『ゴールデンカムイ 北海道刺青囚人争奪編』 山田杏奈は「×××先生」と地上波で叫ぶのか

アイヌの少女・アシㇼパさんの影響で、おみそ汁を見るとつい反射的に「オソマ」(アイヌ語のうんこ)という言葉が口から出そうになります。人気漫画『ゴールデンカムイ』の影響力は、はかり知れないものがあります。
そんな野田サトル氏の大ベストセラーコミックを実写化したのが、映画『ゴールデンカムイ』(2024年)です。WOWOWでは2024年10月~12月に連続ドラマ『ゴールデンカムイ 北海道刺青囚人争奪編』が放送されています。
3月13日(金)より劇場公開される映画『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』を前に、2月27日(金)の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)では『ゴールデンカムイ 北海道刺青囚人争奪編』特別編集版がオンエアされます。
通常の2時間枠で、1話47分~54分のドラマ9本分を流すことになるので、かなりのダイジェストになります。はたして、山田杏奈演じるアシㇼパさんはゴールデンタイムの地上波で、勝矢演じる牛山辰馬のことを「×××先生」と呼ぶのでしょうか?
原作を読まずに役づくりした萩原聖人
全31巻ある原作コミックの前半のクライマックスとなるのが『網走監獄襲撃編』ですが、今回の『北海道刺青囚人争奪編』は杉元(山崎賢人)、アシㇼパ(山田杏奈)、白石(矢本悠馬)が網走に向かうまでのロードムービーとなっています。
個性豊かなキャラクターたちが登場するのが、『ゴールデンカムイ』の魅力です。日露戦争で脳に損傷を負った鶴見中尉(玉木宏)、クールなスナイパーの尾形百之助(眞栄田郷敦)らに加え、アイヌの女・インカラマッ(高橋メアリージュン)、鶴見中尉ひと筋の鯉登音之介(中川大志)といった人気キャラたちも続々と登場することになります。
放送後の反響がひときわ大きかったのは、第2話「ニシン漁と殺人鬼」のメインキャラクターとなった辺見和雄(萩原聖人)です。萩原聖人は原作をあえて読まずに辺見役を演じたそうです。「原作未読」がXでトレンド入りするほどの話題になりました。
近年は名バイプレイヤーとして味のある演技を見せている萩原聖人ですが、20代のころは崔洋一監督の『マークスの山』(1995年)、黒沢清監督の『CURE』(1997年)といった名監督たちの珠玉のサスペンス映画で殺人鬼役を演じたことが知られています。何を考えているのか分からない、不気味な怖さがありました。
プロの役者たちに求めること
そんな萩原聖人が久しぶりに演じた殺人鬼役ですが、今回の辺見は自分が死の恐怖を感じることに快感を覚えるという、「超」がつくド変態です。原作に一度も目を通すことをせず、萩原聖人は脚本を読み込むことで見事に辺見の変態ぶりを表現してみせています。
つまり、萩原聖人の独自の役づくりと、原作ファンが期待していた辺見和雄像とが見事に一致、もしくはそれ以上のものになったわけです。
人気漫画の実写化は原作愛をアピールする俳優のキャラへのなりきりぶりが話題になりがちですが、それって原作漫画との答え合わせに過ぎないと思うんですよ。プロの役者なら、単なるコスプレ以上のものを見せてほしいものです。
今や人気漫画の実写化は、日本映画界の主流となっています。萩原聖人を見習って、プロを自認する俳優たちは「漫画断ち」するくらいの覚悟を持っていただきたいと思う次第です、はい。
かつて実在した「殺人ホテル」
第4話「殺人ホテルだよ 全員集合!」も、人気キャラが勢ぞろいする人気エピソードでしょう。杉元たちは札幌へと向かい、家永カノ(桜井ユキ)が経営するホテルに泊まります。アシㇼパが「×××先生」と呼ぶことになる牛山辰馬(勝矢)も同宿します。
妖艶な家永ですが、これまたとんでもないサディスティックな殺人鬼で、大騒動となります。
人喰いクマや脱獄王と同様に、この「殺人ホテル」も実在したものです。19世紀の米国で元祖シリアルキラーと恐れられたH・H・ホームズが建てた「殺人の城」がモデルとなっています。
H・H・ホームズは「シカゴ万博」目当てでシカゴに来る観光客を狙って、隠し部屋などのあるホテルを建てています。実際にはホームズが工費を未払いだったためにホテルとしては開業しなかったそうですが、ホームズが自供しただけで27人を殺害したことが分かっており、実際の犠牲者数は200人はいると言われています。
ヒグマ襲撃シーンに垣間見るWOWOWの予算事情
原作コミックは、過激なバイオレンス描写に加え、話数が進むにつれ、BLテイストも盛り込まれるなど、なんでもありの「闇鍋」的な展開となっていきます。地上波でどこまで放送できるか気になるところです。
劇場版『ゴールデンカムイ』では、ヒグマの襲撃シーンはCGを使ってかなりリアルで重厚なものに仕上げていましたが、一転して第5話「恐怖の棲む家」に登場するヒグマは着ぐるみとなっています。真田広之が若き日に主演した『リメインズ 美しき勇者たち』(1990年)や現在公開中の『ヒグマ!』を思わせるトホホ感の漂うものとなっています。おそらく、ドラマを制作したWOWOW側の予算の都合だと思われます。
第5話のメインキャストには渋川清彦と木村知貴を起用して、この回はインディペンデント映画っぽさをアピールしています。苦肉の策でしょう。
アシㇼパを演じる山田杏奈が「×××先生!」と叫ぶのかどうかも含め、そんなディテールをチェックしながら視聴するのも今夜の密やかな楽しみではないでしょうか。
(文=映画ゾンビ・バブ)
