインの真髄

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梅本剛史氏(写真:KOBA)

 メンズブランド「RESOUND CLOTHING」を率いるデザイナー・梅本剛史が、カルチャーとファッションの関係を語る本連載。

 今回のテーマは、スポーツユニフォームだ。特にNBA、NFL、NHLといったアメリカのプロスポーツでは、ユニフォームが競技用の衣装にとどまらず、ストリートファッションの一部として長年機能してきた。なぜアメリカのユニフォームは“普段着”として成立したのか。デザイナーの視点から、その理由を読み解いていく。

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色がチームを象徴する──NBAユニフォームの完成度

 まず、スポーツユニフォームは普段着とはまったく異なる思想で作られている。

「基本的には動きやすさや機能性が第一で、デザインは二の次。相手に掴まれやすい服は不利になるので、多くのスポーツウェアはピチピチに作られていますよね。それを体格のがっしりした人が着ると、結果的に肉体美として綺麗に見えるのがユニフォームの特色やと思います」

 そして、歴史あるチームのユニフォームほど、時代とともに変化しながらも変わらない“軸”とアイコン性を持っている。

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ロサンゼルス・レイカーズの八村塁(写真:GettyImagesより)

「サッカーの代表のユニフォームなんかは、色を見ただけでどの国か分かるものも多いですよね。NBAでは、ロサンゼルス・レイカーズの黄色と紫も、誰が見ても一発でレイカーズだと分かります。この色の組み合わせでは、何を作っても“レイカーズのパロディ”に見える。それくらい色のブランディングが完成されているんです」

 レイカーズ以外にも、NBAのユニフォームには「色使いが秀逸なものが多く、日本人にはないセンスを感じる」と梅本氏は続ける。
「たとえばボストン・セルティックスは緑の色合いがとにかくキレイ。黒ベースのユニフォームのときは緑を濃く、白ベースのときは薄くしていて、バランスを取っているのも見事です。またシカゴ・ブルズの色の組み合わせは『ブルズカラー』とも呼ばれますが、赤だけでなく黒・白を合わせた3色が揃うのが条件。どれか一つが抜けても成立しないバランス感があります。また90年代に流行したオーランド・マジックは、黒ベースに青のストライプを入れているのが『日本人にはない発想やな』と感心しました」

ドリーム・チームがユニフォームを「憧れ」に変えた

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1992年のバルセロナ五輪に出場した男子バスケットボールアメリカ代表のマイケル・ジョーダン(写真:GettyImagesより)

 こうした色の強さとブランディングが一気に世界へ広がった転換点が、1992年のバルセロナ五輪で結成された“ドリーム・チーム”だった。

 NBAのトップスターたちが集結し、競技としてのバスケットボールだけでなく、そのスタイルや佇まいまでもが世界中に共有された。

「この頃から、アメリカでもバスケだけじゃなく、アメフトやホッケー、野球のユニフォームがストリートで着られるようになった印象です」

 スポーツとストリート、そして音楽カルチャーが密接につながっていた90年代において、ユニフォームは自然に街へと降りてきたのだ。

 その象徴が、NFLやNHLのユニフォームだった。代表例として梅本氏が挙げるのが、NFLのラスベガス・レイダースだ。

「90年代のストリートでめちゃくちゃ流行ってましたね。黒とシルバーの2色だけで成立しているのが、シックでカッコいいユニフォームです」
ホッケーでは、デトロイト・レッドウィングスの存在が印象的だったという。
「赤と白だけのシンプルな配色ですが、ホッケーシャツらしいボーダーの入り方も含めて、ストリートで映えるデザインでした。NHLやNFLのユニフォームはラッパ ーが着たことがストリートに広まるきっかけになった印象です」

 こうしたチームのユニフォームが支持された背景には、色やロゴだけでなく、服としての構造そのものの魅力があった。

「たとえばホッケーのユニフォームは肩パッドや肘当てを入れる前提で作られているんで、もともとシルエットがルーズ。それが90年代のオーバーサイズ文化と噛み合ったんやと思います」

 アメリカンフットボールのユニフォームも実はデザイン性が高い。

「アメフトのユニフォームは浅いVネックだったり、シャツで言う“ヨーク”(背中の切り返し)の構造をTシャツに落とし込んでいたりと、実は面白いデザインなんですよね。ポロシャツが原型のラグビー、“ちゃんちゃんこ”っぽい野球のユニフォームとかと比べるとディテールが面白いし、ファッションブランドがモチーフに使うことも多いです」

 競技のために突き詰められた機能性が、結果的にストリートファッションとしての独自性を生み出していったのは、興味深いポイントだ。

日本のプロ野球ユニフォームはなぜ街に出なかったのか

こうしたアメリカのスポーツユニフォームと比べると、日本のプロ野球ユニフォームは、長らく“競技服”の枠にとどまってきた印象が強い。

「そんななかで最初に驚かされたのは、ボビー・バレンタイン監督の時代(第1期・1995年)のロッテのユニフォーム。雰囲気が一気にアメリカっぽくなったので、『プロ野球も向こうのセンスを取り入れたほうがええんちゃうか?』と感じたのを覚えてます。ただ最近やと、ジャイアンツがヨウジヤマモトやティファニーとコラボしたりと、面白い流れも出てきてますけど、ヤクルトのネオンイエロー×ネイビーは個人的には苦手(笑)。赤ストライプを使ったトリコロールな感じがクラシックでカッコいいと思います」

一方で日本では野球のユニフォームは「普段着として着るのが恥ずかしい」という印象が今でも強い。この点は、ニューヨーク・ヤンキースの「NY」ロゴが、チームや選手を知らなくても“ファッションアイコン”として成立し、世界中で愛されているのとは対照的だ。

 ただし、近年は日本でもスポーツウェアとの距離感に変化が生まれつつある。

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ティファニーデザインによる読売ジャイアンツのユニフォーム。写真は吉川尚輝(写真:GettyImagesより)

「最近の若い世代は、サッカーのユニフォームを中心に、スポーツのユニフォームをストリートウェアとしてごく普通に着こなしています。Jリーグ開幕直後のヴェルディのユニフォームなんかは、今や価格が高騰していますからね。自分は恥ずかしくて着られないですけど(笑)、これは20年、30年前のアイテムが“ヴィンテージ”として見られる時代になったということやと思います」

 今の日本は、スポーツウェアが改めて見直されている時代ともいえるのだ。

「今はY2K(2000年代初頭)ファッションが再流行していますが、当時はヒップホップをベースにしたストリートファッションの全盛期。その頃に流行ったユニフォームやスポーツアイテムが、もう一度“デザイン”として再発見されていると言えます」

 競技のために突き詰められた機能性。チームや国を象徴する色とロゴ。そして、それらを街へと引き寄せたカルチャーの力。

 スポーツユニフォームは、単なる“試合着”ではなく、時代の身体感覚や価値観を映し出す、もうひとつのファッションアーカイブなのだ。

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(取材・文=古澤誠一郎)

古澤誠一郎(ライター/編集者)

1983年埼玉県入間市生まれ。得意なジャンルは本、音楽、演劇、街歩きなど。『サイゾー』『週刊SPA!』『ダ・ヴィンチニュース』などに執筆中。ライター古澤誠一郎のホームページ

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古澤誠一郎(ライター/編集者)
最終更新:2025/12/31 12:00