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【24年秋ドラマ】『海ダイヤ』先週で終われば大団円だった…King Gnuの主題歌「ねっこ」がハマりすぎ問題

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神木隆之介(写真/Getty Imagesより)

 視聴者の悲鳴が聞こえてくるようでした。幸せの絶頂から、不幸のどん底へ。神木隆之介主演の日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)は、運命の日「1964年8月17日」に向かって突き進んでいます。

【海ダイヤ】斎藤工の退場劇

 先週放映された第6話、鉄平(神木隆之介)たちが暮らす「軍艦島」は幸せムードでいっぱいでした。鉄平の兄・進平(斎藤工)は、元歌手のリナ(池田エライザ)と事実婚となり、2人の間に男の子が誕生します。大戦中に長崎で被爆した百合子(土屋太鳳)ですが、幼なじみの賢将(清水尋也)から指輪を渡され、島で挙式することになります。

 みんなの幸せに煽られるかのように、鉄平は食堂の看板娘・朝子(杉咲花)に「朝子が好きだ」とついに告白。朝子はちょっと涙ぐみながらも笑って「わかった」と鉄平の気持ちを受け入れました。3つのカップルが次々と成立したことに、SNSは盛り上がり、#海に眠るダイヤモンド がトレンドワード入りしています。

 世帯視聴率は6.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区調べ)と先週の7.4%からさらにダウンしてしまった『海ダイヤ』ですが、考察系ドラマとしてネットユーザーたちを大いに楽しませています。従来の視聴率という物差しでは、テレビの面白さを測ることができない時代になっていることを痛感させます。

軍艦島の運命が変わった1964年8月
 第6話が最終回だったら、視聴者は大喜びしたことでしょう。こんな大団円エピソードはそうそうありません。新垣結衣&星野源共演ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)を大ヒットさせた脚本家の野木亜紀子ですが、今回の『海ダイヤ』は甘い終わり方にはならなそうです。

 第6話の本編終了と同時に第7話の予告が流れ、軍艦島の運命が変わった1964年8月17日、炭坑内火災事故が起きることが告げらました。

 死傷者が出た大事故で、この事故がきっかけで軍艦島は衰退へと向かうことになります。鉄平たちも、事故に巻き込まれることになりそうです。第6話があまりにもハッピーすぎたために、第7話は悲劇へと転落していくことを覚悟する必要がありそうです。

 出産を控えていたリナが語っていた「今の幸せの下には、たくさんの犠牲がある」という言葉が、重くのしかかります。

主題歌「ねっこ」の歌詞が、物語の世界観にぴったり
 それにしても、第6話のエンディングはお見事でした。鉄平が朝子に告白するシーンで、King Gnuが書き下ろした主題歌の「ねっこ」がドンピシャのタイミングで流れました。

「ささやかな花でいい 大袈裟でなくていい ただあなたにとって価値があればいい」

 派手なことは苦手だけど、平凡な日常生活を愛する鉄平と朝子。そんな2人がお互いに惹かれ合う心情が、曲の歌詞からもありありと伝わってきました。

 敗戦でボロボロになりながらも、日本が奇跡の復興を遂げて高度経済成長できたのは、軍艦島のような危険を伴う炭鉱で汗水流しながら働く人たちがいたからです。島を愛する鉄平や朝子たちにピッタリの主題歌です。

大ヒット映画『花束みたいな恋をした』へのアンサーソング
 King Gnuの「ねっこ」を聴くと逆説的に思い出されるのが、TBSの土井裕泰監督が撮った恋愛映画『花束みたいな恋をした』(2021年)です。菅田将暉と有村架純が共演した『花束みたいな恋をした』は、口コミで上映館数を増やし、興収38.1億円の大ヒットを記録しています。

 社会人になったばかりの恋人たちの5年間にわたる同棲生活を描いた『花束みたいな恋をした』ですが、仕事が忙しくなるにつれてすれ違いが多くなり、お互いに相手のことを大切に思いながらも別れることになってしまいます。花束みたいに美しい恋愛だったけど、地面に根を張ることはできなかった……というアイロニカルなタイトルでした。

 根っこが張れなかった現代の若い恋人たちの悲恋を描いた『花束みたいな恋をした』ですが、塚原あゆ子監督らが演出している『海ダイヤ』は、一種のアンサーソングのように感じます。

 軍艦島は岩礁の上に造られた半人工島です。土がない軍艦島では、草花を育てることができません。そんな殺風景な島で朝子と鉄平は「園芸クラブ」を結成し、団地の屋上を使った「屋上庭園」づくりに努めます。

 実際に小さな水田まで造営されていますが、長く続くことは叶いませんでした。若き日の朝子と鉄平の努力は、実らなかったのでしょうか。

 現代パートでは、朝子の半世紀後の姿であるいづみ(宮本信子)が大きな企業を経営しています。いづみの会社がどんな事業内容なのかまだはっきりとは明かされていませんが、軍艦島で果たせなかった緑化事業に関する会社である可能性があります。

 恋人同士として過ごした時間は短かった鉄平と朝子ですが、コスモスの種が残されていました。鉄平にそっくりな玲央(神木隆之介:二役)の手によって蒔かれ、コスモスの種は半世紀を経てようやく芽を出すことになります。

 地面からちょこっと顔を出したコスモスの芽に、いづみは、いや朝子は鉄平の面影を感じているようです。鉄平から朝子へ、玲央からいづみへのささやかな愛を感じさせたシーンでした。

ベテラン俳優・國村隼のいい仕事ぶり

 若いキャストたちの恋愛エピソードが盛りだくさんだった第6話ですが、鉄平の父・一平を演じたベテラン俳優の國村隼も実にいい仕事ぶりでした。炭鉱員たちとの間に溝が生じていた炭鉱長の辰雄(沢村一樹)の家を、一平は一升瓶を持って訪ねます。辰雄の妻は島を出ており、寂しい正月を迎えていることを知っての気遣いでした。

 一平の優しさに触れた辰雄は心を開き、息子の賢将が一人前に成長できたのは、一平や島のおかげだと感謝の言葉を口にします。國村の出演シーンはあまり多くはありませんが、こんな場面をきっちり締めてくれることで、『海ダイヤ』は大人も楽しめるドラマになっているんだと思います。

 炭鉱火災事故を描く第7話、炭鉱員としてのプライドが誰よりも高い一平の言動が注目されます。そして、第5話で殺人を犯した進平、炭鉱の閉山式の記念写真に写っていなかった鉄平の行方はどうなるのでしょうか。今夜放送の第7話、鉄平たち一家は風雲急を告げることになりそうです。

(文=長野辰次)

【海ダイヤ】軍艦島の岐路1964

最終更新:2024/12/25 11:58