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『おむすび』第78回 基本、何がやりたいのかわからないし、かろうじてわかることは失敗している

橋本環奈(写真:サイゾー)
橋本環奈(写真:サイゾー)

 おっ、と……終わってしまった、どうしましょうか。編集部から特に文字数の指定はないものの、いちおう毎日3,000字くらいは書こうと思って見ているNHK朝の連続テレビ小説『おむすび』ですが、今日はヤバいぞ。書くことがないぞ。何も感想がないぞうぅー。

 第78回、振り返りましょう。怖い。

なんだ、とりあえず画が持つ話からするか

 ナベの店と、そこから続く太極軒での緒形直人と北村有起哉のダイアローグね、画が持つなぁと思いながら見てたんです。名優を父に持つ2人の俳優がおじさんになって、朝ドラで向かい合ってギャルと撮ったプリクラ見ながら語らっている。その風景はなかなかシュールですし、緒形直人のコント芝居なんてそうそう見られるもんじゃないし、そういえば2人とも奥さん女優さんだね!

 あと、なんか出てない子がオープニングで踊ってたけど、あれは誰なのかな!

もうない

 なんというか、いちおう1月17日まではこれとこれをやらなきゃダメで、しかも主演の橋本環奈はいろいろ融通が効かないしで、制作陣の苦労がしのばれるところではあったんですよ。それでももうちょっとなんとかなるだろうと思いつつも、どこか同情してたわけ。

 せっかくいろんな縛りが外れて自由にやれるようになって、これかよと。

 何にもないならせめて明るく楽しくやればいいのに、昨日はアユ(仲里依紗)に余計なナーバスっぷりを発揮させてみたり、かと思えば合コンにはノリノリで参加させてみたり、そういうアユをチャンミカ(松井玲奈)が「トゲトゲ」「モヤモヤ」と表現したり、デザイナーの男がアユに「住まいはマンション? 戸建て?」とか唐突に聞いてくる無理やりさもだし、アユが「住まい……うちは鉄筋コンクリート……アキピー……仮設……かわいそう……」って、なったのかなってないのか、たぶんなってるんだろうけど、糸島時代の結さんよろしく『おむすび』お得意の思わせぶりで不快感を誘う。

 重ねて「大工」という職業を軽くディスってくるという、皿洗いやバイトリーダーをうっすらバカにしてきた『おむすび』独特の職業に貴賤をつける価値観も出てきて、ただつまんない合コンシーンに、さらにノイズが混じるという状態。もうね、汚い言葉を使ってしまって申し訳ないですけど、「××を××で煮詰める」という慣用句の具現化ですよ、これ。クソですよ。どないしよ。

 この合コンって、アユの顔面が注視されてしまうシーンなんですよね。アユのアキピーに対する気持ちに寄り添おうとしても、あんだけ不機嫌を振りまいていたくせにどのツラ下げて合コン行ってんだよという気持ちで見たとしても、結局は「アユはどんな顔をするのか」を見てしまう。仲里依紗は難しかったと思うよね、こういうとき、どんな顔していいかわからないよね。笑えばいいと思うよ。家帰って、とりあえず今日の撮影のことは忘れて、中尾くんと一緒になんかテレビでも見ながら笑えばいいと思う。中尾くんはいいやつだからな。知らんけど。おつかれさまでした。

あとはショッピングセンターか

 商店街全体の規模感、それとサイキョーさんが計画中のSCがどれくらいの大きさなのかがわからないから、いまいち危機感が伝わってこないのだけれども、これはナベが家を売ったら買収完了ということでいいんだよね。

 こういうのも、普通は脚本会議の段階で大まかなマップを作るもんだと思うんです。アーケードのかかっているメイン通りが何メートルくらい、どの方角に走っていて、そこから横道に入るとどれくらい店があって、サイキョーさんはこの店とこの店を潰して、この面積のSCを建てようとしている。こことここは買収が終わっていて、ナベの店はここ、太極軒はここにあって、ヨネダはここ。パン屋はここ。

