『おそ松さん』第4期放送開始も話題にならず……業界関係者が指摘する“オワコン化”の要因


7月8日深夜より、テレビアニメ『おそ松さん』第4期(テレビ東京系)の放送がスタートした。ネット上では「オワコン」との声も聞こえてくる同作について、業界関係者に話を聞いた。
アニメ第4期放送開始の『おそ松さん』の概要
『おそ松さん』は、漫画家・赤塚不二夫氏が、1962年に「週刊少年サンデー」(小学館)で発表した名作ギャグ漫画『おそ松くん』を原作に、大人に成長した松野家の6つ子の日常を描いたテレビアニメ。
赤塚氏の生誕80年(1935年に誕生、2008年に死去)を記念し、2015年10月~16年3月にテレビアニメ第1期が制作され、6つ子役に櫻井孝宏(おそ松)、中村悠一(カラ松)、神谷浩史(チョロ松)、福山潤(一松)、小野大輔(十四松)、入野自由(トド松)といった女性人気の高い声優を起用したこともあり、既存の原作ファンだけでなく新規ファンの獲得に成功した。
「グッズ展開や企業タイアップ、コラボレーションも活発に行われるなど社会現象となり、アニメ第2期(17年10月~18年3月)、第3期(20年10月~21年3月)が放送され、劇場版も現在までに3作公開されています。また、漫画、小説、ゲーム、パチンコというようにメディアミックス展開も次々行われ、16年秋には『おそ松さん on STAGE ~SIX MEN’S SHOW TIME~』のタイトルで舞台化。22年3月にはSnow Man主演の実写映画が公開され、26年新春にはその第2弾としてAぇ! group主演作の公開が控えています」(声優ライター・勅使河原みなみ)
今回のアニメ第4期では、22年7月公開の劇場版『おそ松さん~ヒピポ族と輝く果実~』で監督を務めた小高義規氏が、初めてテレビシリーズでメガホンを取ることに。シリーズ構成は過去作全てに携わってきた松原秀氏、キャラクターデザインは3期から担当している安彦英二氏が手掛け、キャスト陣もそれぞれ続投。『おそ松さん』チームが再集結した。
『おそ松さん』が“オワコン化”といわれるワケ
一大ブームを巻き起こした大ヒットシリーズの新作とあって、1話を見たファンからは「相変わらず面白かった」「6つ子が可愛かった」「これから毎週火曜日が楽しみ」といった好意的な声が上がっている一方で、アニメ全般のファンからは「全然話題になってない」「なんか勢いなくなったな」「4期大丈夫?」と冷ややかな反応も多い。
「1期放送終了から2期の放送まで1年半のブランクが空いたことで、ファンの熱が冷めてしまったのか、1期のDVD&Blu-rayの第1巻は11.5万枚を売り上げ、『オリコン年間映像ランキング2016』(集計期間:15年12月28日付~16年12月19日付)の『アニメ・特撮DVD+BD部門』で年間1位を獲得するほどの人気ぶりだったのものの、以降は売り上げが大幅に減少したといわれています。そのため、ネット上のアニメ好きの間では、かねてより“オワコン化”を指摘する声も多かったんです」(前出・同)
その背景について、制作会社関係者は以下のように分析する。
「『おそ松くん』の続編として制作された『おそ松さん』ですが、スピンオフとして話を広げるにも限界があり、作品の展開や内容がマンネリ化していきました。1期で熱狂していたファンも徐々に離れていった印象ですし、4期まで続いてはいるものの、コンテンツ自体にかつての勢いは感じられません。有名声優を起用することで話題性を狙った節もありますが、そのキャスト陣の人気にも徐々に陰りが見え始めています。業界全体としても人気の中心が次世代・若手へとシフトしつつある中、メインキャストの多くは40代後半〜50代。1期放送から10年がたち、出演声優の人気も落ち着いたことに加えて、おそ松役の櫻井が不倫スキャンダルを起こしたことも、イメージ失墜に拍車をかけました。こうした状況が “オワコン化”の要因となっていると考えられます」
『おそ松さん』4期放送も、声優陣にとっては「大きなビジネスにはなっていない」?
なお、『おそ松さん』はこれまでさまざまなタイアップ企画を行ってきた。今期もキャストの直筆サイン入りグッズが当たる「DHC持続型シリーズ ビタミンサプリ」とのコラボキャンペーンを7月31日まで実施しており、特設サイトでは声優陣が声をあてた告知動画も公開されている。10年続いているシリーズ作だけに、出演者にとってはそれなりに“うまみ”もあると思われるが……。
「例えば、コンビニの店内放送による宣伝が行われる場合、アフレコをすれば出演料(ギャラ)は発生します。しかし、それに対して継続的なロイヤリティが支払われることはありません。CMなどに関しても同様で、出演すればギャラは支払われますが、あくまで一回限りの報酬にとどまります。人気アニメのコラボカフェの中で流れる音声コンテンツに関しても、ギャラは発生しますが、せいぜい10万円台が相場。また、関連イベントなどで登壇したとしても、1劇場あたりの報酬は同程度で、それ以上の収入は期待できません。『おそ松さん』きっかけで新たにファンが増えた……という恩恵は受けたでしょうが、声優陣にとって大きなビジネスにはなっていないのが現状です」
かつては一大ブームを巻き起こしたものの、現在は下火になった『おそ松さん』。第4期で再び人気に火をつけることができるのか、今後も注目していきたい。
(取材・文=サイゾーウーマン編集部)