保守化する『好きなアナウンサーランキング』 イケメン&キラキラの時代は戻ってこないのか
毎年恒例の『好きな女性アナウンサーランキング』『好きな男性アナウンサーランキング』(オリコン・モニターリサーチ調査)が発表された。上位の顔ぶれを見ると、視聴者の“安定”志向が透けて見え、若いイケメンやアイドル的なアナウンサーがいないことに気づく。
女性アナでは、昨年殿堂入りを果たした弘中綾香アナ(テレビ朝日)に代わり、『ラヴィット!』のMC・田村真子アナ(TBS)が初の1位。男性アナでは、フリーの羽鳥慎一アナが1位に返り咲き、2位には『ラヴィット!』でB’zの稲葉浩志のモノマネを披露することも多い南波雅俊アナ(TBS)がランクイン。また『ラヴィット!』でゲームコーナーの実況を担当する赤荻歩アナ(TBS)が、6位に初ランクインした。
『ラヴィット!』勢の躍進が目覚ましいが、もうひとつ大きなトピックは、入社1年目の上垣皓太朗アナ(フジテレビ)が好きな男性アナランキングの4位に初登場したことだ。『めざましテレビ』を担当する伊藤利尋アナ(5位)、軽部真一アナ(9位)を上回り、フジテレビの男性アナとして最上位となった。
昭和歌謡、俳句、地図をもって街歩きなど渋い趣味を持ち、新人らしからぬ落ち着いた雰囲気を醸し出す上垣アナ。タレント経験があったり、親族に有名人がいたりする話題性の高い新人アナとは一線を画す。
新人でいきなりこのランキングに食い込むは、異例中の異例だ。しかも近年の男性アナといえば、爽やかなイケメンであったり、筋肉系のスポーツマンタイプであったりと、いうなれば“クラスの1軍”のようなタイプが多かった。しかし、上垣アナは必ずしもそういうタイプではない。
「上垣アナはどちらかといえば、中高年以上の視聴者が応援したくなるタイプ。また、他のランクインした男性アナを見ても、基本的にはベテランが多く、若いイケメンはいません。上垣アナの人気も含めて、視聴者の安定志向が強くなっているような気はします」(テレビ局関係者)
なぜ“キラキラ系アナ”が選出されないのか?
次に好きな女性アナウンサーランキングを見てみると、1位の田村真子アナのほか、4位の岩田絵里奈アナ(日本テレビ)、6位の井上清華アナ(フジテレビ)、8位の田中瞳アナ(テレビ東京)と20代後半のアナウンサーがランクイン。しかし、2位に江藤愛アナ(TBS)、3位に大江麻理子アナ(テレビ東京)、9位に大下容子アナ(テレビ朝日)など、各局の中堅・ベテランアナが変わらず強い人気を誇ることもわかる。また昨今“元アイドル”の女性アナウンサーも増えているが、好きなアナウンサーランキングの上位には入ってこない。
「若い女性アナも、かつてのような“アイドルアナ”という雰囲気のアナウンサーは、そこまで人気が出ないように感じます。SNSでキラキラした私生活を披露するアナウンサーもいますが、結局アナウンスのスキルや親近感が高評価につながりやすくなっている」(同)
テレビ界において、若いイケメンのアナウンサーやキラキラしたアイドル的なアナウンサーが支持されにくくなっている現状がある。いったいどういう背景があるのか。女子アナウォッチャーの丸山大次郎氏は分析する。
「人を傷つけることに厳しい世情のなか、アナウンサーにとって親しみやすさやユーモラスなキャラ、安定した実力などが必要になる“好感度”が、より視聴者に重要視されるようになっているのだと思います。男女ともにルックスに優れたアイドルアナウンサーは、その言動が鼻についてしまうことも多くなりますから。
また、イケメンアナとかアイドルアナは、スキャンダルがあった時に派手に報じられやすい。赤坂のドンファンことTBS・小林廣輝とか、岡田将生と交際した鈴木唯アナとか、テレ朝アナとフリーアナ森千晴の泥酔ハグ事件などですね」
従来のタレント性に優れたアイドルアナから“個性”が活きる時代に変わってきている。転換期は、水卜麻美が加藤綾子からオリコンランキングのトップを奪取したときだと丸山氏は指摘する。
「若手アナはYouTubeやインスタなどのSNSに出演する機会も多いため、人の注目を引くような“個性”も重要になっています。実際、好感度モンスターの水卜麻美アナ、唯一無二の毒舌キャラの弘中綾香アナ、人情味あふれるリアクションの田村真子アナと、最近のオリコンランキングでトップを獲るアナウンサーは個性もバツグンです。反面、元アイドル出身や二世アナは最初こそ肩書で話題を集めますが、それだけだと人気をキープし続けることが難しいのだと思います」
その他、視聴者が高齢者層になっていることも関係しそうだ。江藤アナや有働アナのように親しみやすく、安定感のあるアナウンサーは彼らのウケがいい。新人の上垣アナが、好きなアナウンサーランキングにいきなりランクインしたのは、まさに現在のテレビ界を象徴するような出来事だったと言えそうだ。今後、民放各局の新人アナウンサーの傾向もさらに変化していくかもしれない。
(取材・文=編集部)