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高市首相と統一教会、カズ58歳の執念、東大医学部の闇 元木昌彦のスクープ週刊誌


 お次は、あの秋篠宮紀子さんの実弟のお話である。

 新潮によれば、各種世論調査で“皇室に親しみを感じる”との回答は7割前後あるという。そんな文字通り「ロイヤルファミリー」への信頼感を利用して、悪だくみを練る者は後を絶たないが、そうした連中の悪事に知らず知らず加担させられてしまう「ロイヤルファミリー」の親族も、過去には何人かいた。

 今回新潮が報じている、億単位の被害を訴えられた詐欺師も、秋篠宮妃紀子さん(59)の実弟、川嶋舟東京農大准教授(59)を利用していたというのである。

 秋篠宮家の長男・悠仁さん(19)が「成年式」に臨んだのは、昨年9月6日のことだった。皇居・宮殿で行われた「加冠(かかん)の儀」には、天皇皇后両陛下、皇族の方々が勢ぞろいする中、天皇陛下と秋篠宮さまの妹である黒田清子さん(56)夫妻、秋篠宮妃紀子さんの実弟・川嶋舟夫妻も出席していた。

 両夫妻は民間人ながら、ロイヤルファミリーに連なる親族として、悠仁さんの成長を見届ける役割を果たしたのだが、彼の晴れ姿を苦々しい思いで見つめる人物がいたというのである。

 都内で環境事業を営む会社の社長を務めていた80代の男性は、こう憤る。

「川嶋さんは紀子さまの実弟だから、まさか自分の立場をわきまえずデタラメを言うはずがない。そう思い込み、信じてしまった。川嶋さんイコール秋篠宮家という印象を持っていましたから。私からすれば秋篠宮家に騙されたようなモノですよ」

 いったい何があったのか。自らを「詐欺事件の被害者」だと訴えるこの男性は、2010年4月、東京・築地の水産会社社長と称するAの紹介で川嶋准教授と出会ったという。

 Aの年齢は被害者男性と同じく現在80代で、その場で川嶋さんを「あの紀子さまの弟」だと紹介してきたのだという。

「今までの人生で皇族はもとより、皇室とゆかりのある人になんて会ったことありませんでしたからね。すごい人が出てきたと思った。Aは皇室にゆかりのある人物と仕事しているのだと、信用してしまいました」

 それから10カ月後の11年2月、被害者男性は川嶋氏と再び会う機会を得た。

「Aと川嶋さんと三人で会食しました。そこで川嶋さんは“どうかAさんを手伝ってあげてください”と頼んできた。続けて“二本松プロジェクトの件(後述)で協力してくれているけど、ここは一つ成功させてくださいよ。協力してください”と言って、“プロジェクトが成功したら牧場がもらえるのです。そこで馬を飼うつもりです”なんて夢まで語っていたのです。われわれ民間人からすれば皇室と聞くだけで絶大な信頼を抱く。別格ですよ。それに関係する方が現れて“協力して”などと頼まれたら信じてしまう。もう決定的というか、特別な信用を与えてくれたように思えた」

 「二本松プロジェクト」とは、09年、Aが被害者男性に持ちかけてきた儲け話だそうだ。

「Aが言うには、福島県二本松市にある約50万坪の土地を買収する大型開発事業だと。買収にあたっての接待経費が慢性的に不足していて、成功すればすぐに返済できるので資金を貸してほしいと頼まれたのです」

 こうして被害者男性は、自分の妻と知人と合わせて1億円を超える大金をA氏に貸してしまったというのだ。

 ところが、被害者男性と川嶋氏が会食した約1カ月後、東日本大震災が発生。Aから二本松プロジェクトは頓挫したと伝えられてしまう。

「われわれは億単位の大金を貸しているわけだから、Aを詰問しましたよ。その度に彼はさまざまな儲け話を繰り出し、のらりくらりとかわし続けた。希代の詐欺師が書いた筋書きに騙されていたのですが、やはり川嶋さんの存在は大きかった。最後まで信じる気持ちを捨て切れず、警察への相談が遅れたのです」

