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山田杏奈主演の新感覚ホラー映画が世界で話題!

ハリウッドも注目するホラークリエイター 『NEW GROUP』下津優太監督の“理系脳”

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山田杏奈と『うみべの女の子』の青木柚が共演した『NEW GROUP』

 クラスメイトが次々と巨大な「人間ピラミッド」に飲み込まれてしまう。そんなシュールな恐怖を描いたのが、下津優太監督の新感覚ホラー映画『NEW GROUP』だ。

『廃用身』が突きつける介護と善意の恐怖

 みんなと一緒に「人間ピラミッド」に加われば、一体感や高揚感に包まれ、ひとりでいることの孤独、将来の不安から解放される。友達が「人間ピラミッド」に組み込まれていくなか、山田杏奈演じる女子高生・愛は、心を激しく揺さぶられる。

 ごく平凡な高校を舞台に、現代社会にはびこる“同調圧力”の恐ろしさを「人間ピラミッド」としてシンボリックに描いた本作のユニークさは、韓国のプチョン国際ファンタスティック映画祭やスペインのシッチェス・カタロニア国際映画祭など海外の映画祭でも評判だ。劇中で使われる印象的な台詞「ぽー!」は、上映後に「ぽー!」コールが起きるほど観客を熱狂させている。国内での一般公開を前に、下津監督はハリウッドを拠点にする大手マネージメント会社と契約を結んだことも発表された。

 世界が注目する新鋭クリエイターの「恐怖のロジック」を探ってみた。

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撮影現場での下津優太監督。組み体操シーンが多いので安全には気を配った

体育会系で育った中学・高校時代

 下津監督は1990年の福岡県北九州市生まれ。中学、高校と体育会系の部活で過ごしたそうだ。筆者も福岡県育ちだが、九州は先輩後輩の上下関係が厳しく、運動会シーズンになると「人間ピラミッド」を中心とした組み体操の練習に熱心な学校が少なくない。そうした土地柄も作品に影響を与えたようだ。

下津優太(以下、下津)「体育の授業では集団行動の際に『やー!』と声をかけるんです(笑)。組み体操も経験しました。そんな学生時代の記憶と、ここ数年で日本全体を覆うようになったきな臭い空気を組み合わせてできた作品ですね」

 部活では怖い先輩に怒られないよう、失敗しないようにと考えるあまり、自分の意思を失い、思考停止状態に陥ることもあったと振り返る。本作に登場する巨大な「人間ピラミッド」は、規律と協調性を重んじる日本社会ならではの恐怖の象徴だと言えるだろう。

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突飛な発想の映画に、繊細な演技でリアリティをもたらした山田杏奈

CMディレクター時代に学んだノウハウ

 2021年に下津監督はKADOKAWA主催の「第1回日本ホラー映画大賞」を受賞し、同賞を受賞した短編映画を長編化した『みなに幸あれ』(2024年)で商業映画デビューを飾っている。古川琴音が主演した長編版『みなに幸あれ』は、「幸せと不幸の総量は一定」という都市伝説をモチーフにした社会批評性を感じさせるホラー寓話だった。

 組み体操の恐怖を描いた『NEW GROUP』も、独特な視点が盛り込まれている。物理の教師(前野朋哉)は「人間は二元論で思考することが習慣化したが、三元論で思考していれば、技術的にも道徳的にもさらに進化していたはず」と授業で語る。不条理ホラーながら、下津監督作品は「理系」っぽいロジックを感じさせる。

下津「確かに理系人間です(笑)。合理的に物事を考えるのが好きなんです。佐賀大学理工学部機械システム工学科を卒業し、卒業研究は流体力学についてでした。高校までは、人並みに話題の映画は観るくらいだったんです。大学の選択授業で映画の作り方を学ぶ講義があり、それで『映画って自分で作れるんだ』と知り、一眼レフを使って友達と自主映画を撮り始めました。東京なら映画監督を目指している若者はたくさんいますが、佐賀では珍しかったので、地元のサガテレビでかわいがってもらい、CMづくりをバイト的に請け負うようになったんです。大学卒業後は、福岡市でCM制作をしていました」

 CM制作にはクライアントにコンセプトを理解してもらうプレゼンがあり、短い秒数で視聴者の興味を引くアイデアと映像センスが必要となる。CM制作のキャリアは、下津監督の作品スタイルに大きく関わっているようだ。

下津「CMの仕事は映画監督になるには遠回りでもあったんですが、映像を撮る上での最低限の技術は身につけられたと思います。CMって、お金を出したクライアントのものなんです。なので、クライアントから頼まれた商品を、いかに魅力的に映し出すかが求められる。絵コンテを用意したり、出演者たちの衣装はどんな色にするか、音楽は何を使うのかなど、コンセプトを事前に決めておくことも重要です。映像作家としての個性を出すことよりも、クライアントの要望に応えたいという気持ちが自分は強いかもしれません」

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権威的な校長(ピエール瀧)が、愛(山田杏奈)たちを追い詰めていく

おかしな環境に俳優たちを放り込む

 2016年、26歳で東京に上京した下津監督は、Jホラーブームを起こした『呪怨』(2003年)の清水崇監督が選考委員長を務める「日本ホラー映画大賞」に挑むことになったわけだが、あまりJホラー系の映画は観ていないと打ち明ける。

