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『ミスト』再映画化に疑問符…なぜハリウッドはリメイクばかり作るのか?「ネタ切れ説」の裏にある“台所事情”

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(写真:Getty Imagesより)

 ハリウッドに“リメイク旋風”が吹き荒れている。

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 米エンタメメディア『The Hollywood Reporter』は3月10日(現地時間)、マ・ドンソク主演の韓国映画『悪人伝』(2019)のハリウッドリメイク版に、『死霊館』シリーズのジェームズ・ワン監督が就任し、主演をマ・ドンソクが務めることを報じた。2月10日(同)には、『DEADLINE』が、小説家スティーブン・キング原作で“トラウマホラー”と名高い映画『ミスト』(2007)のリメイク決定を報じている。

 アニメからのリメイクも盛んだ。昨年は、アニメ映画『白雪姫』(1937)や『リロ・アンド・スティッチ』(2002)が実写版として生まれ変わったほか、アニメ映画『ヒックとドラゴン』(2010)の実写+CGのハイブリッド版が公開された。

 一度人気を獲得した作品を生まれ変わらせるリメイクには、賛否が避けられない。〈楽しみ〉〈おもしろくなりそう〉といった期待があがる一方で、いわゆる“元ネタ”ありきの制作姿勢に、〈どんだけネタ切れなんだって思っちゃう〉〈リメイクや続編頼りばかりで完全に先細りなハリウッド映画業界もオワコン〉などとため息をつくような声もある。が、実際に“リメイク祭り”の風潮は、映画界を衰退させているのか。

業績を見る限り「衰退」はしていない?

 業界事情に詳しい映画評論家・前田有一氏によると、業績面では「ハリウッドはまだまだ好調」とのこと。たとえば、米配給会社ビッグ5の1つである「ウォルト・ディズニー・スタジオ」の2025年の全世界年間興収は65億8000万ドル(約1兆円)で絶好調。またアメリカ市場全体の年間興収は、2024年の約85億ドル(約1兆3000億円)から1%増加の約86億ドル(約1兆3150億円)で着地している。

 にもかかわらず、「ハリウッドは衰退した」と揶揄されるのはなぜだろうか。

「事実、ハリウッドはリメイク作品を増やしていて、オリジナルの新作で『面白い』と思える作品はない。ゆえに、面白い作品がないのはリメイク作品ばっかりやっているからだ、と思うのも無理はありません。たしかにネタ切れ感があるように見えなくもないですが、それは企画力が落ちているからではなく、大元の原因はビジネスの規模拡大による1本あたりの制作費高騰です」(前田氏、以下同)

制作費が上がると、リメイクが増えるのか。

「かつては1本あたりの制作費が1億ドル規模でも『超大作』と言われたものですが、今や2億〜3億ドルかけるのが当たり前。映画は出資を募って制作されるので、投資家たちもミスりそうな企画にはお金を出したくない。その結果、完全新作で儲かるかどうかわからないリスキーなものよりも、リメイクや続編といった安全牌が候補にあがりやすくなる傾向があります」

 米の映画興収データベースサイト「The Numbers」によると、昨年公開された作品のうち、『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』や『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』が推定4億ドル、『スーパーマン』『ジュラシック・ワールド/復活の大地』『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』が推定2億〜3億ドルの制作費がかかっているとされる。

巨大な中国マーケットを意識するハリウッド

予算が上がったことで、マーケットを広げる必要も出てきた。

「超大作の制作費規模が2億や3億ドル前後と高騰し、それを回収するとなると、北米市場だけでは全く足りない。世界市場で回収する映画を作らなくてはいけなくなりました。じゃあ世界市場はどこなのか。中国です。中国市場はアメリカ市場と拮抗する大きさがあるので、近年では中国人をターゲットにしたリメイクや続編がよく作られます。

 わかりやすい例で言えば、『ジュラシック・ワールド』シリーズは、中国で圧倒的な人気を誇ります。彼らは、リアルな恐竜よりもデフォルメされた怪獣やモンスターが大好きなんですよね。北米では多少お客が入っても大ヒットはしないのですが、中国で異常に人気なので続編が作られるワケです。中国人の好みに合わせた作品を作った結果、いまや架空の恐竜が出てきて大暴れする話になっていますが(笑)」

 そんなハリウッドは、もはや日本市場は視野に入れていない、のだという。

「日本は市場がしょぼすぎて相手にされていません。日本も日本で、今は日本人好みに作った邦画のほうが元気でウケますから、買い付けないハリウッド作品も増えてきた。買い付けてもあっという間に上映を終えてしまう。お互いに相手にしていないわけですね。結果的に、日本にいると“なんか最近、ハリウッド作品あんまり見ないな”“人気ないな”という印象になってしまうんです」