 そういう位置関係が決まっている感じがしないんですよね。SC建設に抵抗するにしても、テナント賃貸のヨネダと地主のナベでは全然立場が違うし、そういう立場の違いからだけでも、いくらでも物語を立ち上げることができるはずなんです。なんか二重債務を抱えてた人もいたよね。

 単純に「商店街vsSC」という対立構造ではなく、商店街に降って湧いた「SC来襲」という災害に対して、それぞれの事情を抱えた市井の人たちが右往左往しながら、みんなが納得する道筋を探していくという話にもできるわけです。

 そういう話なら、結パパがあちこち奔走してアーケード設置を取りまとめたことや阪神・淡路のときの避難所で仕分け隊長として八面六臂の活躍をしたことも伏線として機能するし、アーケードのときとの対比でナベの「心の復興」も表現できるじゃん。

 パン屋だってそうです。SCが店内販売スペースを提供すると言い出すけど、パン屋は焼き立てにこだわってるから数も作れないし、商売の拡大より地域のコミュニティの中で慎ましく生きていくことを選択する、だって食べてみてよ、うちのパン、こんなにおいしいんやでと言ってサイキョーのおじさんに自家製パンを食わせて「確かに……う、うまい……」とかやらせればいいんです。そんで緑子に「この味は、小麦の味だけやないんよ。ここに暮らしてるみんなの思いが詰まった味なんよ」とでも言わせておけば、ほら「食」が地域を結んでいることも表現できる。

 靴もそうだ。ナベがサイキョー担当者の革靴がすり減っていることに気付いて直してやるなんてことがあったら、こいつはこいつで自分の仕事に一生懸命なだけで決して商店街の敵ではないということも言えるし、どんな相手でも靴だけはちゃんとしたのを履いてほしいというナベの職人魂を描くこともできる。

 なんぼでも、やりようはあるんです。そういう話を作れと言ってるんじゃないですよ。土地買収の話をやるなら想定マップを作れと言っている。それだけで説得力が違ってくるし、話も広がるでしょって、そういう話です。

 だいたいナベが考えた「のど自慢大会with生バンド」が大成功してこの商店街に人が集まるようなら、サイキョーにとってますます魅力的な土地だということになってしまう。テレビのロケなんか来てごらんなさい。サイキョーは買収計画を加速させますよ。

 だからこの「商店街vsSC」の対立構造ね、初手から間違ってるんです。どこかで聞きかじった「ショッピングモールができて商店街が閑古鳥」という風景を考えなしに採用して、欲をかいて郊外じゃなく直接買収にしてしまったことで、また失敗してる。なぁーんにもうまくできない。

 こんなシナセンの初歩テキストみたいなこと書かせないでよ、恥ずかしいよ。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

◎どらまっ子AKIちゃんの『おむすび』全話レビューを無料公開しています
第1話~第56話
https://note.com/dorama_child/m/m4385fc4643b3
第57話~
https://cyzo.jp/tag/omusubi/

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子。1977年3月生、埼玉県出身。

幼少期に姉が見ていた大映ドラマ『不良少女と呼ばれて』の集団リンチシーンに衝撃を受け、以降『スケバン刑事』シリーズや『スクール・ウォーズ』、映画『ビー・バップ・ハイスクール』などで実生活とはかけ離れた暴力にさらされながらドラマの魅力を知る。
その後、『やっぱり猫が好き』をきっかけに日常系コメディというジャンルと出会い、東京サンシャインボーイズと三谷幸喜に傾倒。
『きらきらひかる』で同僚に焼き殺されたと思われていた焼死体が、わきの下に「ジコ(事故)」の文字を刃物で切り付けていたシーンを見てミステリーに興味を抱き、映画『洗濯機は俺にまかせろ』で小林薫がギョウザに酢だけをつけて食べているシーンに魅了されて単館系やサブカル系に守備範囲を広げる。
以降、雑食的にさまざまな映像作品を楽しみながら、「一般視聴者の立場から素直に感想を言う」をモットーに執筆活動中。
好きな『古畑』は部屋のドアを閉めなかった沢口靖子の回。

X:@dorama_child

どらまっ子AKIちゃん
最終更新:2025/01/22 14:08