 新潮は当事者たちを直撃する。

 被害者男性から“希代の詐欺師”と名指しされたAに川嶋氏との関係を問うと、

「もう忘れちゃったな。川嶋さんが世話になっている馬関係の人からの紹介だったと思う。川嶋さんが牧場をやりたいと言っていて、二本松で30万坪を買収しようと段取りをつけたけど、実現できずそのままになった」

 次に、川嶋准教授のいい分を聞こうと自宅を訪ねると、インターホン越しにご本人が応じたという。記者が「二本松プロジェクト」「A氏」の名前を出して問いただすと、沈黙の後に「えっと……」という言葉を残してインターホンが切れた。

 再度、呼び鈴を鳴らすと再び川嶋氏が応じたそうだが、

「申し訳ございません。切れてしまいまして。基本的に取材というのは受けていません。内容次第だとは思いますけれども。どういうところで、何の目的で、というところを文章なりで送っていただいて、それで判断させていただきます」

 改めて書面で質問事項を送ったが、期日までに誠意ある回答はなかったそうである。新潮によれば、2年前にも投資トラブルになった法人の役員を川嶋准教授が務めていた件を報じていたそうだ。

 この時も、相手側を信用させるために彼を利用していたといわれているようだ。

 川嶋准教授は、ロイヤルファミリーに繋がるというだけではなく、将来天皇になる悠仁さんの「叔父」という立場を忘れないでほしいものである。

 お次は、自民党の歴史上、最も多い議席を獲得した高市早苗首相にまつわる様々な疑惑の中で、最も“悪質”と思われる統一教会との癒着関係を追及する文春の記事である。

 高市首相は、各局の開票速報のインタビューに答える中で、はっきりと、統一教会との関係については否定した。

 文春が入手したという統一教会側の秘密文書を「怪文書」のごとくいい立てたが、疑惑は晴れたかというと、はるかに深まったというべきである。

 だが、国会が始まっても、この問題を追及する野党議員が出てくるだろうか? 質問しても、自民党、維新の会、参政党の議員たちのヤジでかき消されてしまうのだろう。

 だが、まだ文春が生き残っているうちは、この疑惑が完全に忘れ去られることはない。そう信じたいが……。

 内容を見ていこう。

 文春は、NHKの日曜討論をドタキャンした裏側も取材して、報じている。理由は統一教会問題を追及されるのを逃れるためだったが、今さらなので割愛する。

 文春は今回、さらなる取材で、新たにある電子ファイルを入手。それは“極秘リスト”と呼べるもので、「リーフレット送付データ」という名のこのファイルを開くと、2016年と18年に作成された「ご挨拶状リスト」なるページが出現するというのである。

「絶対匿名を条件に事務所関係者が明かす。
『高市事務所から、支援者や関係のある企業・団体、地元議員に季節の挨拶や活動報告の文書を送ります。このリストは、その送付先をまとめた名簿です。毎年更新され、〈宛先不明のため削除〉などと申し送り事項まで書き込まれています』

 この電子ファイルのプロパティ欄に表示される『作成者』と『前回保存者』は、『t-kinoshita』。前号で『週刊文春』記者を『はっ倒すぞ』と怒鳴りつけた高市氏の公設第一秘書で奈良事務所所長の木下剛志氏を指すとみられる。

 リストを細かく分析すると、各年、首長や県議・市議ら公人が約六十名、企業の代表や役員が約九十名、その他個人が約五百名収録されている。住所や携帯番号が記された、きわめて精緻な名簿だ。取材班がリストに記された議員や個人のもとを訪ねると、当該人物たちの所在が間違いなく確認できる。