下津「清水監督の『呪怨』、中田秀夫監督の『リング』(1998年)は観ましたが、そのくらいなんです。一般人レベルですね(笑)。でも、Jホラーに染まりきっていないところが逆に評価されたのかもしれません。『ゲット・アウト』(2017年)などを撮ったジョーダン・ピール監督が好きです。『聖なる鹿殺し』(2017年)のヨルゴス・ランティモス監督もいいですね。M・ナイト・シャマラン監督も好きです。いつも予告編が面白いし、設定が目を引きますし、短い時間で楽しませてくれますよね」

 主演の山田杏奈は『ゴールデンカムイ』(2024年)などのメジャー大作に出演する一方、バイオレンスサスペンス『ミスミソウ』(2018年)や柳田國男の『遠野物語』を原案にした『山女』(2023年)に主演するなどエッジの効いた作品でも活躍している。組み体操が襲ってくるという本作の奇抜なアイデアに惹かれて出演を決めた山田だが、撮影はかなりハードだったと語っている。

下津「俳優の方たちに、自分は細かく演出するタイプではないですね。雑な言い方をすると、環境だけこちらで整えて、そこへ放り込むという感じです。山田さんはおかしな状況にどんどん追い込まれていったので、肉体的にも精神的にも大変だったと思います。『みなに幸あれ』に主演していただいた古川琴音さんも『ヘトヘトになった』と語っていましたね」

 追い詰められていく女優たちが見せるリアルな表情も、下津監督作品の見どころとなっている。

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転校生の優(青木柚)と愛は「組み体操」で立ち向かおうとするが……

ハリウッド向けの新作を現在執筆中

 長編デビュー作『みなに幸あれ』が米国誌「ローリングストーン」の「2025年ベスト映画20選」に日本映画で唯一選出(第14位)された下津監督は、今年5月にハリウッドを拠点とするマネージメント会社「カプラン・ペローン・エンターテイメント」と映画監督、脚本家として契約を結んだことが発表された。国内は『ゴジラ-1.0』(2023年)などで知られる制作プロダクション「ロボット」と契約。現在、ハリウッド向けに新作の脚本を英語に翻訳しながら執筆しているという。

下津「脚本が完成したら、ハリウッドのプロデューサーたち100人くらいに送るそうです。100人に送れば、20人くらいは興味を持ってくれるだろうとマネージメント担当者は話しています。そこでピッチと呼ばれる段階に進み、プロデューサーらを相手に映画の内容をプレゼンすることになります。誰か1人でも手を挙げてくれたら、ようやくハリウッドの入り口に立てるーという感じでしょうね」

 世界に挑戦する自身の状況を、笑顔で説明する姿は頼もしくもある。下津監督は「理系人間」ぶりを感じさせるこんなエピソードも語ってくれた。

下津「分析するのが好きなんです。例えば、ホラー系の映画を分布図にして並べるんです。海外ではアリ・アスター監督やランティモス監督らの新感覚のホラー映画が人気ですが、日本ではまだそちら系の作り手があまりいません。こっちのジャンルは空いているなぁ……とか考えるのが好きですね(笑)。Jホラーを目指すなら、清水監督や中田監督がいるわけで、残りの椅子を他の監督たちと争うのは大変。それなら、新しい椅子を作ればいいんだというのが僕の発想なんです(笑)」

 7月3日(金)から始まる『ストレンジ 伊藤潤二の夜も眠れぬ奇妙な話』(テレビ東京系)への参加も決まり、撮影が進んでいるところだ。不気味さとユーモアが混在する下津監督の作風は、人気漫画家・伊藤潤二の描くシュールな世界観にもマッチするに違いない。

 新しい才能はハリウッドでも開花するのか。まずは『NEW GROUP』の日本公開を、「ぽーっ!」コールで盛り上げたい。

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映画『NEW GROUP』
原案・監督/下津優太 脚本/下津優太、佐原百子 
出演/山田杏奈、青木柚、駒井蓮、木下暖日、佐々木ありさ、ロジャース歌乃、細井じゅん、松本亮、足立智充、坂倉なつこ、清水崇、前野朋哉、ピエール瀧 
配給/KADOKAWA 6月12日(金)より全国公開
(C)2026映画「NEW GROUP」製作委員会
https://newgroup-movie.jp/

下津優太(しもつ・ゆうた)
1990年福岡県生まれ。CM、MVの企画・制作をする傍ら、短編映画を制作。「ショートホラーフィルムチャレンジ」大賞、「第1回YouTubeホラー映画祭」特別賞などの受賞歴あり。2021年に「第1回日本ホラー映画大賞」を受賞し、同名短編映画を長編化した『みなに幸あれ』(2024年)で商業監督デビューを果たす。同作はプチョンファンタスティック国際映画祭で最優秀アジア映画賞など多くの映画賞に輝いた。

※6月30日(火)発売の「サイゾー」8月号では、世界的なトレンドとなっている「新感覚ホラー映画」を特集し、『NEW GROUP』についてさらに深掘りします。こちらも、ぜひご覧ください。

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(取材・文=長野辰次)

長野辰次

映画ライター。『キネマ旬報』『映画秘宝』などで執筆。著書に『バックステージヒーローズ』『パンドラ映画館 美女と楽園』など。共著に『世界のカルト監督列伝』『仰天カルト・ムービー100 PART2』ほか。

長野辰次
最終更新:2026/06/10 22:00