広瀬すず、杉咲花、清原果耶主演『片思い世界』、賛否分かれるワケ――映画興行収入ランキングトップ10


最新の全国週末興行成績ランキング(興行通信社調べ、4月4~6日)で、アニメーション作品『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』(3月7日公開)がV5を獲得した。
広瀬すず、杉咲花、清原果耶主演『片思い世界』、初登場3位も賛否
4月7日発表の全国週末興行成績ランキングで首位をキープした『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』は、「映画ドラえもん」シリーズ最新作で“絵の世界”が冒険の舞台。週末3日間で観客動員26万3000人、興行収入3億2300万円を記録し、累計成績は動員317万人、興収37億円を超えた。
そんな同作と同じ日に上映を開始し、やはり5週連続で2位につけているのがミュージカル・ファンタジー映画『ウィキッド ふたりの魔女』(シンシア・エリヴォとアリアナ・グランデのダブル主演)。週末3日間で動員11万6000人、興収1億9400万円をあげ、累計では動員167万人、興収26億円を突破している。
1、2位の強さが際立つ中、今回は3位に広瀬すず、杉咲花、清原果耶がトリプル主演を務める『片思い世界』、4位になにわ男子・長尾謙杜の劇場映画初主演作『おいしくて泣くとき』が初登場(いずれも4月4日公開)。これにより、前回まで2週連続で3位だったディズニーのミュージカル・ファンタジー『白雪姫』が5位に順位を下げた。
『片思い世界』は、『花束みたいな恋をした』(2021年)の土井裕泰監督と脚本家・坂元裕二氏が再タッグを組んだオリジナル作品。東京の古い一軒家で共同生活を送る相良美咲(広瀬)、片石優花(杉咲)、阿澄さくら(清原)の、それぞれが抱える“片思い”が描かれている。
全国368スクリーンと大規模で封切られ、初日から3日間で動員8万1000人、興収1億1600万円をマーク。鑑賞済みのネットユーザーの間では「とても良かった」「キャストが素晴らしいから引き込まれていく」「ちょっと複雑な話で感情移入しにくい」など賛否両論だ。
また、「このタイプの坂元裕二作品が刺さる人もいる」「『片思い世界』を楽しめる人と、『ファーストキス』のほうが好きって人もいると思う」という声もあるように、同じ坂元氏による脚本で2月7日から大ヒット上映中の『ファーストキス 1ST KISS』(松たか子主演)と比較する声も。
今回の成績について、映画ライターのヒナタカ氏は以下のように語る。
「決して悪い数字ではありませんが、『ファーストキス 1ST KISS』は9週目の今回も9位にランクインしており、累計興収は26億2000万円を突破。公開初日から3日間で約2億5400万だったことと比べると少し物足りない印象もあります。実は『片思い世界』は撮影中に土井裕泰監督はじめとするスタッフが乗っていた車が大事故に遭い、大幅な公開延期を余儀なくされていたんです。『ファーストキス』とは2カ月以上公開日が離れているとはいえ、それでもこうして競合してしまったのは、送り手だけではなく、作品に期待を寄せているファンの心情としても、不本意なことだったのかもしれません」
また、同氏はこれからの興行に影響しそうなのは、累計38億1000万円の大ヒットとなった『花束みたいな恋をした』の監督・脚本家コンビの最新作でありながらも、そちらとは意図的にせよ「まったく異なる作風になっている」(同)点にあるとも指摘する。
「『作品の“核”となる要素が宣伝では隠されている』という“ネタバレ厳禁”な要素も含めて『賛否がかなり分かれている』ように思います。良くも悪くも『こんな映画だとは思わなかった』という意見が相次いでおり、口コミ効果としてはポジティブにもネガティブにも働くため、今後の客足の伸びはなかなか『読めない』でしょう」(同)
4位『おいしくて泣くとき』、なにわ男子・長尾謙杜の15歳役は「違和感なし」
一方、今回4位の『おいしくて泣くとき』は小説家・森沢明夫氏の同題作品(角川春樹事務所)を実写化。幼い頃に母を亡くした風間心也(長尾)と、その同級生で家に居場所がない新井夕花(當真あみ)が次第に距離を縮めるも、“ある事件”を機に夕花が姿を消してしまう。それでも心也は彼女を信じて待ち続け……というラブストーリー。
前出のヒナタカ氏は、368スクリーンで最大規模の『片思い世界』が同日公開かつ、さらに『山田くんとLv999の恋をする』『お嬢と番犬くん』『女神降臨 Before 高校デビュー編』など、中高生に訴求力のある恋愛要素が強い邦画が複数公開されている中で、「253スクリーンと中規模公開の作品としてはなかなか健闘している」と評価する。
ネット上には、「素敵な映画ですごく泣いた」「長尾くんってあんな繊細な演技ができるんだ」などと評価する声が上がっており、やはり、主演の長尾ファンを中心に支持する声が寄せられている。
「現在22歳の長尾が演じるのは15歳の少年ですが、その役柄に『全く違和感がない』ことも含めて絶賛されています。また、今作はディーン・フジオカ演じる45歳の男性が、30年前の苦しくも愛おしい出来事を回想する、『大人の目線に立った』物語でもあり、長尾ファンに訴求するのは言うまでもなく、他の恋愛映画とは少し差別化もされている、大人に響く内容になったからこそ、好スタートにつながり、かつ好意的な感想が多く届いているのでしょう。ヒロインの當真あみもアニメ映画『かがみの孤城』(22年)での声の演技が評価されるなど、活躍の場を広げているので、これからも期待したいですね」
『映画 ヒプノシスマイク』、7週目で自己最高の6位に浮上! 興収は10億突破
そのほか注目は、6位のアニメ作品『映画 ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』(2月21日公開)。劇場用映画としては日本初となる観客参加型「インタラクティブ映画」(同作ではラップバトルの勝敗が観客のスマホアプリによる投票で決まる)だけに設備の問題もあってか、全国85スクリーンという小規模上映で奮闘中だ。
これまで8位(1週目)、トップ10圏外(2週目)、9位(3週目)、トップ10圏外(4週目)、10位(5~6週目)と推移し、今回は公開7週目にして自己最高の6位に。4月7日には、「【映画】ヒプノシスマイク-D.R.B-」公式X(旧Twitter)が「ヒプムビ 興行収入10億円突破」を祝し、新トレーラーを公開。
同作を手がけた辻本貴則監督も、4月8日に自身のXで「インタラクティブ映画で特殊な上映方式……限られた劇場館数で全国網羅できず申し訳ない状況の中、10億は本当に感激感謝!」と喜びを伝えていた。
全国映画動員ランキングトップ10(4月4~6日、興行通信社調べ)
1位:『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』
2位:『ウィキッド ふたりの魔女』
3位:『片思い世界』(初)
4位:『おいしくて泣くとき』(初)
5位:『白雪姫』
6位:『映画 ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』
7位:『山田くんとLv999の恋をする』
8位:『ミッキー17』
9位:『ファーストキス 1ST KISS』
10位:『教皇選挙』