『ドラゴンボール』の悪夢…「原作リスペクト」欠けがちなハリウッド版

 リメイクといえば、日本発のゲームやマンガ、アニメもたびたびハリウッドで実写化される。CAPCOMのサバイバルホラー『バイオハザード』シリーズを原作とした映画は、2002年のスタートから2017年の第6作まで続く人気シリーズとなった。

 また全世界の累計発行部数2億6000万部(2024年3月時点)を誇るマンガ『ドラゴンボール』は、2009年に『DRAGONBALL EVOLUTION』としてハリウッド進出。1995年には『北斗の拳』もハリウッドで実写化されている。

「日本のアニメは、1980年代ぐらいから海外でとにかく稼ぐようになった。今では、日本国内以上に売り上げているほどです。『ONE PIECE』『ドラゴンボール』などを制作している東映は、世界中にファンがいるぐらい知名度も高いので、ハリウッドでの企画にあがりやすいという背景もある。

 ただ、日本と違って、ハリウッドには基本的に作者や原作を尊重する文化があまりないんですよね。桁違いの使用料で映画化する権利を買って、暗黙の了解で原作者側に口を出させない。何をやっても、原作者が怒るに怒れないほどの巨額を払う。嫌なら断ればよいだけですからね。ただそうして作った作品は、結果的にファンからは不評を買うことも多いです」

 たしかに映画『バイオハザード』シリーズは、全世界で累計興収12億ドルのメガヒットを飛ばしたものの、原作のゲームファンからは“駄作”扱いされがちだった。そうした声もあってか、2022年には原作に忠実な実写化『バイオハザード: ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』として“リブート(再始動)”した。

「(前述)『ミスト』の原作者であるスティーブン・キングも、ハリウッド界の原作の扱いに思うところがあるようで、自分の作品が映画化される度に、『全然ダメだ!』『なってない!』とコテンパンに貶すのが恒例行事になっています(笑)」

「オリジナル版」を超えた「リメイク」作品

 さて、今後“リメイク祭り”の流れは加速していくのか。

「大前提として、コケるというリスク回避のためには、人気作のリメイクや続編を作る流れはもはや避けられません。ただ、クリエイターたちは皆リメイクであっても面白いものを作ろうという情熱を持って頑張っているので、必ずしもそれが『ハリウッドを腐らす』とは言い切れない。

 例えば、日本を代表する特撮映画『ゴジラ』(1954)は何度かハリウッドでリメイクされていますが、CG技術や立体映画の技術が加わることで、映像的にはオリジナル版よりもはるかにすごいものができる。1933年制作の『キング・コング』もそう。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのピーター・ジャクソン監督が、2005年に最先端技術を駆使して生まれ変わらせました。同作はアカデミー視覚効果賞や音響編集賞、録音賞の3部門で受賞しています。

 マイケル・ベイ監督がメガホンをとった『トランスフォーマー』(2007)も、元は1985年から日本で放送されていたアニメが原作です。シリーズ全体で7作品におよぶ超大作で、賛否はありますが、間違いなくリメイクによって新しい形を見せてくれた映画です」

「リメイク」に新しい価値を与える

「リメイク=安全牌」と思われがちだが、なかにはその方程式を覆すような企画もある。

「『ゴーストバスターズ』(1984)は2016年にリブート版が公開されていますが、メインキャラクターを男性3人から女性3人に逆転させるという振り切り方をしました。フェミニズムの考え方を取り入れた、まさに現代アップデート版といえます。

 また、実写版『リトルマーメイド』は、主人公のアリエルを白人から黒人に変更。こうなると、リスク回避どころか果敢にリスクを取りに行ったともいえる企画でしたが、〈人種差別とかではなく、オリジナル版通りの白人に演じてほしい〉という声が圧倒的に多く、炎上。結果的に、アジアでは全然伸びませんでした……」

 オリジナルを知っているファンにとっては、思わず身構えてしまうリメイク作品。賛否はあれど、少なくとも制作陣にとってはクリエイティブ精神を込めた“力作”なのだ。

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(構成・取材=吉河未布 文=町田シブヤ)

町田シブヤ

1994年9月26日生まれ。お笑い芸人のYouTubeチャンネルを回遊するのが日課。現在部屋に本棚がないため、本に埋もれて生活している。家系ラーメンの好みは味ふつう・カタメ・アブラ多め。東京都町田市に住んでいた。

X:@machida_US

最終更新:2026/03/21 22:00