波瑠『アイシー』木村拓哉『教場0』……なぜフジの刑事モノは「ツッコミどころ満載」なのか? 元P明かすチェック体制
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2月25日に第6話が放送されたフジテレビ系連続ドラマ『アイシー~瞬間記憶捜査・柊班~』(火曜午後9時/以下、『アイシー』)。ネット上ではシリアスな雰囲気やキャストの演技に賛辞が集まる一方、事件の展開に対して「ツッコミどころ満載」との指摘もあるようだ。
『アイシー』に「ツッコミどころ多すぎ」の指摘も
『アイシー』は、“カメラアイ”と呼ばれる瞬間記憶能力を持つ女性刑事・柊氷月が、過去のトラウマと向き合いながら個性豊かな刑事たちとともに事件解決に奮闘する刑事ドラマ。キャストには主演の波瑠のほか、山本耕史、SixTONES・森本慎太郎、倉悠貴、超特急・柏木悠がメインの刑事役として名を連ねる。
初回から平均世帯視聴率6.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と上々の滑り出しを見せた『アイシー』。ネット上では「シリアス路線の雰囲気はいいけど、展開にツッコミどころが多すぎて戸惑う」といった声も散見されるが、実際、『アイシー』には「ん?」と違和感を覚える展開が時折見られる。
例えば、監禁事件が描かれた第1話では、誘拐した女性を長年監禁していた男が、過去に女性物の下着を万引きしてスーパーの店長から目をつけられていたにもかかわらず、なぜか同じスーパーに通い続けていた上、懲りずにその店で生理用ナプキンを購入。この会計時、スーパーの店長は「これ何に使うつもり?」と問い詰め、夜になると男の自宅付近のゴミ置き場へ行ってゴミを漁る……という暴挙に出ていた。
こうした展開に、SNS上では「なんで犯人はこのスーパーに行き続けるの?」「客も店長も行動が無茶苦茶すぎる」といった指摘が続出していた。前出の記者が振り返る。
「第3話でも、匿名性に気を付けているはずの人物が自分の体の一部をSNSのプロフィール画像に使用しているなど、『なぜ?』と言いたくなる展開が目立ちました。このほかの話でも、思わずツッコミたくなる展開が多々見られる『アイシー』ですが、フジの刑事ドラマといえば、2023年4月期の木村拓哉主演『風間公親-教場0-』も“ツッコミドラマ”として広まっていただけに、『アイシーを見て教場0を思い出した』『なんでフジの刑事モノはツッコミどころが多いのだろう?』という声も見られます」
「展開がおかしい」ドラマもそのまま放送
フジの刑事ドラマに限らず、展開に引っ掛かりを覚えるテレビドラマというのは時折見られるが、そのあたりのチェック体制は局内でどうなっているのだろうか?
元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏に話を聞くと、「コンプラ的にアウトでなければ、展開がおかしいかどうかの判断は監督やプロデューサーに任せられ、通常チェックされることはないですね。あまりに“スットコ展開”すぎて俳優さんが『こんなのやりたくない』とでも言わない限り、通常チェックによって『展開がおかしいからダメ』というようなことにはならないと思います」という。
また、同氏によると、ドラマ放送前に入るチェックは基本的に大きく分けて以下の3つだとか。
①コンプラチェック
倫理的な問題や放送に適した内容になっているかどうかなどをチェック。コンプライアンス担当部署や、制作担当部署の上層部などが脚本をチェックしたり、試写でチェックする。
②営業担当者による試写
スポンサー企業にとって不都合な内容になっていないかをチェック。例えば、画面にスポンサーのライバル企業の商品やロゴなどが映り込んでいないかや、ストーリー的にスポンサーの商売を邪魔しないか、ライバル企業の宣伝に関わっている俳優などが出演していないかなどをチェックする。
③俳優の事務所や俳優自身によるチェック
俳優にとってやりたくないシーンや言いたくないセリフがないか、チェックする。
「ご都合主義だろうが……」テレビ局側の事情
なお、『アイシー』や『教場0』のようなシリアス路線の刑事ドラマは、意図的にツッコミどころを作っているとは思いにくいが、鎮目氏によると「そうとも言い切れない」という。その理由について同氏が続ける。
「最近はSNSで話題にならないとドラマは当たらないので、良くも悪くも多少SNSがザワついてくれないとヒットが望めないのを制作側も強く認識しているからです。『ちょっと話題になってくれればラッキー』というような感じで『ツッコミ狙い』もないとは言えないのです。
それとは別の話ですが、そもそも刑事モノは、無理な展開になってしまいがちな『構造的な理由』もあるのです。というのも、まず刑事モノは通常1時間枠で『事件が起きる→怪しい人物がいろいろ出てくる→捜査が進む→意外な展開が起きたり捜査が難航したりする→どんでん返し→解決』のように目まぐるしくいろいろな要素を詰め込まなければならないので、どうしても時間が足りなくなりがちです。そんな中で主役級の俳優さんの見せ場も作らなければならない。
となると、ある程度こまごまとした展開や厳密な設定は『吹っ飛ばしていかないと間に合わない』ということになりがちです。いくらご都合主義だろうが、ツッコミが入ろうが、『さっさと話を進めて、見せ場を早く長く見せたい』という心理から、多少の違和感には目をつぶり、確信犯的にドラスティックに展開させている部分もなきにしもあらずです」
『教場0』と同様に、展開が物議を醸しながらも高い人気を誇る『アイシー』。第7話以降の展開にも注目したい。