 リストに名前が記されていた一人は、『確かに十六年、十八年頃に文書が届いていました』と認めた上でこう話した。

『年二、三回ほど会合の案内や国会での活動報告といった内容の印刷物が届いていました。一月中旬になると、年賀状代わりの挨拶状が届いていましたよ』

 ちなみに、高市氏の挨拶状とはどのようなものか。例えば『週刊文春』が別途入手した十九年九月吉日付のものには、〈防災対策、サイバーセキュリティ対策、子育てや介護に係る新たなニーズの把握など、総務省の仕事に活かせる観点を得ることが出来ましたので、全力で働いてまいります〉〈高市早苗〉と丸みを帯びた右肩上がりの字体で書いてある。こうした挨拶状を送付するための名簿なのだ」(文春)

 今回の資料の中で注目すべきは、16年版「ご挨拶状リスト」に登場する次の記載だという。

〈B 副支部長 世界平和連合 奈良県連合会郡山支部〉(原文ではBは実名)

 世界平和連合とは、パー券購入問題でも登場した統一教会の友好団体である。教祖だった故・文鮮明氏が立ち上げたものだ。つまり高市氏側は、統一教会側に“挨拶状”を送付していたというのだ。

 文春が確認したところ、リストの送付先住所は、世界平和連合奈良県連合会の所在地と一致したという。この場所は、文春が先週号で報じた、12年に高市のパー券を購入していたAの自宅でもある。Aは、世界平和連合奈良県連合会の事務局長を務めていた人物だそうだ。

 A、Bの両者と高市氏は一体どのような関係なのか。Bを直撃したが返答はなかったという。

 さらに文春取材班は、15年と16年における高市の政務日程が記された内部資料も入手した。いわば日程表であるという。

「ここには、〈案内招待 有〉として、世界平和連合が主催するイベントが書き込まれていた。

 高市事務所の日程表

〈2015/8/9 10:45〜 第10回定期講演会 世界平和連合奈良県連合会〉
〈2016/8/7 10:45〜 世界平和連合第11回定期講演会〉

 16年には、統一教会に関連する「日韓トンネル研究会」に絡む会合の招待もあったそうだが、資料での出欠状況はいずれも〈×〉。招待は受けたが、欠席したようだという。

 念のため「世界平和連合」のイベント開催場所と記されていた公共施設に尋ねると、「確かに使用されておりました」と答えたそうだ。

 以上を総合すると、次のようにいえると文春は推測するのである。

「高市氏は一二年、一九年と統一教会側にパー券を購入してもらっていた。さらに一六年には統一教会側へ“挨拶状”を送っており、統一教会側からイベントの招待を受けることもあった。つまり二〇一〇年代を通して、高市氏側と教団が継続的に浅からぬ接点を持っていたことを示している。にもかかわらず、高市氏はこれまで、その接点について、ほとんど説明してこなかった」

 さあ、勝利に酔いしれている高市首相よ、この文春の指摘にどう答えるのか? 今度も逃げるのか?

 ところで、サンデー毎日(2月8日号)に連載している作家の高橋源一郎が、灘高の国語の入試問題に、パレスチナの詩人、ゼイナ・アッザーム(原口昇平訳)のパレスチナの子どもたちをテーマにした、こんな詩が出て、話題になったと書いている。

「あしに おなまえかいて、ママ
くろいゆせいの マーカーペンで
ぬれても にじまず
ねつでも とけない
インクでね
(中略)
あしに おなまえかいて、ママ
ママのあしにも
ママのとパパの おなまえかいて
そしたらみんな あたしたち
かぞくだったって おもいだしてもらえる

あしに おなまえかいて、ママ
すうじはぜったい かかないで
うまれたひや じゅうしょなんて いい
あたしはばんごうになりたくない
あたし かずじゃない おなまえがあるの
(中略)
あしに おなまえかいて、ママ
ばくだんが うちに おちてきて
たてものがくずれて からだじゅう ほねがくだけても
あたしたちのこと あしがしょうげんしてくれる
にげばなんて どこにもなかったって」

 この詩を、トランプや高市早苗は読んだのだろうか?

