ジャニー喜多川性加害の補償問題が再燃…「法を超えた救済」といいつつ裁判沙汰に
今月19日、旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)の創業者であるジャニー喜多川氏の性加害問題を巡り、元ジャニーズJr.の田中純弥さんと飯田恭平さんが同社や元幹部らに対して3億ドル(約460億円)の賠償を求めて米ネバダ州の裁判所に提訴したことが判明し、同社の補償問題が振り出しに戻る可能性が出てきた。
「SMILE社としては、補償問題は概ね片付いたという認識だったようで、今回の提訴はまさに寝耳に水だったようです」(芸能ライター)
田中さんと飯田さんは、それぞれ1997年と2002年にネバダ州ラスベガスを訪れた際、宿泊先のホテルでジャニー氏から性被害に遭い、身体的・精神的な苦痛を受けたとして、SMILE社や旧事務所のタレントが所属する「STARTO ENTERTAINMENT」、藤島ジュリー景子代表取締役のほか、白波瀬傑氏など旧事務所の元幹部らを相手取って提訴。米ネバタ州で提訴したのは、同州では未成年への性的虐待に時効が適用されないからで、田中さんは「今回の訴訟がいずれ日本の遅れている法制度や人権意識を変えていくきっかけになれれば」としている。
他方、SMILE社は「今回、米国で訴訟を提起されたと報じられている方々は、従前、日本国内にお住まいであり、米国の裁判所には管轄は認められないものと考えております」とコメントしているが、ある大手プロ役員は、「ジャニー氏は、タレントを連れてたびたび海外に行っていましたから、今回の件に触発されて、田中さんや飯田さんのように海外で被害に遭った元タレントがアメリカで新たに訴訟を起こさないとも限らない。SMILE社は改めて補償問題に取り組む必要に迫られるでしょう」と話す。
「訴訟がスタートするだけでも、SMILE社には大打撃ですよ」と断言するのは、業界に詳しい放送作家だ。
「田中さんと飯田さんの弁護人は、『ネバダ州では未成年への性的虐待は時効の対象にならないため、訴訟を継続でき、2人にはアメリカで起きた犯罪と同じ水準の補償を受ける権利がある』と説明しています。STARTO社は、SMILE社とは資本関係を有せず、また経営も分離した全く別の法人だとして『当社は無関係』とコメントしていますが、アメリカで訴訟が話題になれば、テレビ局はタレント起用に二の足を踏むでしょう。マネジメントへの影響は避けられません」(放送ライター)
東山紀之芸能界復帰説も
さらに、国内では20日、性加害問題の被害補償をめぐり、SMILE社が「ジャニーズ性加害問題当事者の会」(9月に解散)の元副代表・石丸志門さんに対して、補償額として1800万円を超える額を支払う義務がないことの確認を求める裁判が始まった。両者が考える補償額に大きな隔たりがあったため、調停を経て、裁判にまで発展したわけだ。
「SMILE社が提示する1800万円を超える金額の判決が出れば、すでに補償金を貰った被害者が黙っていないでしょう。そうなれば、補償問題は振り出しに戻りかねません」(夕刊紙記者)
石丸氏は「1800万円は受け入れられない」として、提示額の10倍にあたる1億8000万円の支払いを求め、争う姿勢を示した。
「SMILE社の東山紀之社長は、補償問題に際して『法を超えた救済』を行うと表明したにもかかわらず、法的手段に訴えたのだから、その言動に矛盾が指摘されています。ちなみに同社は今年、性加害事件発覚後、初めて決算公告を公表していますが、6月期決算の利益剰余金は2600億円超。にもかかわらず、性加害被害者に払った賠償額は数十億円です。本気で救済する気があるのか疑われても、仕方ないでしょう」(全国紙記者)
性被害を受けた元タレントらが問題の風化を懸念するなか、東山社長には芸能界復帰話が出回っていた。
「“SMILE社の補償問題は見通しが立った”と喧伝された頃から、復帰の噂は囁かれていました。とりわけテレビ朝日系のドラマ『刑事7人』『必殺仕事人』シリーズには続編の声があがっていて、3月頃にでも復帰宣言するのではないかという人もいました。もっとも、新たに海外で訴訟を抱えることになった今、復帰は難しいでしょう」(ドラマ関係者)
補償問題については、かねてより被害者から“弁護士任せで、SMILE社の誠意が伝わってこない”との声が伝えられてきたが、「人類史上、最も愚かな事件」(東山社長)というのであれば、SMILE社はもっと真摯に補償問題に当たるべきではないか。
(文=本多 圭)