ドジャースとソフトバンク、日米トップ球団から見る打線──「ユーティリティ性」が生み出す野手の布陣

今のプロ野球、あるいはメジャーリーグを見ていて、「なぜあのチームは常に強いのか」と疑問に思ったことはないだろうか?
ロサンゼルス・ドジャースや福岡ソフトバンクホークスを見て、「金があるから良い選手を揃えられるだけだ」と吐き捨てるのは簡単だ。
だが、その中身を解剖してみると、そこには明確な勝つためのプランニングが存在している。
現代のトップ球団が定義する野手の布陣とは何か。その本質を紐解いていこう。
一芸特化とユーティリティのバランス
限定的な役割しか持たない選手は要所で発揮しつつある。さらに、求められているのはユーティリティプレイヤーの選手だ。これは単なるバックアップではない。
怪我や不調、あるいは戦略的な休養に対して、チーム全体の攻撃力を1ミリも落とさずに対応するための戦術的な資産だ。
その象徴が、ドジャースとホークスだ。両球団に共通するのは、突出した一芸の選手だけを並べるのではなく、複数の役割を担えるユーティリティ性のある野手を重ねることで戦力を安定させている点にある。
「誰かが欠けたら終わり」という構造を作らない。これは偶然ではなく、長期戦を前提とした意図的なチームビルディングだ。
内外野を跨ぐユーティリティプレイヤーは、過酷なシーズンにおいて、チームの勝率を安定させるためのブースターなのである。
トップ球団は打率や本塁打、打点、OPSなどを重視しつつも、それを絶対指標にはしていない。見ているのは、長打率と出塁能力のバランス、そしてそれが打線全体にどう分布しているかだ。
上位で出塁し、中軸で返し、下位でも再びチャンスを作れる。重要なのは個々の数字ではなく、攻撃が循環する構造を作れているかどうかである。
相手投手に球数を投げさせて疲弊させ、甘い球を確実に仕留め、それを打線の中に隙なく配置する。この「面」での攻撃こそが、相手に絶望を与える。
打線とは「強打者の人数」ではなく、「得点期待値が途切れない並び」を意味するのだ。
特定のポジションを超えた守備の総合評価
守備力についても同様だ。単に失策数やUZRも重要だが、投手陣との相性・失点抑制貢献度・ポジショニング精度による総合評価でもある。
例えば、ゴロを打たせるタイプが登板するなら、守備範囲が広く、堅実な内野手を配置する。相手打者のデータに基づき、事前に「そこへ打たせる」ためのポジショニングをミリ単位で共有する。
守備とは、個人の身体能力の誇示ではなく、「失点を防ぐためのチェス盤」をいかに精密に完成させるか、という知力戦なのだ。
そのため、守備は「上手いかどうか」ではなく、投手陣を含めた失点設計の一部として捉えられている。
かつてユーティリティ選手は便利屋扱いされてきた。しかし、現在のトップ球団において、その価値は完全に変わっている。
ここがもっとも重要なポイントだが、ユーティリティ性は決して「便利屋」という意味ではない。それは、チームの資産を最大化する構造要素だ。
主力に少しでも疲労が見えれば、守備レベルを落とすことなく、最適な打撃コンディションの選手をパズルのように組み込む。強いチームほど、この柔軟性を「レギュラーの前提条件」としている。
「打てるだけ」「守れるだけ」の選手を固定して、硬直化したラインナップで戦うような愚は犯さない。
現在のドジャースやホークスを見て分かるように、野手のユーティリティ化は、打線と守備のバリエーションを豊かにし、チームの勝ち筋を増やす。実際のところ、近年はユーティリティ起用を戦術として落とし込むチームが増えたのだ。
このような戦略を組み立て、采配で実装し、マネジメントで再現性に変えた。データの裏にある選手の感情を読み取り、信頼を戦略へ翻訳する。その現場知こそが、令和の采配学の真髄である。
(文=ゴジキ)