 次は、東大医学部の「たかり」体質は、早朝にまで及んでいたという文春の記事。

 1月24日、同大大学院医学系研究科教授の佐藤伸一容疑者(62)が、共同研究の相手方である一般社団法人「日本化粧品協会」の引地功一から多額の接待を受けたとして、収賄容疑で警視庁に逮捕された。佐藤の部下だった吉崎歩元特任准教授(46)も同容疑で送検された。

 東大では昨秋にも、集中治療科の医師がメーカーから賄賂を受け取ったとして逮捕・起訴されたばかりである。「『汚職だらけ』の医学部の実態が明るみに出て、東大病院の田中栄院長が引責辞任。総長まで陳謝する事態に発展した」(社会部記者)

 1月28日、藤井輝夫総長と相原博昭副学長は会見を開き、冒頭の30秒超、深く頭を下げ続けた。

 文春はいち早く、昨年3月、料亭や銀座の高級クラブに始まり、佐藤らが研究を放り出して興じた日中の吉原ソープランド通いなど、「エロ接待」の実態をいち早く詳報していた。

 そこでは、佐藤らの要求に応じ続けた引地が内実を実名告発していた。ついに逮捕者まで出たが、さらに引地は、東大学内に広がる癒着の根深さや、東大が交わす不可解な別の契約についても、120分に渡って独占告白していたというのである。
「吉崎氏の提案を受け、これまで東大内の様々な人を接待し、支払いを肩代わりしてきた。その中には、東大総長まで務めた五神真氏もいます。組織のトップですら、接待や利益供与を受けることに、違和感を覚える様子はなかった」(引地)

 五神は東京大学理学系研究科長、理学部長などを歴任後、2015〜21年の6年間にわたり、第30代東京大学総長を務めた人物。初の大学債を発行するなどユニークな大学経営が注目された。22年から今に至るまで、国立研究開発法人理化学研究所の理事長であるという。

 その接待とはどんなものだったのだろうか? それを再現するとこうなるという。

「東大医学部の研究室。皮膚の凹凸や乾燥などを測定する専門機材が揃った室内の一角は、ゆったりとした白いソファが並び、美容サロンさながらの洒落た空間にリフォームされている。五神夫妻を待っていたのは、専門店を構えるエステティシャンや、テレビ番組への出演経験もあるパーソナルカラー診断士に、メイクアップアーティスト。五神氏はソファに深く腰かけ、フェイシャルエステと眉のスタイリングを受けたあと、自らの骨格やパーソナルカラーの診断を興味深げに聞いた。妻は、さらにメイク講座も追加。朝9時から4時間がかりの“美のフルコース”を堪能した2人は、スタッフに見送られながら、研究室を後にした」

 引地はこうも話す。

「五神氏は夫婦2人で研究室を訪れ、施術を楽しまれていました。その日のうちに吉崎氏から『五神先生と奥様より御礼のメールを頂きました。お二人とも喜んでおられましたし、理化学研究所との新たな共同研究も進められそうです』とメールがあった。理化学研究所ですら、こういう付き合いで研究方針が決まっていくのかと、改めて驚かされました」

 かかった費用は〈メイク・眉スタイリング代〉が2万4120円など、総額で5万円弱。これも引地側が全て支払ったという。

 引地が垣間見た東大のさらなる“闇”があるという。佐藤・吉崎らが引地との研究と並行して行っていた、ある東証プライム上場企業との共同研究だそうだ。

「相手は、美顔器で有名な、ヤーマン株式会社です。吉崎氏は23年から、同社の美顔器に搭載する新技術の効果を実証する共同研究も手掛けていた」(引地)

 24年7月には、ヤーマンと東大が共同で、アメリカの学術誌に論文を掲載。これによると、「CERTEC」という、同社開発の熱電気刺激を24人の被験者の顔に試し、2カ月間で血流増などの変化を確認したのだという。

 東大皮膚科の「お墨付き」を得た形で発売された「CERTEC」搭載の同社の新美顔器は「美容技術を結集した唯一無二の最高峰」と打ちだされ、販売価格が38万円に上るものもあるというのだ。

 美容液でもアンチエイジングの機器でも、〇〇大学教授の推薦などと触れ回っているものがあるが、ああしたもののほとんどが、研究費などの名目で、メーカーからセンセイたちに袖の下が渡されているのかと思うと、うんざりする。

 だが、天下の東大医学部でもこうした「接待&賄賂」が日常化しているのだとすれば、同じことがあの大学で行われていないなど、信じることはできない。

 この世の中、信じることができるのはいったい何だろう? すべてを疑ってみることだが、なぜ、高市首相に投じた有権者は、彼女のことを疑わずに投票できたのだろう?

 今週最後の記事は、ポストの前中国大使のスキャンダルである。

 高市早苗・首相の台湾有事をめぐる発言以降、日中間で緊張が高まっている。そんななか、ポストは「中国が最も恐れる男」と呼ばれ、日中関係についての提言をメディアで続ける対中強硬派の垂秀夫・前駐中国大使が、妻子がありながら中国出身の女性A子と”二重生活”を送っている現場を掴んだというのである。

 垂は、A子が子どもとともに住むマンションに頻繁に通っていて、垂の二重生活は、現役の外交官時代から続いていた可能性もあり、もしそうだとしたら日本の外交にとっての重大リスクが放置されていたのではないかと、ポストは追及している。

 垂の経歴は、京都大学法学部を卒業して1985年に外務省に入省。外務省の「チャイナスクール」と呼ばれる中国語研修組として中国の南京大学に留学して、天安門事件(1989年)の混乱のなかで北京の在中国日本大使館の二等書記官に赴任して以来、約40年間、中国外交一筋に歩いた人物だという。香港領事や中国公使、同大使などとして中国には何度も赴任している。

 垂は自著『日中外交秘録』(文藝春秋=令和7年の文藝春秋読者賞を受賞している)のなかで、一等書記官時代の中国での情報活動をこう書いている。

〈(天安門事件後の)緊張が緩むにつれ、美女を多数揃えたいかがわしいカラオケ店やナイトクラブなども乱立するようになり、多くの日本人が出入りするようになっていた。私も中国人との付き合いでカラオケ店などにはよく行ったが、他の大使館員や日本人が使う店は情報漏洩や監視を用心して絶対行かなかった。あくまで中国人との人脈を深めるためと割り切っていたのである。

 人脈が広がるにつれ、深い内部情報や機密情報を得られるようになる。ときには内部文書を手にすることもあった。人脈を開拓すればするほど成果も出て、仕事がますます面白くなる〉

 ポストによれば、中国側はそうした垂の活動を警戒していたという。さらに垂が中国大使になると中国当局は監視を強めたそうだ。

 2021年の春節、北京市国家安全局の職員が日本大使館近くの日本料理店に監視カメラと盗聴器を仕掛け、垂大使の会食を盗聴。中国当局が店員に誓約書を書かせて口止めするなどの工作が行なわれた。垂自身が月刊誌『文藝春秋』の連載で明かした話だが、その記述により日本料理店経営者が外務省側から安否確認を受けるなどの騒動が起きたことをポスト(2025年12月22日発売号)が報じていたという。
 
 それほど中国当局にマークされていた垂が、もし現役外交官時代から個人的な交遊を持っていたと見られる中国出身女性と、現在はその女性のマンションに通う関係になっていたとすれば、安全保障上の大きな問題ではないかとポストはいう。真っ当な指摘である。

 垂は退官したとはいえ、中国大使時代を含めて日中間の多くの外交機密を知る立場で、現在も国家公務員法第100条の「職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする」という守秘義務を負っているのだから。

 たとえ、そのA子がスパイでなくても、ポストのいうように、中国は「国家情報法」で、国内、海外在住を問わずすべての中国国民に国家情報活動に協力する義務を負わせ、政府へ情報を提示する義務を定めている。

 仮に日本名も使うA子自身が義務を課される立場になくても、関係者などが中国当局から情報提供を求められれば拒否できない制度がある。

 外務省経済局長や駐オーストラリア特命全権大使を務めた外交評論家の山上信吾が「外交官の心得」をこう語っている。

「外交官が赴任先の国の女性と親密な関係を持つことについては米英のような友好国と中露のようないわば”潜在的敵国”とで扱いが変わる。敵対的な国の女性との関係については、まずハニートラップを意識しなければならない。女性が相手国の情報機関と関わりがなくても、日本の外交官と関係があることを相手国が知れば、関与してきますし、情報を得ようとしてくる可能性もある」

 私も中国へは何度も行っているが、私のような者でも、中国の女性と接触するときは細心の注意をはらったものだった。

 ましてや、大使は外務大臣の申出に基づいて内閣が任命し、天皇が認証する認証官である。

 また、垂が現役大使時代から中国出身女性と親交を持っていたことを外務省や官邸の内閣情報調査室、公安部門などが把握しながら放置していたのであれば重大な過失であり、知らなかったとすれば国家の安全保障と外交的危機管理体制の大きな欠陥である。大使を任命した歴代内閣、外務省の責任が問われる問題だとポストはいう。

 では、ポストが確認した垂とA子の「逢瀬」とはどんなものなのか。

 1月24日の20時過ぎ、都心のマンションに1台の軽ワゴン車が止まったという。助手席から40代くらいの女性が降りてマンションへ入り、車が駐車場に止まると、ハーフのジャケットに阪神タイガースのキャップをかぶった男性が降りてきて、あたりを警戒しながら、自分の持っているカギでマンションへ入ったという。

 翌日、男性は自宅へ帰っていったそうだ。

 その前の1月11日の夜も、その男性が来て一緒にマンションで過ごし、翌日、男性は自宅へ戻っていったそうである。

 不動産登記を見ると、このマンションはA子名義だそうだ。

 ポストは、中国に垂がいたとき、A子と一緒だったのかどうか、A子は何者なのかは把握していないようだが、数年から10年前ぐらいに彼女と垂が写っている写真を入手しているようだ。

 ポストはA子を直撃し、垂とは付き合っていないと否定したが、写真は本物であると認めたらしい。

 では、垂はどうか?

──A子さん(中国名)を知っているか。

「知らないです」

──あなたがA子さんと一緒にいるところを見ている。どんな関係か。

「ちょっと待ってくださいね。僕は民間人ですよ。民間人のプライバシーに関わる話を探るってことは、違法性、違法があるんじゃないですか?」

──大使時代から会っている?

「おっしゃってることが、全く意味がわからないですが、中国で私が大使時代にどうやって会うんですか? ちょっと言ってることが全くわからないし、大使時代の話はさることながら、今、私民間人ですよ。プライバシーに関わる話をやるということは、違法性があるということをわかった上でやられてるんであれば結構ですが、弁護士と相談してるんで、私から言えることはそれぐらいしかないんですけどね」

 その後、垂の弁護士から回答がきたという。

 垂はプライバシーが保護されるべき私人(民間人)で、プライバシー侵害ではないかというものだったようだ。

 中国大使という要職についていたのだから、全くの私人とは考えにくい。

 だが、この女性がどういう人で、どういう経緯で知り合ったのかが、この記事ではわからないので、取材としてはやや甘いといわざるを得ない。

 あくまでも「不倫疑惑」でしかないが、もっと深堀りしていけば、面白い読み物になると思うのだが。(文中一部敬称略)

文=元木昌彦

元木昌彦

編集者。「週刊現代」「FRIDAY」の編集長を歴任した"伝説の編集者"。

元木昌彦
最終更新:2026/02/10 11:00